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あのこっぱずかしい事をやらかした翌々日、屋台は撤収され人通りも元通りになった街をハイルと一緒に歩いていた。



「どこ行ったんだよあいつ」


「さあ。でも有名人だからどこかで囲まれてるんじゃないかな」


「まあそうかもしれねえけど、それでも考えるところがあるじゃん?」



周囲を見回しうんざりとしながらぼやく俺に、柔らかく笑いながらハイルが言う。


計画通りなら今頃ハーフェンへ向かっている筈なのだが、集合時間から30分経ってもクラリアが来ないのでこうやってわざわざ探しているわけだ。


ウィーンやセティンとかが居れば場所がわかりそうなのだが、意訳するとクラリアに何かあったら分かってんなというセリフを置いて昨日帰ってしまっている。


連絡してくるわけでもなく、全くのノーヒントで探し始めて十数分。手がかりすら掴めずにいた。



「てかだいぶ回ったけど見つからねえな。マジでどこなんだあいつ」


「うーん、フリードから来たって連絡はないから入れ違いじゃないみたいだし」


「そうかい。だったらうろつくしか…」



メニュー画面を見るハイルに肩を竦めた時、街中にも関わらず聞いたことが、というより喰らったことがある爆音が聞こえ言葉を止める。

ハイルも聞こえたのかこちらを見てきたので頷き、音が聞こえた訓練場に目を向ける。


何かイベントをやるという話は聞いていない。つまり誰かが突発でやってるということだろう。しかし一緒に聞こえる歓声を聞く限りではかなり派手なことをやっているらしい。



「大体何があったか分かったんだがあってると思うか?」


「うん、僕も分かったよ。じゃあ迎えに行こうか」



何があったか察した俺たちは、肩を竦めて訓練場に向かった。



「いけー! 俺たちが応援してるぞー!」


「せめて一太刀浴びせてやれー!」


「…なんだこりゃ」



いつもは自分のスキルを確かめるプレイヤーが利用するその場所は、今に限りその用途を変えていた。


すべての的が壁際に寄せられ、そこにできた空間に居る4人に多くの観客が声援を送っていた。



「うぉおおおお!」


「ふん、その程度なの? そんなのじゃ届かないわよ!」



4人の内の3人はプレイヤーで、前衛の二人と弓使いの後衛という武器以外はごくありふれた面子だ。


そして3人のプレイヤーに相対するのはたった一人、140cmはある身の丈ほどの杖を地面について勝気な笑みを浮かべたクラリアだ。


後衛に居た弓使いが走り出した二人の前衛を援護するために矢を射るが、クラリアは笑みを崩さずに余裕ある動作で杖を振って風を起こす。


その風は矢を吹き飛ばすだけでは飽き足らず、その場にいた全員の足を止めるほどの威力だった。



「その程度じゃ私に勝てないわ。もっと強くなって出直しなさい<エアハンマー>」



足を止めたのを見逃すわけがなく、縦に振られる杖と同時に爆音が鳴り響き近くまで来ていた二人を同時に押しつぶした。僅か数十秒という戦いだが、はっきりと実力差が分かるものだった。


あとは後衛をすりつぶすだけだからすぐに終わるだろう。すぐに話しかけるために群衆をかき分けながら前に進む。



「じゃあ次の挑戦者は誰かしら?」


「てめえ時間見てから物言えよおい!!」



その間に割と珍しい弓使いを瞬殺したのちに髪をかき上げながら言ったクラリアに、思わずツッコミを入れる。


しばらくきょろきょろと周りを見回し、こちらを見つけると気付かなかったという風に言った。



「来てたのレイス。そういえばもう集合時間過ぎてるわね」


「分かってんならさっさとこれ終わらせろ」


「そうね。貴方達、今日はここでお終いよ。次までにもっと強くなってきなさい」



中断された挑戦にざわつく中、クラリアは傲慢としか言えないセリフを言い放った。


挑戦相手が居なくなったことで興奮冷めやらぬまま群衆が解散していく中、俺はジト目でクラリアを見ながら言った。



「で、自分からついていくと言っておきながら時間過ぎてもこんなことやってた訳は何だ?」


「街を歩いていたら馬鹿が戦いを挑んできたのよ。お前程度なら勝てるってね。それてちょっと遊んであげたら次々に挑戦者が来て倒してたらこんな時間にってわけ」


「そんくらい断れよお前…」


「あら。魔王の娘が挑戦を受けないなんて選択肢はないわ。よほどの理由がない限りわね」



少しも悪びれた様子もなく、むしろ誇らしげに言うクラリアを見て口を閉じる。

色々と思うところがあるが、別に急ぎの旅じゃない。それにそれが信念だというのなら俺は強くは言う気はない。



「まあいいやさっさと行こうぜ。お前のせいで夜になる前に着くか怪しくなっちまってるからな」



そう言ってクラリアから視線を外しながら、ほとんど人が居なくなった訓練場の出口に向かう。



「いいツッコミだったよレイス。後ろまで聞こえてきた」


「うるせえ。それよりここ戻すの手伝わされるかもしれねえからさっさと出るぞ」



今、訓練場は的が壁際に寄せられたままだ。数人が元に戻す作業をやっているが、めんどくさくて俺はやりたくないのでやや足を速める。



「あはは、めんどくさがり屋だね。でもその前に言わなきゃいけないことがあるんだ」


「なんだよ。急ぎの用事以外ならここから離れてからにしてくれよ」



壁際に寄せられた的などを元に戻している人がこちらに気づかない様に祈りつつ、横目で見ながら歩く中で小声で返す。


そんな俺とは逆にどこかのんびりとした雰囲気で出口を指さしながらハイルが言った。



「雨が降っているみだいだけどどうする?」



言われて、耳を済ませてみると確かに雨が屋根を叩く音が聞こえる。さっきまで晴れてたというのに、出発しようと思ったらこれである。



「ま、途中で降られるよりマシだな。雨具買ってから出発かな」



しばし足を止めたがポジティブにそう考え、小雨の中に足を踏み出した。

剣Lv36 回避Lv38 隠密Lv33 料理Lv26 投擲Lv21 影魔法Lv25 魔法熟練Lv28 隠蔽Lv26 罠Lv11 盗賊の技術Lv35


快晴で旅日和かと思った?残念!

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