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次の目的地は

「まあ、それならさっさと起こして説教して離してやれよ」



少しも弁解の余地がないので庇うことなくそう言い放つ。しかしウィーンは首を横に振った。



「…いえ、離さずにこの子の親のところまで送り届けます。こんな服着せているのが気になるので」


「それは無理じゃないかな? 確かその子孤児でしょレイス」


「多分な。そうじゃなきゃ俺がこいつの家に行ってる」



ウィーンの言葉に料理を並べながら聞いてきたハイルに肩を竦めて返す。


前に少年の家の場所を聞いても無いとしか答えなかったし、付き纏ってもどこにも入らなかったしな。


その言葉に何を思ったか、空いていた手を顎に持っていきなにやら呟いて考え始める。



「…孤児、ですか。そんなものを生まれさせるのは…」



凄く意味深な言葉が断片的に聞こえるが、どうせ聞いても無駄だろう。流石に誘導尋問に二度も引っかかるとは思わない。


手持無沙汰だが、料理はすべてハイルのインベントリに入っている。だから椅子に座ってのんびり待つことにしよう。



「それにしても貴方どうやって白銀狼に毛皮を差し出させるまで手なずけたのよ」


「できるだけ毎日会いに行って料理を作っただけだぞ」


「確か白銀狼がいるところに行くためにはアイテムが必要だったはずだったけど」


「…彼はそこに行き来するためのアイテムを持っていますよ」


「ああこれな。手に入れたのはイベント始まった直後だからそれまでは大変だったぜ」



思考の海から戻ってきたウィーンがボソッと言った説明に腕輪を叩きながら補足する。


手に入れるまでの過程でかなりの数死んでいるが、そこら辺は言わぬが花である。



「やられると耐久が減るっていうの忘れて一回装備壊したっていう裏話あるけどね」


「わざと言わなかったのに言うなよおい」



だけどばらされたから無駄でしたっと。


そんなふうに話しているうちに料理はすべて並べ終わっている。



「それじゃあ食べようか。いただきます」


「んじゃまあいただきますっと」



少女の後ろについたウィーン以外が席に座り、ぱちんと手を合わせてからすぐに手元の箸を取って料理に食いつく。


宴会や大皿料理の場合は多く食べたいし、VRだから腹が膨らまないので二つの意味で美味しい。


あらゆる料理に手を出して食い荒らすという表現が合うその行動に、ハイル以外の視線が痛くなる。


だが最近はその視線に晒され続けて慣れ始めてたし、何よりこぼしてないからいいだろう。



「で、さっきフリードと話してたのを見せてよ」


「ふぁあ、あれは、んぐ、こいつだよ」



唐突にそう聞かれ、口に詰め込んだ串焼きを飲み込んでさっき書いた設計図もどきをハイルに見せる。


円形の本体に三つの収納可能の刃を持っている収納にも優しいものだったが、しばらく見つめた後に言った。



「うーん、流石にこれ作れないかな」


「ほら見たことか! 僕の言う通りじゃないか!」


「食事中に大声出すな。みっともないだろ」


「あ、ああ。すまない…あれ?」



鬼の首を取ったような言い方のフリードを軽くたしなめると、首を傾げながらも静かになる。


スキルレベルも結構上がってたと思ってたんだが、ダメだったか。



「見してみなさいよ…かなり無茶な注文するのね。いくらなんでも馬鹿じゃないかしら」


「そこまで言わないでやってよ。一応作れるんだけどね…」


「…こんなもの作れるなんてある意味驚きよ本当に。どうしてできないのかしら?」



机の上で設計図の紙を受け取った少女が顔を顰めて言うが、それを困り顔でハイルが否定する。



「近くで採れる鉱石だと、この折り畳みのところの耐久度に問題が出ると思うんだ。技術的に作れても、工程が多いのに壊れやすくて割に合わないよ」


「思ったよりハイル君のスキルは高いみたいだね…」


「単に鍛冶場に籠っていただけだで、時間を掛ければ誰でもできるよ」



そんなふうに謙遜しているが、ほとんどの物を1から作ってるからなお前。



「なるほどねえ。それじゃあ新しい鉱石を発掘すりゃいいわけか」


「新しくてもそれが合ってないと作れないけどね。それにここの近くの鉱石は全部見たし難しいよ」


「何言ってんだよ、今の俺たちが何か忘れたか? 冒険者だぜ冒険者。ないもの探しに新天地を目指すものだろ」


「まあそうだけどね。レイスがここ気に入ってるからいつ言うかと思ってたよ」



ニヤニヤと笑って言うとハイルも微笑みながら返す。


とは言っても、今は祭りの最中。出るとしてもこの祭りを堪能してからだ。



「では私達が街に来たらどうだ? レイス、君なら歓迎するぞ!」


「行きたいけど残念ながら次に行く場所は決めてあってな。つかどこから入ってきた」



後ろから大音量で聞こえた声にのけ反り、上下逆さのセティンを視界に入れる。


残念ながらシロが居ない。まあ居たら嬉しいがただでさえ人が多くて狭苦しくなってる部屋がさらに圧迫されるのだが。



「魔法を使ってここに入っただけだぞ。影渡と同じように、レイスに印をつけておいたからな!」


「よーし今すぐその印消せやこら」


「それよりその料理を一緒に食べさせてもらおうか。クラリア、もう少しそっちに寄ってくれ。おお、私の好物の蜂蜜の照り焼きがあるではないか!」


「なんで私の方なのよ…」



人の話を聞かずにしぶしぶ横にずれたクラリアと俺の間に座って、料理に手を出し始めた。


色々言いたいが、俺が食う分が取られてしまうので先に料理を食べるとしよう。



「…いつから僕の店は集合場所になったんだろう」



そう頭を抱えて呟く向かい側のフリードは極力視線に入れないようにしながら。

剣Lv36 回避Lv38 隠密Lv33 料理Lv26 投擲Lv21 影魔法Lv25 魔法熟練Lv28 隠蔽Lv26 罠Lv11 盗賊の技術Lv35


痛恨の更新遅れ本当にもうしわけないです。時津風がかわいすぎて関連を漁ってたらちょっと…

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