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やっぱり素材は手に入らない

「はあ…。まったくいいとこ見せないで終了ですかそうですか」


「貴方が倒せないのを倒してあげたのになにか文句あるのかしら?」


「そりゃ倒せないって分かってるけどちょっと挑戦してみたいって気はあるんだよ。だから欲求不満」



あのイノシシを倒した直後にナイフをしまいながら溜息をついてぼやくと、予想通り突っ掛ってきたので文句を言っておく。


特にあの高速で迫る物体への対処を実験してみたかったかし、採取できていないのでどうにもやりきれない。


しかしそんなことをこの少女が知るわけがなく、いともたやすく行われたえげつない行為のせいでイノシシはあっけなくポリゴンになったわけである。


そう考えるとこうやって不満を言わずに機嫌を伺ったほうがいいだろうが、考えが浮かんでも実行に移すほど高性能な思考回路を持っていないのでこうなってしまうわけである。



「なによ。だったら私が戦ってあげようかしら?」


「冗談。これから街に帰るってのにお前と戦うなんて馬鹿なことしねえよ」



まず普通に戦ったら街に被害がいくし、決闘で勝負をつけるというなら広いところでさえ避けれるかわからない広範囲攻撃を喰らわなくちゃならないというもはやいじめクラスのものになるのだから受けるわけないだろう。


俺がぶっきらぼうに言って、はよ帰らせろという気持ちを込めて背後の珠を軽く叩く。金属のような質感を返すそれは、軽い反発とともに少し沈み手が離れると一定の高さまで浮き上がった。



「それなら別にいいわよ。でもどうせお母様のことだし戦ったほうが楽しそうって理由で帰してもらえないと思うわ」


「さすがにそりゃねえ…いや、あいつなら十分あり得るな」



ちょっと楽しくなったので、珠をバシバシ叩きながら少女の言葉を嫌々ながら肯定する。


だが耳かきの先ほどある希望に賭けてみてもいいじゃないか。本当にあんな攻撃する奴と戦いたくなんだから。



『その通りだ我が娘よ。しかもレイスも私のことをわかっているとはうれしいものだな!』



しかし予想通りというべきか、叩いていた珠から声が聞こえてきた。その内容はさっきの俺と同じ肯定だ。


嬉しそうに言われるが、 こっちとしては全っ然嬉しくないんですが。



『まあそれは冗談で帰ってきてもらうぞ。私としては戦ってほしいのだが』


「早く帰せマジで。一匹モンスターが近づいてきてるんだよ」



話してる最中にスキルで敵の反応があり、戦うだけで死ぬ可能性がある俺としてはさっさと帰りたいものだ。


しかし珠の方から返ってきたのは少しの沈黙。そして何か楽しいことを見つけたとばかりの雰囲気のセティンの声だった。



『なるほど。だったらレイス、それを倒したら無事にここに呼ぼうじゃないか』


「今すぐできるんじゃないんですかねえ…!」


『私としてもそうしてあげたいのはやまやまなんだが、森の主が一瞬で倒されたせいで空気が白けているからな。それを盛り上げてほしい!』


「それって自分の家族の行動把握してないお前のせいだろうが!」


『…それは考えに入ってなかった。すまないなレイス」


「なんで驚いてんだよ! 十分お前のせいだろ!?」



突っ込みのしすぎで肩で息をするはめになり、しばらく息を整える。その間にも敵の反応は近くなっており、あと少しでここにつくだろう。


セティンの言いなりになるのは癪なので、今回も少女にやってもらおうと後ろを向いた。



「なあ、次のやつもお前がやって…なんでいないんすか?」


『もちろん私がこちらに転送したからだ。これで心置きなく1対1で戦えるぞ、感謝してくれ!』


「だれがするか馬鹿野郎」


『馬鹿野郎…? 私は男ではないぞレイス』



誰もいない空間に話しかけた俺は、とぼけたようなセティンの言葉に頭を抱えたくなる。それも翼で空を切る音で止めて、上空を見上げた。


上空に居たのはここに来る途中で見た黒い鷹だ。俺を中心に円を描くように飛び、襲い掛かるタイミングを待っている。


上空に居るためにあちらが仕掛けない限り何もできない俺は、セティンに捨て台詞めいた文句を言っておく。




「セティン、あとで覚えておけよ」


『それは森でも聞いたよ。私はいくつ覚えておけばいいんだろうなレアス』


「少なくしたいなら俺を巻き込まなきゃいいんだよ」



セティンに意識が行った瞬間に鷹が急降下してくる。凄まじい速度だが慌てず、後ろに跳んで爪を回避する。


避けられた鷹は地面に当たる寸前で減速し、横から見るとV字になるような軌道を描いてまた空中に飛んでいった。


口笛を吹いて感心しながら、額に手を当てて光を遮って空高く飛ぶ鷹を見た。



『うむ、やはりあやつの狩りの方法は潔くていいな!』


「さいですか。まあ次で終わらせるからしばらく見れないけどな」



円がだんだんと狭まっていき、二度目の降下が始まる。


急降下する鷹をぎりぎりまで引き付け、足を踏み鳴らしてたった一言発音する。



「<影針>」



自らの影から伸びる針を発射台にしたそれは、いつも通り俺を空へ飛ばし足元を鷹が通り過ぎる。


地面に立っていた俺と空を飛ぶ鷹との立場が逆転したと口角を上げながら、二本のナイフを体を捻りながら背後に振る。

振られたナイフはちょうど飛び上がった鷹の翼の付け根に当たり、体重と鷹自身の勢いで深い傷をつけた。


耳をつんざく鳴き声と地面に落ちた音を聞きながら着地、バックステップで一度距離を取る。



「空の狩人も地に落とされちゃ形無しだねえ。<影糸>っと」



地面でもがく鷹の翼で吹き飛ばされない様に影糸で捕縛、と思ったが俺のスキルレベルが足りないのかすぐに千切って飛び上がった。


HPは落下ダメージのおかげか結構減ってたし、あと数回で倒せると思ったのだがそのままゆらゆらと不安定なままどこかへ飛び去ってしまった。



「うーん。やっぱり空の強敵は追い詰めたときに逃げられるな」



元から軽い一撃を重ねに重ねて倒すから仕方ないが、もうちょっと火力が欲しい。早くあの蒼い鉱石が使えるようにならないかねえ。


ま、そんなのはいつかでいいんだ。今は敵が近づいてきてるので一刻も早く帰りたい。



『レイス、あいつを追いかけて狩ってくるんだ!』


「無茶ぶりが過ぎるんだよアホがはよ戻せ」



流石にセティンの言葉に珠を蹴りあげながら突っ込みを入れた。

剣Lv36 回避Lv38 隠密Lv33 料理Lv26 投擲Lv21 影魔法Lv25 魔法熟練Lv28 隠蔽Lv26 罠Lv11 盗賊の技術Lv35

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