怒らせたいときに限って失敗する
また、その逆もしかりである。
「それだったら私が今しがた殺したと言えば怒るかな?」
そうニヤリとした笑みを浮かべて挑発してくるが、こちらは欠伸をかまして指を指した。
「てめえの後ろの森からじっと見てるからそれは無理かねえ」
「なっ、まだ合図をしてないぞシロっ」
「お前もこんな奴に付き合って大変だっただろうに」
「ガウッ!」
俺が指摘すると森の中から出てきて俺の近くに座ったので頭を撫でてやる。私ですら触らせてもらえてないのに、とセティンがショックを受けているのでべーっと舌を突き出した。
「くっ、少年を怒らせようとしたのに失敗か。私としたことが…」
「なんで怒らせようとしたんだよドアホ。初対面の奴にやることじゃねえぞ」
「どれくらいで怒るかわかればぎりぎりまで悪ふざけできるからな!」
「てめえの辞書に遠慮って言葉刻んでもらえ」
「それくらい知っているぞ。ただ使わないだけだ」
「魔族の上に立つなら使えるようになっとけ」
胸を張って言ってくるのでこれ見よがしに溜息をつくが、こいつは気にするような奴じゃないだろう。
無駄だろうが、こいつの下の奴らが少しでも楽になればいいと疲れたような表情で一応言っておいた。
「ふむ、考えておこう。それより話が変わるがなぜ私を恐れない?」
「は? いきなり何言ってんだよ。恐れる必要と意味がねえっつの」
「自分で言うのも何だが魔王だぞ? RPGでは定番のラスボスだぞ、強いんだぞ」
まるで拗ねてるガキのように言ってるがあんた自分の見た目年齢を考えてくださいよ。ギャップ萌えとかいう言葉が再浮上してきたんですけど。
まあ言ってることはわからなくない。実際にどこまで強いかわからないが、ここまで言うのだから俺の事なんぞ十秒もたたずに勝てるだろう。
それでも、めんどくさいという感情以外浮かんでこないのはこいつのふざけたような性格のせいだろうな。
「さてね、自分の胸に聞いてみろ」
「私の胸なんて…セクハラだな少年」
「レイスだ」
「む、急にモンスターの名前を言ってどうしたんだ少年?」
セクハラ云々はもう無視してそう言うと頭の上に?マークを浮かべられた。確かにモンスターにいるけど俺の名前の由来はそれじゃないんですよねー。
なので補足のために親指を自分に向けて言った。
「俺は少年なんて名前じゃねえ。レイスってのがこの世界での俺の名前だ」
「魔王に名前を憶えてもらってどうするつもりかな?」
「はっ、別にお前が自己紹介したのに俺がしてないって気づいたからしただけだ。他意なんてねえよ」
セティンの言葉を鼻で笑ってそう返す。つか名前を覚えてもらった程度で何が起きるんだっつの。
「それより街に帰りたいんだが。間に合わねえけど表彰式くらいは見たいしな」
「おお、確かにそうだ。首位がいない表彰式ほど悲しいものはない」
「首位ってお前…。イベントで一位取ってんじゃねえよ大人げねえな」
首位という言葉を聞いて100位前後の俺と、まず街に入れない白銀狼であるシロ以外にここにいるセティンのことだと思いそう言う。
確かに参加は自由だろうが、魔王という存在がイベントに参加するとかなんて罰ゲームだよ。
「何を言ってるんだ。首位はレイス、少年のことだぞ。シロの毛皮を納品したから二位とは圧倒的な差をつけての優勝だ」
「…ありがたいという気持ちとふざけんなという気持ちがないまぜになってるこの心境をどうしたらいい」
「ふざけんな? …ああ、毛皮はシロが望んだことだし私が回復したから何の問題もない!」
そこじゃない。それもあるけどそこじゃない。
ソロで圧倒的差とかもはや悪目立ちしかしない。俺の目標はせめて10位前後とかそこらへんだったのに…って悪目立ちは今更か。
「それでは私自ら、とは言えないが立派な者に君を送らせよう」
「いや、さっさと腕輪で移動できるようにしてくれれば勝手に行くから」
「それでは一位にふさわしく、遅れたとしても平気な登場ではないではないか。だからこうする」
俺の言うことを全く無視してセティンが指を鳴らすと、転移特有の感覚の後にシロの上に落とされる。
何を考えてるか分かったので急いで降りようとするが、その前にシロが走り出したので必死に首にしがみついて振り返った。
「それが悪ふざけしてしまった謝罪だ。遠慮せず受け取ってくれ、レイス」
「てめえ次会ったら覚えておけよ!」
「ふふ、また魔王に会いたいとは酔狂な。もしや私に惚れたな?」
「んなわけねえだろ!」
まだまだ文句を言いたかったが、その最中にシロが森に突っ込み見えなくなった。
剣Lv36 回避Lv37 隠密Lv30 料理Lv26 投擲Lv21 影魔法Lv24 魔法熟練Lv28 隠蔽Lv24 罠Lv11 盗賊の技術Lv31
誰かいいサブタイトルのつけ方教えて。