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全頭管理  作者: 木苺
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第5話 5年後・10年後

「国土防衛チャレンジ班」の創設が A国の国会で決定された。

これは、サバゲー感覚で クマウィーク中に 動物管理局のドローンに挑む愚か者対策であるとともに、

隣国からの侵攻があった際には 国民皆兵、その先兵たるドローンを 市民自らが義勇兵となって打ち落とそうと考える武闘派議員団の支持のもと

良質な自衛隊員を確保したい防衛庁の後押しにより実現したのである。


速い話が 自衛隊が中心となって 対ドローン訓練を隊員に対して行おうとすると、防衛予算の拡大ハンターイと叫ばれてしまうし、

隣国の息のかかったメディアが 反A国キャンペーンを国内でくり広げる。

しかも 自衛隊内部では、 ドローン対応は 航空自衛隊が主導権を握るべき、いや陸上自衛隊の管轄だという不毛な権益闘争が勃発する。


それより サバゲーの延長戦で 国民の娯楽として「対ドローン攻撃スキル」を磨かせるとともに、その攻撃をかわすドローンプログラムの開発を、A国内のゲーム産業にやらせ、さらに その催しに参加するツアーに、旅行会社をいっちょがみさせることにより、旅行業界から寄付金を徴収しようという意図のもと 成立したのが

「国土防衛チャレンジ班」制度であった。


◇ ◇

この「~チャレンジ班」の技術部門を担当するのは、「全頭管理局」のドローン担当班であった。


なぜ 「全頭管理局」が参加するかと言えば、

野生動物の観察と全頭管理事業を、一般人にこれ以上邪魔されるのは困る

という 切実な事情があったからであった。


全頭管理局のドローン班員たちは、陸上・海上・航空自衛隊から送り込まれてきた技術部門の幹部候補生たちを指導しながら ドローン運用プログラムの開発とドローン運用技術にさらなる磨きをかけていった。


◇


そして シューティングゲームや サバイバルゲームを楽しみたい市民たちは

ドローン相手に ゲームガンを撃ちまくり、さらに ドローンに見つからないように地上を行動する体術を身に着けていった。


その為のゲームフィールドをA国全域に展開したのも これすべて 市民からの希望が多かった娯楽要求を満たすためであった。


それに伴い 全頭管理局支部の全国拡大も 速やかに 何の抵抗もなく実現した。


◇


さらに、全頭管理局各支部では、それぞれの設立記念日が公休日となり、

その日には 任意参加の「供養会」が行われるようになった。

 それは 直近1年間で 支部担当地区内で亡くなった生物(動物も人間も)と破損したドローンの氏名や管理番号と亡くなった場所・日時を読み上げ 黙祷を捧げるという簡素なものである。


 そこで 参加者は めいめい 心の中で手を合わせ、つらい思い出に自分なりの別れを告げた。


◇ ◇


10年後には、都市部における ネズミたちの活動までドローンが把握できるようになった。

その知見を基にして、ネズミ駆除が速やかにすすんだ。


今では ゴキブリの生態把握を目的としたドローンを開発している。

ゴキブリの行動把握ができるようになれば、

ゴキブリを狙撃するミニドローンを開発したり

逆に ゴキブリを対象としたシューティングを家庭内で行なえるようになるかもしれない。


もしかしたら ゴキブリ駆除活動をシューティングゲームと同列に扱うとは

命の重さを考えない蛮行であるという批判が出てくるかもしれない。


◇

「いやー それはないんじゃないか?

 さすがに Gの 虫権を擁護する人はいないんじゃないか?」


「人間の好き嫌いで 虫の命の重さに軽重をつけてはいけないのではないか?」


「それより シューティングと言いながら 溶剤噴射でゴキブリを包み込んだ後被膜として硬化するための溶剤の安全性試験をはやくすすめてよ」


今日もにぎやかに雑談する、対ゴキブリミニドローンの開発担当者たちであった。


◇


えっ なんで ゴキブリまでドローンを使ってシューティングするのかって?


そりゃあ ゴキブリは頭が良くて 殺虫剤の臭いも ゴキブリホイホイの臭いもすぐに覚えてしまって回避してしまうし、人の目と手の届かぬところから 人目につくところに出たり入ったりで 手に負えないからじゃないか。


だからこそ 1センチほどのミニドローンで追跡して 追撃するのさ。

そして 物理的衝撃で ゴキブリが飛散すると厄介だから、溶剤でコーティングする

それを 今度は 集めるドローンも飛ばして・・


そうやって ミニドローンの操作方法に習熟する一般市民・青少年が増えたら

将来的には、優秀な「非殺傷性攻撃ミニドローンによる破壊工作員」が誕生するかもしれないじゃないか。


もはや 弾道ミサイルで都市を破壊するとか、大量殺人するなんて 不経済な戦争ははやらない。


むしろ ひそかに 対象国のインフラを適切に損傷して 経済的ダメージを最大限に与えたり社会不安を増大させる そういう静かなる戦争時代がはじまっているんだぜ。


だから 優秀な攻撃オペレーターを増やして軍人に、

そして それらの攻撃を探知して 日常生活の中に紛れ込んできた敵性ミニドローンを発見する管理ネットワークと、

発見したミニドローンを素早く迎撃できる優秀なオペレーション技術を持った一般市民を増やすことが 国家としての重要案件なんだから。


というわけで 今や 全頭管理局は、管理ネットワーク運営者の養成所兼実習場所にもなりつつある。


◇ ◇


「今や 床を走るゴキブリを回し蹴りできる人が少なくなったねぇ。

指先と目の訓練だけでなく 全身運動能力を高める一環として

ゴキブリの回し蹴りも 訓練課題に入れようか?」ドローン操作訓練班長


「それより ゴキブリの卵収集ドローンの開発を先にやってください!」女性班員


「あれね むつかしいんだよね、

 強力に引っ付いている癖に 触れると崩れて中から小さい卵らしきものが出てくるから」技術担当者


「ゴキブリが繁殖しないように お掃除ドローンを小型化するのはどうでしょうか?」研修生


「対費用効果も考えてよ」経理担当者


「やめろよ ティータイムにゴキブリの話なんて!」


「ごめん」「ごめん」


◇


(まったく 1寸の虫にも5分の魂ということばをしらんのかねぇ・・)

騒ぐ若者たちをぼんやりと眺めながら もの思う 元冬山1号地区分室A1室長


(全頭管理室分室が 都市部にできた当初は ねずみだけでなく あらゆる小動物 元ペット今害獣の駆除まで回ってきて 「血濡れの分室」とドローン開発班も捜査班も泣いていたというのに。


今や ゴキブリ談義とは、平和なのか 命の重みがますます軽くなったのか・・・


AI社会とは 記憶の薄れゆく速さが加速する一方の社会なのかもしれんな)


室長は 食後のコーヒーをぐいと飲みほし、席を立った。

 



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