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紫雲の國の玉水の恵み  作者: テディ
一の巻
19/153

日課

  嵐がさると、平和な静けさがやってくる。私はそれを身を以て体験している。

今がそうだ。(はやぶさ)を手に持った瞬間、この子は私を選ぶ。

私の中のイメージ……異世界……、刀に好かれるとは聞いていない……。


そう、私は今やモテモテなの。隼と、小鬼達に……。

朝、目覚めるとどんどん増えていく小鬼達……。

うん、これこそ異世界転移……。

誰かにモテモテになるのは、お約束のはずだもの……。


「これこれ、お前達。また雫様に遊んでいただいたの?

さあ、その辺にして。雫様はお稽古があるんですよ」

女官さんが、私の手伝いと同時に、小鬼達に声をかけてくれる。

それまでに全員ギュッとしておいたので、小鬼達は大人しく

テトテトと廊下を走ってくのだ。

でも、私に危険を教えてくれた三つ目の子は、私のそばを離れなくなっていた。


浄眼(じょうがん)……。彼の額にある瞳は、邪眼ではなく浄眼なのだそうだ。

それは、物事の真実が見える瞳。確か元の世界の物語では、これを持っている人は

鬼などを見分けられるって話だったはず。面白いな、その鬼が浄眼を持っている。


私は迷いに迷って、この子に名前をつけることにしたの。

小鬼に名前をつける習慣はないみたい。名前をつけると

制約ができたり、面倒なことになるのかと聞いたら、

別にそんなこともないみたい。それならと思い立ったのだ。


私に危険を教えてくれた蒼い色からとって、(そう)と名付けた。

「蒼、おいで。顔を洗って、ご飯を食べるよ」

蒼は、何日か一緒にいると私の真似をしたがった。ご飯はそばにいるだけで

実際食べないが、顔を洗うようになったのよ。

夕方になると、他の小鬼達と同じく天井裏に帰っていくの。

あんなに小鬼がいたら、天井が落ちてきちゃいそう……。

でも今まで一度も、小鬼が原因で天井が落ちたことはないんだって。


勇隼様達ととる朝餉も、同席させてもらっている。

桔梗様と華様は、嬉しそうに笑ってくれて、

千隼様だけが目をまん丸にしていた。

勇隼様は、食べながら、私と蒼の顔を見比べて、面白そうに見ているだけだ。


それが済むと、歯を磨いて道場へ行く身支度を整える。

房楊枝(ふさようじ)と呼ばれる歯ブラシがあった時は、ホッとした。

これは柔らかい木を、ブラシのように割いて一房にするの。

歯磨き粉もあったのよ。ハッカみたいな味で、スースーするの。

虫歯にはなりたくないもの、それはそれは丁寧に磨くわ。


準備ができると隼を携えて、千隼様と道場に行くの。

その間の蒼は、私たちと一緒に来る事もあったし、

他の小鬼仲間と、どこかへ行く事もある。


道場では、清志郎様と実道様、それから日替わりで

色々な部隊の方がいた。最初に精神統一のための座禅、

走り込み、素振り、型、打ち込み。

これだけで午前中が終わってしまう。当然のように手は豆だらけになった。

……稽古は趣味だったんだけどなぁ。

でも、あの不気味な影に触れなくていいと思うと、稽古に身が入った。

本当に、触りたくないんだもの……。

 皆さんは、そこで稽古は終了。私は居残りで隼を(つか)抜いて治める練習。

柄は刀の刃を治める所の名前なのよ。

私が稽古するようになって、清志郎様も千隼様も

そして実光様も同じメニューをこなしている。

終わったときには、当然私だけがヘロヘロでヨレヨレだ……。

隼を握っただけで、普段出ない力が出るとかは、全く無い!!

あって欲しかった……。

いたって地味に、真面目に毎日を積み重ねるしかなかったの。

街中の影については勇隼様が、色々な方法で調べてくれているみたい。

まだ、被害が出たとは聞いていなかった。


清志郎様は、とても褒めてくださる。それがなかったら、

早々に泣き言を漏らしていそう。

そのくらい実戦を伴う稽古は厳しかった。

それは慣れるしか無いので良いとして、

1番困っているのは自分自身の気の保ち方だった。

それを保つも何も、自分が気を放っていることすら実感が薄い。

たぶんできてるんだろうなぁ〜って感じでは、

あの不気味な影相手には心もとない。

切るたびに気を失っていたら、影がいくつもあった時に取り込まれてしまう。


午後の私は、気を感じることに全力を注いでいたの。

どうやったら、感じることができるのか。方法が分からないから、

まさに試行錯誤だった。

座禅してみたり、瞑想してみたり、修行僧のようだ。


そんな事をしていると、大抵は仁様か菊次郎様が

様子を見に来てくれる。体調と手の傷をみてくれて、

菊次郎様が薬を塗り込んで、包帯を巻き直してくれるの。


それが終わると、小春と読書。まだ音読から脱出できていない。

そうしてあっという間に夕暮れになって、小鬼達が屋敷に灯りを灯して歩く。

庭の灯籠にも明かりが灯るから、これがまた幻想的で素敵で……。

こうして湯あみをして、晩ご飯をいただいて、お休み3秒……。


翌朝は、小鬼達の転げまわる楽しそうな声で目を覚ますのよ。


私、エラクない?!真面目に頑張ってるよね?!

お願い、誰か、絶賛して〜〜!!!褒めてもらったら、また頑張れる気がするの!!

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