プロジェクト
ダンジョン省に辿り着いてすぐに俺達は会議に付き合わされることになった。
なおエウレカ本人は爆睡きめている。
「で、局所的にレベルを下げるというのは本当に可能なのか」
「それが可能なら一般人のレベルを一時的に制限する事もできるのではないか?」
「外部からそれができる装置ができれば国民の安全性は確保されるな……」
「だが反発が怖いな。今や探索者と言うのは国家にとっても最強の矛と盾だ」
「他国からの侵略に対するには彼等にも十分に働いてもらいたいものだがな」
「敵だけを無力化する装置があれば……できないだろうか」
各々方、好き放題言っているけど俺達も探索者だからね。
ダンジョン省に集まっている防衛大臣とか総理大臣とかの偉い人達が喧々囂々と言った様子で語り合っているけど、正直に言わせていただきたい。
俺達いる意味ないよな。
というかむしろこの議論の渦中に置くにはあまりにも発火点が低い。
流石に護衛は凄腕……フォースかフィフス、それも何十年選手ってレベルだ。
これを相手にするには俺じゃ力不足だけど、エウレカを抑え込むには彼らが力不足だ。
要するに死体の数を増やすだけ。
仕方ない、ここは泥をかぶるか。
「君は……」
「三上です。エウレカ……この爆睡エルフの第一接触者の一人で、護衛をしています。発言よろしいですか」
「うむ、今はどんな意見も聞き入れたい」
「では僭越ながら……まず探索者のレベルを制限する装置なんか作ったら情勢が荒れますよ」
「ほう、理由を聞いても?」
「ダンジョンの上層、つまり入り口付近じゃそこまで活発じゃないんですがね。そこそこ深い所に行くと人殺しって結構当たり前にあるんですよ。これは一般のニュースでも公開されてますし、ダンジョン省の情報でも幅広く知られています。必要なら犯罪者の減刑を盾に仮に出させることもある。それを念頭に聞いてください」
「ふむ、言わんとすることは見えてきた。そういったダンジョン内での犯罪者によるトラブルの問題か」
「そうです。そいつらがそんなレベル制限装置を手に入れた場合、確実に犠牲者は増えます。今は高レベルの探索者が見回りと素材回収で生計を立ててますし、ダンジョン周りも高レベルの人員を配置しているから安定しています。じゃあ、敵国の人間がいたと考えてください。ダンジョンを独占するようにして、ダンジョンの外ではレベル制限装置を常時展開。で、わざとモンスターを外に追い立てて壁をつくり、スタンピードを狙う。ほぼ確実に成功しますし装置の範囲内は壊滅するでしょう。お手軽な自爆テロが可能になります」
「だが装置の配置箇所を限定すればどうだろう」
「むりですね。設計図があればコピー、低品質でも扱い方次第で簡単に大量の人間が死ぬ環境を作れる。そもそも部品の横流しだってできるし、そういう立場の人に限ってダンジョンとは縁遠い場合が多い」
例えば医療機関、今回は注射が話の発端だったからな。
そういう意味じゃ患者に暴れられるのも困るし、そういう医療機関に真っ先に回される機械だろう。
で、中には悪徳な医者もいて怪我人が増えたとしてもどうでもいいという輩だっている……可能性がある。
なんていうのかな、利益とかの問題じゃなくて外交的とかそういう面で使える道具は何でも使う系の人はどこにでもいると思う。
何なら医療機関ならポーションの備蓄とかあるけど、あれ保険適用外で馬鹿みたいな値段するからな。
それ目当てにする開業医がいても俺は不思議と思わない。
「それに今の日本でその手の技術秘匿できると思いますか? 間違いなく他所で真似されますよ」
「むぅ……我々もその手の間者には注意しているし、対処もしているのだが……」
「そりゃ本気でヤバい相手に対する専門家であり、一部の強い人が担当しているだけでしょ。今後は人手が足りなくなりますよ」
「……ならば装置の開発は見送るべきか」
「それが無難じゃないですかね。やるにしても個々人で局所的なレベルダウンができるように学校や教習所で教える感じで」
「そうだな、欲をかけばこちらも狩られるか」
「あとこれは完全に俺の私見というか偏見ですが、そういうのを利用して探索者の発言力を弱めたり他国に売りさばいて地位を得ようとする野心家もいるんじゃないですかね」
「まぁ……否定はしない」
「ならなおさらやめておいた方がいいですよ。というかそういうのが開発できるかもと言うのもここだけの話にしておくのがいいでしょう。最悪の場合勝手に開発されましたってのが一番面倒なので調査はしっかりするべきです」
「そうだな。雑賀君と言ったね、リストを回すからそちらでチェックを頼む」
「承りました」
恭しく礼をした雑賀さん。
さて、俺は……このエルフを叩き起こした方がいいのかな?




