終幕
「テルが気にすることはない。フォステイは覚悟の上だったのだ。」
青い光が満ちて消えたとき、そこには誰もいなかった。
誰も。
「エアリー神が少しずつフォステイに力を与えていたのさ。」
「ハーテイの時のようにね。」
海の底で。少しずつ。
エアリー神の神力を得て一番玉様は帰ってきた。
似たような事が行われていたのか。
「私、一昨日、フォステイ様に見せてもらったの。
手首の裏を。まだらだった。人肌の部分と石の部分が混ざって。」
それは。
「ひかり、オリハルコン入りのワイングラスは、我々には扱えない。それで来てもらったが、
寒かったろう。頑張ったな。」
女神様の光に包まれると、下界だった。
「エアリー神の神殿はあのままですか。」
「神殿の主が消えたのだ。あの中にはもう、誰もおらぬ。」
「竪琴の音が?」
「ひかり、どうした?」
「いえ、ゴーデイ様、なんでもありません。
…私が限界だったから、フォステイ様は覚悟を決められたのでしょうか。」
わたしのせいですか。ひかりさんの声は震えていた。
「いや、自分が自由に動けるうちにと思いきったのだろう。そのまま女神に戻ったら、
さっきの作戦が使えない。ひかりのせいではないよ。」
強い風が吹いた。それは荒ぶる風の神の名残りの様だった。そして俺もかすかに竪琴の音を聞いた。
それから、彼女の柔らかい胸と暖かさと、その鼓動を思い出した。
さようなら。フォステイ様。
その夜。ひかりさんと俺は5番玉様と3番玉様に呼ばれた。
「どうする?戻りたくないならそれでも良いぞ。」
「ひかりさんは?彼女と一緒にいたいです。」
「1人だけしか、帰れないのでしょう?」
「それがな。もう、2番玉はもう人間だ。あちらのティル神と勇者テル、
セルデイとひかり。
その交換で行けそうだ。
まあ、これもエアリーがいなくなって、
妨害や私達の神力の吸収がなくなったからよ。」
「テルくん。私が好きなの?」
「はい!」
「何で自分から言わないかな。
うーん、そう。じゃあ、向こうで見つけられたら
付き合ってあげる。」
「え?」
その瞬間世界は暗転した。
「え、え、え、?」
「おいっ、テル、本当にテルなのかっ!」
「え、お父さん?」
「どこ行ってたのよ!一年以上もっ!」
え?お母さん?
「あ、お母さん、揺さぶってはダメです。彼は頭に怪我をしてます。
君、ここは病院だ。自分が誰かわかるかな?」
「あ、えーっと、茶樹林 照です。」
「キミはどこにいたかな。」
「ウッ、アタマが痛くて、えーと。」
「ゆっくりでいいんだ、何かないか。」
「ええと、穴に落ちて便利屋?みたいな?
神殿で働いて、修行、、かな、。
女神サマが、ああっ、ううっ、思いだせない??
頭がいたい!!」
「やっぱり。」
「刑事さん?何かわかったんですか?」
この人刑事さんなのか。
「あまり患者を興奮させないでっ!」
で、この白衣の人がお医者さんか。
「この町はずれに、廃墟というか営業を終了したホテルがあってね、いきなり昨日崩れたのさ。
キミはその瓦礫の中から発見されたんだよ。」
「えっ。」
「昔からそこは、カルト宗教の隠れ家という噂があったのさ。
お母さん、女神、神殿、修行。ご子息は拉致監禁されていたんですよ。
中学生の子供に。酷いことしやがる。」
「え、えっ?」
「お母さんね、テルが戻ってくると信じていたのよ。あの占い師さんが言ったとおりだわ。」
「ああ、先月。黒猫を連れた若い女の占い師が、急に尋ねてきたんだ。
そして、テルくんはきっともうすぐ戻ってきますよ、と。」
ティル神、セルデイ様。暗示をかけるのは
ひかりさんにしてくれと。
…ひかりさん!?
「あ、あのっ!近くにひかりさんと言う女の子はいませんでしたか?
ずっと一緒だったんです!」
刑事さんの目がひかった。
「残念ながら、キミひとりだった。」
「そんな!」
「教えてくれないか。ひかりさんのことを。」
「ええと、姓がひかり。日を狩ると書くそうです。
みこが名前。美しい子。
11のときからいて、今18で、あっ、実家は神社とか。」
「そんな小さい子供も攫ったのか!けしからん奴らだ。」
「見つけてください、ひかりさんを!彼女、身内の人がいないんだ!」
「その猫を連れた占い師も怪しいな。探すか。」
それは見つからないと思う。
「他に知ってる人は?」
「山本陽司さんかな、バブルの時代にディスコの帰りに、とかなんとか。
でもこのかたは一緒に行動してなかったし。」
「わかった、ありがとう。
キミは被害者だ。ゆっくり休むんだよ。」
それから一か月後。俺は退院した。
刑事さんが尋ねてきた。
「引越すそうだね。」
「ええ、一年間の神かくしから帰ってきた、カルト宗教の被害者ではね、
周りがうるさくて。」
「君が言った日狩さんだが。対象者は大正時代の人だった、おっと、洒落ではないよ。
行方不明になって101年。
この人以外に当てはまる人はいなかった。」
「そうですか。」
「だけどね、山本陽司さんはいたんだよ。
1990年、ディスコ帰りに消えた。
それがあるからキミの話に信憑性が出たんだ。
まあ、とっくに失踪して何年も経つから、死亡扱いになっている。
キミが見た、山本さんはいくつぐらいだった?」
「そうですね、30代。40にはなってないかと。」
「では違うね。彼は1966年の生まれ。50代のはずだ。
誰かが、彼等の名前をかたったんだ。」
「わかりました、
とにかくあまり思い出せないんです。」
「隣街で三浦 翼くん、斎藤 オサムくん、という少年がいなくなったらしいが、キミと同じくらいにね?もしかして知らないか?」
「いえ、そんな名前の少年は知らないです。」
ここでフエルドラドの話をしたってみんな信じてくれないとわかっている。
チラリと母にだけ話をしたら、
速攻、病院に連れていかれて、
「薬物を投与された可能性がありますな。」
だった。
「その、大正時代のひかりさんがいた神社ってまだあるんですか?」
そこは潮風がふく海沿いの町にあった。
今度引越す街の近くだ。
長い間入院して復学するということになっている。
義務教育の中学はあと半年残っている。
そこから、また、少し離れた高校に行く。
そうやってるうちに、世間の感心も薄れるだろう。
「その神社は関東大震災で崩壊して建て直されてる。以前いた神職の一家は全滅したらしいから、
今いるのは、他所からきたひとだね。」
街中で木々に囲まれたところにその神社はあった。
さわさわさわ。風が通り抜けていく。
「随分と遅かったじゃない。」
「ひかりさん!」
「ひかる、知り合いかい?」初老の男性と女性が、離れた所から声をかけてきた。
「いえ、道を聞かれただけよ。スマホ持ってる?
あ、調子が悪いのね?」
そう言ってひかりさんは、自分のスマホを出して、
道を教える振りをして、LINE交換をした。
「お待たせ。お義父さん、行きましょう。」
その夜。長文のLINEが届いた。
お猫様が暗示をかけてくれていたこと。
俺が話した事がちゃんと伝わっていたらしい。
ひかりさんは、
青山ひかるという名前になってるそうだ。
「青山さんには歳が離れた妹さんがいて、
遠くに嫁いで娘がいた。コレは本当。
だけど、彼女らは五年前になくなっているのよ、
それを、」
お猫様が色々やったそうだ。戸籍も。
(詳しく聞くとやばそうなんで聞かない。)
「青山さん夫婦は子供がいなかった。でもね、遠く薄くだけど血は繋がってるの。」
ひかりさんのお父さんには妹さんがいた。
叔母さんにあたる人が嫁いだのが青山家なんだそうだ。
「おばさまの子供の子供の子供?くらいになるのかしら?従兄弟の子供のまた子供?」
本当の親だと思って孝行して行くつもりよ、と。
神社の散歩は青山さんの日課だそうだ。
次の週末、神社で会った。
ひかりさん改め、ひかるさんは高校三年生で受験で忙しいのだという。
「近くに引っ越してきたんでしょ。」
「ひかるさんと同じ高校に行きたかったけど、すれ違いかあ。」
「ひかりでいいわ。
指をみせて。ああ、やはり隠されてる。」
ひかりさんが、手をかざすとあの加護の指輪が現れた!
「ど、どうして?」
「多分、男の子が金剛石の指輪をつけてると目立つから、かな。
覚えてる?私には少し力があるから。
それが見えたわけ。」
「ああ、ホントに夢じゃなかったんだ。」
涙が滴り落ちる。ひかりさんに会ってるのに、まだ夢のようで、実感がなかったんだ、けど。
「きっとね、ゴーデイさまはわたしたちに、
忘れて欲しくなかったのよ。」
お揃いの指輪ってエンゲージリングみたいね?
そう言って手を広げてみせるひかりさんの指には、俺とおなじ加護の指輪がきらめいていた。
終。
これで終わりです。読んで下さってありがとう。
氷の中に女神様が複数いて、1番目と2番目がバッテングしてしまう、風の神が横恋慕してるというのは、
高校生の時書いてたやつで未完でした。
もう、ン10年まえ。厨二病と言う言葉ができる前ですね。
グランディ王国物語、
続 グランディ物語もよろしくお願いします。




