第208話 誓いの時 ★カミル SIDE
教会の扉がゆっくりと開いた。扉の前に立っているのは勿論、師匠と愛しのリオだ。2人の姿が見えた瞬間に、招待されていた国内外の王侯貴族たちが感嘆の溜め息を吐いた。僕も既にリオのドレス姿を見ているはずなんだけれど、何度見ても今日のリオは美しくて見惚れてしまう。
そんなリオと師匠がゆっくりと1歩を踏み出した瞬間に、ポン!ポンッ!っと精霊達が招待客の頭上に現れた。それも数匹なんて数じゃ無い。リオ達がゆっくり進んで僕の前に来るまでには100匹を超える精霊が頭上を飛び回り、リオに「おめでとう!」と声を掛けては頬にキスをしたり、頭上をグルグル回って見せたりしていた。
こんな事がこれまでにもあったのだろうかと、アンタレス帝国の皇帝をチラリと横目で確認したが、どうやら皇帝も驚いている様だ。きっとリオが『聖母』の称号を得た事に関係しているのだろうね。空を舞う色取りどりの精霊達はとても綺麗で、幻想的な風景を醸し出している。
一旦は精霊達に、驚きと共に視線を奪われるも、皆の視線は美しいリオへとすぐに戻ってしまう。今日つけているアクセサリーも、ドレスも超一級品である事は間違いないんだけどね。それらの美しさは、リオの美しさを引き出すための、ただの道具に過ぎなくて。それくらい、今日のリオは自信に満ち、輝いている。
女神像の前で待つ僕の所まで、師匠のエスコートで進んできたリオは、師匠に小さく微笑んでから僕の手を取った。ベール越しではあるけどリオと視線を合わせて小さく微笑む。何となく周りがざわざわしているけれど、僕とリオは気にならないぐらい、2人の世界に入り込んでいた。
そこへコツコツと、真新しい靴の足音が聞こえる。リングボーイを務めてくれるルトが、指輪を乗せたリングピローを両手に抱え、慎重に歩いて来るのが見えた。実年齢より幼く見えるルトを、招待客逹は温かい目で眺めている。ルトはノルト侯爵に引き取られてから、魔法はもちろん座学も必死に勉強していると報告を受けていた。ノルト侯爵曰く、まるで幼い頃の僕を見ている様だと。そんなに根詰めて勉強しては体に悪いのではないかと侯爵に話したら、「殿下だけには言われたくないと思いますよ」と言われてしまったんだよね。
ルトを眺めながら、侯爵との会話を思い出してほのぼのとしていたら、急にルトがふわりと浮いたね。招待客達も驚いてざわついているが、理由は分かっている。間違いなく精霊達のイタズラ?いや、これはサプライズかな?ふふっ、嬉しいね。ただ、精霊達に運ばれて来るルトはちょっと顔が引き攣っているみたいだ。急に浮かせられたから驚いたんだろうね。それでもフワフワと浮きながら、指輪を落とさない様に頑張ってバランスを取っている様で、何事にも一生懸命なところがとても愛おしく感じるね。
ルトが僕達の前に到着し、指輪をお互いに緊張しながらもつけ合った。前にもプレゼントされた時につけて貰ったりしてたから、指輪の交換はすんなりとはめる事が出来んじゃないかな。本来デュルギス王国では、魔力を込めて相手の額にキスをする事で誓いを立てるのだが、今回は僕の希望で、リオのいた世界で行われる、指輪の交換を儀式に取り入れる事にしたのだ。きっとこれから結婚する貴族や、魔力を持たない平民達の結婚式には、指輪の交換が流行るのでは?と期待している。僕達の結婚式を真似してくれる者達が増えたならば、僕とリオが王族として必要とされ、愛されているって事だからね。
指輪の交換が終わった所でルトが下がったね。この後は誓いのキスをする事になっているのだが、リオも緊張しているのがベール越しにも分かる。ここは僕がしっかりしないとね。ベールを後ろに流し、リオと視線を合わせて大丈夫だよと気持ちを込めて微笑んで見せた。リオも肩の力が抜けた様で、柔らかな微笑みを返してくれる。
顔を少しだけ上に向けて目を閉じたリオはやっぱり美しい。緊張しながらも、リオの頬に軽く手を添え、唇に優しくキスを落とした。その瞬間、パァ――――っと光輝いたのは僕達の後ろに祀ってある女神像だった。空から金色の光がキラキラと降り注いでいる。そしてその直後、空が優しい白色に光り、ゆっくりと純白の光が舞い降りた。精霊と相まって、おとぎの国での出来事みたいだね。
あ!あそこに見えるのは女神様と……精霊王かな?女神様はハッキリと見えるけど、精霊王は雲の姿だね。さすがに尻尾のたくさんある狐の姿では目立つもんね。リオに視線を向けると小さく頷いて、女神様と精霊王にお礼の気持ちを込めて手を振ったら、女神様は微笑みながら振り返してくれたよ。精霊王は大きな雲でしかないから表情はちょっと分からなかったけど、僕とリオの結婚を喜んでくれている事は分かったね。
さぁ、後は僕達が退出すれば結婚式は無事に終了という事になる。僕はリオに「退出するけど大丈夫?」と小さく声を掛けた。リオは「ええ」と小さく返事をくれたので、スッとしゃがんでリオをお姫様抱っこして出口へと歩き出した。リオは小さな声で「ちょっと、カミル!」と一旦は抵抗したけれど、僕が降ろさないと理解したのか直ぐに諦めて、周りで「おめでとう!」と声を掛けてくれる招待客逹に笑顔で手を振り返している。この素敵な女性が僕の妃になるのだと、皆に自慢して回りたいぐらいだよ。
今日の結婚式が、リオとの良い思い出として記憶に残ってくれたら嬉しいな。僕とリオはこれから普通の人よりも長い年月を生きるらしいからね。その分たくさんの思い出を作って、国のために働いて、たまにケンカして……お詫びのプレゼントを贈ったり、誕生日を祝ったりもしてみたいな。僕の人生は、リオと共に……あ、ソラとシルビーも一緒にね。これからも愛する家族や仲間達と、楽しく生きて行こうと思っているよ。
ここまでお読みくださり、ありがとうございます!
本編としましては、ここまでとなります。
この後は1話か2話、結婚式をギルバート国王から見た視線と、皆んなの心の声を書いたオマケ?の作品となります。
最初はギルバート国王から見た結婚式を書こうと思い、そちらを最終話として書いていたのですが、リオとカミル視線では全く感動しなかったので書き直しました。
ただ、国王バージョンにはパレードの話しなども書いており、こちらも案外気に入っているので皆様にも読んで貰いたいと思いました。
1話で纏められるか分かりませんが、残りのお話しも楽しんで頂けたら幸いです。




