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悪役令息に転生しました。

 人生とは、ある日突然変わるものである。


「え……何この顔。めちゃくちゃ綺麗なんだけど」


 ベッドから起きた俺は、海外風の見慣れない豪奢な部屋に驚いたあと、鏡に映った少年の顔を見て驚いた。


 雪のように白い肌。ほっそりとした輪郭。長い睫毛に、夜明けの空のような色の、丸くて大きな瞳。少し長めの銀色の髪は、少年と少女の境目を曖昧にしている。

 なんというプリティフェイス。

 美少年というものが世界に存在するなら、その言葉を体現するかのように、鏡の中の少年は美しかった。


「……いや、でも、この顔誰?」


 目を覚ます前の記憶はぼんやりとしている。

 うーんと顔を顰めていると、部屋に入ってきた花を抱えたメイド服を着た女性が、俺の姿を見て叫んだ。


「坊ちゃまが……レイ坊ちゃまがお目覚めになりました!」



「ああ……! 本当にレイ、レイなのだな!」

「生きている間に、レイちゃんともう一度話すことができるなんて。……本当に、まるで夢のようだわ!」


 それから、メイドさん(らしき人)のあとに沢山の大人が部屋に入ってきて、最後に身なりの良さそうな両親(たぶん)に抱きしめられ、俺は反応に困った。


「レイちゃん……やっぱり、私たちが分からないかしら?」

「お前が記憶喪失――というのは、本当のようだな」


 お母さん(仮)は銀髪青目の美女、お父さん(仮)は金と銀の混じった灰色の髪に、俺と同じ目をした美中年だ。

 話から考えると、どうやらこの体の持ち主、レイくん(仮)は、長い間意識不明で眠っていたらしい。


「……申し訳ございません」


「なに他人行儀なことを言っている。私たちは家族なのだ。ほら、パパと呼んでみなさい」

「パ……ぱぱ」


 言われるがまま言葉を繰り返し、俺は顔に熱が集まるのを感じた。

 ――なんだこれ。すごく恥ずかしい!

 だが、父(仮)はその言葉にいたく感動したようだった。


「恥ずかしがるな。昔は、そう呼んでくれていただろう? だが……そうだな。今のお前にとって気恥かしいなら、これからは『父上』と呼びなさい」

「じゃあ、ママも母上って呼んでほしいわ」

「……ちち……うえ? ははうえ……?」


 俺がそう呼べば、二人は心の底から嬉しそうに、満足気に頷いた。

 

「うん。そちらのほうが、今のお前には合っているようだな。……仕方ない。お前はあの日以来、眠ったままだったのだからな」

「何か、理由があったのですか?」

「八歳の頃、お前は魔力のコントロールがうまくいかず、魔法を使いすぎてしまったんだ。それからというもの、今日まで眠り続けていた。とはいえ、これでお前が寝ていた間、体を維持するための魔法をかけ続けた甲斐があったというものだ。生きている間に、もう一度お前と話せたのだから」


 父上はそう言うと、何か思い出したような表情かおをして手を叩いた。すると、メイドさんたちがさっと、俺に新しい服を差し出した。

 そのデザインに、俺は不思議と見覚えがあるような気がした。


「そうだ。お前ももう、十五歳。学校に通わねばならない」

「学校……ですか?」


 八歳から眠りにつき、目覚めたばかりのお坊ちゃんに、すぐに学校に通えというのは少し鬼畜仕様ではないでしょうか?


「どうした? 怪訝な顔をして。やはり、不安が残るだろうか。私から国王陛下に、まだ通学は難しいと申し上げるべきか?」

「い、いえ! 大丈夫です。魔法、ちゃんと勉強したいし! 精一杯頑張ります!」


 俺はぶんぶん顔を振った。剣と魔法のファンタジー。目の前の両親を安心させるためにも、学校には通うべきだろう。


「それで、学校の名前は何というのでしょうか」

「王立魔法学校――ヴェリタス魔法学校だ」

「え……?」


 その名前に、俺は聞き覚えがあった。

 何故なら、俺が知る『物語』の中に出てくる魔法学校と全く同じ名前だったからだ。


「それで……あの、僕の名前はなんというのでしょうか?」

「それも忘れてしまったのか? お前の名前はレイ。伯爵令息、レイ・シルフィードだ」


 その名前を聞いた瞬間、俺のなかで何かが弾けた。

 ヴェリタス魔法学校に通う美少年、レイ・シルフィード。

 それって――……。


「悪役令息じゃん!」





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