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追放された龍の番は銀の狼に拾われる  作者: 鬼瓦権蔵


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鱗の秘密

翌日。リルリアーナは街外れにてまた若い龍の騎士たちと遭遇した。今日は三人行動のようだ。それぞれが赤緑黄の色とりどりのパプリカのような髪色をした3人だ。


「お!族長の女じゃん!今日は普通の服なのな」


確かこのサン姉と同じ赤髪の失礼な人はランドルと名乗っていただろうか。彼の言う通り、今日はサン姉コーディネートのワンピース姿だった。それは別にいい。それより、とリルリアーナは思った。


「私、族長の女じゃ…」

「どこ行くんだ?街に出るならこっちじゃなくね?」


人の話を聞かない奴である。

まぁこの人に誤解されてようがいまいがどちらでもいいかと思い、質問に答えるリルリアーナ。


「今日はちょっと、そろそろちゃんと2人で話をしないとだめかなって思ってて…」


サンディが言うにはリルリアーナが呼んだら文字通り飛んでくるとのことである。本当かは分からないが、それなら広いところがいいだろうとこの町外れを選んだ。だって龍の姿では嵩張って邪魔だろう。領地に呼び出して2人で話をする事は族長であるカイゼルにも勿論相談している。彼はいつものように優しく笑って、ゆっくり話しておいでと言ってくれた。


「話?誰と?」

「それは…。あ!そうだ!その前に龍族の男の人に聞いてみてもいいかな?」

「?おう」


よく分からないがそう言われると残りの若い龍たちも、なんだなんだと近くによってくる。


「番ってだけでいきなり好きになるものなの?年齢だって全然違っても気にしないものなの?」

「んー俺はまだ番がいないからわかんねーけど、オッサン連中はみんなそういうよな。へたすりゃ相手が赤ん坊でも好きになるって」

「それな」


ランドルの言葉に緑髪の少年たちも同調する。


「もう本能みたいなもんだしって言うけど、正直俺ら若い世代にはピンとこないんだよなー」

「普通に番以外と付き合うやつもいるしな」

「今どき番なんて見つかったらラッキー!なぐらいだもんな」


ははは!と若者らしく笑う。リルリアーナが思ったより軽めの答えだ。ならやはりトゲピーが変なのか?


「あの、龍族の男性は番を閉じ込めるのは普通なの??相手は嫌じゃないの?」


それこそリルリアーナには我慢できないことだった。カイゼルたちもそれは犯罪だろうと言っていたが…。


「それは普通じゃね?程度はあるだろうけど、宝を大事にしまうのも龍の本能だし」

「龍族の女はそれを大事にされてるって感じるらしいもんな。うちの母親が言ってた」

「特に権力のある男程、番を隠したがるって言うよな。弱みにもなるし」


龍族と妖精族の価値観は違いすぎてやはり全く理解ができない。リルリアーナにはそんなに重たい愛情はわけがわからなかった。けれど、だ。

弱み…?その発想はなかった。番というのはそこまで大事なものだったのだろうか。見つからないのと失うのとではそんなに違うのだろうか。


「一度得た番を失くすと、その…やっぱり辛いの?」

「辛いなんてもんじゃねーよ。よっぽどメンタル強い奴じゃなきゃ気ぃ狂って死ぬぜ。うちの大叔母さんも今でこそ平気だけど、番を失くしたときは大変だったみたいだし」

「死ぬ…!?トゲピーが!?」


そういわれてみれば彼はあまりメンタルが強そうではない。リルリアーナはそう思って顔色を悪くする。


「ん?トゲピー生きてんの?」

「あ!あの銀狼のイケメンにこの子を奪われたってことじゃないか?」

「えー、せっかく見つけた番を奪われるとか龍として終わってんじゃん!」


ダサすぎて俺なら死ぬね、ダサ死!と言って若者たちはわっはっは!と笑う。突っ込めるやつは誰もいない。


「私…龍族じゃないから全然知らなくて…」


リルリアーナはもしかしたら自分がとんでもないことをしてるのではとオロオロしだした。死んでしまうなんて恋がどうこう以前の問題だ。


「いやー、番をとられる方が悪いって。嫌がってんならともかく、あんた好きでここにいるんだろ?」

「そうそう!それに俺ら若者からすれば他部族にまで考えを押し付けるのは古いっていうか」

「時代は多様性だよなー」


どうやら長寿の龍族でも世代間による意識の差はあるらしい。しかしリルリアーナはますます混乱する。


(やっぱり私がいなくてもトゲピーは大丈夫ってこと?

死ぬっていうのは大袈裟なのかな??でもでもトゲピーは若者じゃないし…)


「で、トゲピーって何龍なん?トカゲに似てるってくらいだから小さいのか?」


ランドルが興味本位で聞いてくる。リルリアーナも何龍?そういえばなんなんだろう…と初めて考えた。比較対象がいなかったため気にしたこともなかったのだ。


「他の龍をあまり知らないからよく分からないけど…トゲピーは私を背中に乗せられるくらいの大きさよ」

「ふーん、まぁよくいる龍ってとこか?俺は火もふけるスピードタイプだけどな!」


背中に乗せられるくらい。その言葉に何も具体性や限度がないことには気づかないランドル。


「トゲピーも…火は吹けたわ。昔鳥を焼いてた」

「焼き鳥作れるくらい火力弱めなのか?俺だったら鳥が黒こげになっちまうな!」


その大鳥は骨すら残らず焼けたため、食してはいない。


「私、ここに来てから殆ど話をするのを拒んでたから、一度ちゃんと2人で話さなきゃって思ってるの」

「番なら呼べば来るんじゃないか?鱗渡されてんだろ?それがあれば呼応するだろ」

「もし話が拗れそうな俺らがそいつぶっ飛ばしてやるよ!」

「これでも俺たち最強の龍帝陛下に忠誠を誓う帝国騎士団だからなー!」


鱗?あれにそんな機能があったなんて知らない。しかも今のリルリアーナは持っていない。この前渡された時も投げ捨てて…

と思ったところで、はっ!と気づく。


朝、サンディに髪を結って貰ったとき。それ自体はあまりに慣れすぎていて気にしていなかったが、何か髪飾りを後ろにつけるときに含みのある笑いをしていなかったか?


『今日はあまり髪を崩さないようにして下さいね』と。


その言葉を思い出し、ささっ!と髪に付いていたバレッタを外して手に取る。黒曜石かと一瞬見間違えるそれは…。


「これ、トゲピーの鱗だ!」

「え」

「いや、それその黒さ」


さては仕組まれていたのかと怒りを滲ませつつリルリアーナは言う。だが怒っても迫力のない彼女本人よりも、その言葉とその手にある極黒の鱗を見て若者たちは恐怖と驚愕に表情が固まる。


「いやちょ、待て、トゲピーってまさか…」

「サン姉まで使って!もう!トゲピー!近くにいるんでしょ!?話があるならきなさいよーーー!!」


バサァッ…!!


その叫びに重なるように、上空に大きな黒龍が現れた。


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― 新着の感想 ―
すごく面白くて一気読みしました! 特にこのイキり三人組の回が好きです。 この三人以外もキャラがそれぞれ際立っていて、突っ込みやボケも秀逸で笑えました。
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