コード89「未来は分からないけど」
第89話
前回、エリナと知り合ってから
サマーデュエル本選はみなの体力の事も考えられ1日あけて、2日後となった。
エリナとカナリーの2人は行かなければならない場所があった。
病院。
そこに入院しているのは、エリナを虐めていた男子生徒。
エリナに記憶はないが、カナリーはモンギィ・レクスに飛ばされた際、
男子生徒らを見ていた。そしてカナリーが穴から出た時に、
倒れているところも目撃している。
ゴールした日、教員らに話を聞くと病院に入院していると、
死んではいないと聞いていた。
カナリーはエリナの知り合いなのかもしれないと、
話を聞きに今こうして病院に来ているのである。
「話は出来ますが、長時間はお控えください。どうぞ。」
看護師にそう聞き、2人は病室に入る。
エリナを虐めていた中心人物。
「…はっ!なんだよ。嫌味か?てめぇはゴールしたんだろ。魔術の事黙ってたんだな。いい気味だろ。俺らはお前の事バカにしてたけど、お前は俺らの事心の中でバカにしてたんだろ。話す事なんてもうねぇよ。」
エリナは少し困ったように笑顔を向ける。
「あの…実は、私今記憶が無くて。申し訳ございません。私はバカにされていたのですね。そして、私もバカにしていたのですね…。」
虐めていたリーダー格の男子は困る。
「はぁ…。俺さ、昔虐められてたんだよ。魔小学校の頃。だから、お前の事見てると昔の俺を思い出して、くそむかつくんだよ。だから虐めてた。止められなくなってた。虐めはもうしねぇよ。記憶のないお前に言っても何もないだろうけど。あと、俺らの知ってるお前はただただ弱腰で、ジメジメしたような根暗女だったよ。それしか言えねぇ。もう帰ってくれないか。傷が痛む。」
カナリーはお辞儀をする。
エリナは何か考え、何かを言おうとした。
でも、喉元でその言葉は停滞し、戻っていく。
「以前の私ならどう言うのか分かりませんが、貴方達が生きていて、本当に良かった。今はただそれだけを。」
エリナもお辞儀をし、カナリーと共に病室を後にした。
「はっ!頭ん中お花畑かよ。…以前もそうだったな。優しくしたって、誰にも優しくされない。だから誰かのためにとか、もうやめたのにな。あ~~、俺も記憶消してぇ…。ったく。二度と顔見せんじゃねぇ。」
エリナを虐めていたリーダー格の男子の心が少し変化した。
ような気がしただけだった。
エリナとカナリーは重い気持ちを紛らわせる為に
交流を深めるべく、2人でサマースペルフェスを回る事にした。
「あ!これ、とっても美味しいです~。」
カナリーはワッフルを頬張る。
「一口、どうぞ~!とっても美味しいですよ!」
エリナに向け、ワッフルを差し出した。エリナは
最初は遠慮していたのだが、カナリーの圧に負け、
差し出されたワッフルを一かじりした。
「…美味しい。すごく美味しいです。」
エリナの表情が柔らかくなる。
こういう時は甘いもの。
お互いに食べ物を分け合えばおのずと
仲良くなれる。カナリーの持論である。
「エリナさん、街歩きをしていて何かぴんと来るものはありますか?今はお祭り中ですけど。」
エリナは辺りを見回す。
華やかに装飾された都市。
楽しそうな子供たち、デートをする男女、
家族でお祭りに来ている者達。
それらをエリナは見回す。
「ダメです。全然思い出せません。すみません…。」
ワッフルを手に持つ位置が下に垂れ下がる。
申し訳なさそうに俯いていた。
そんなエリナの手を、カナリーは掴み、
不器用になんとか励まそうとする。
「エリナさんの記憶が戻らなくても、戻るまで、戻っても、その先もずっとずっと、そばに居ます。何が言いたいかと言うと…。未来は分からないけど、エリナさんとの思い出をたくさん作りたいです。楽しい事、辛い事も一緒に背負わせてください。」
改めて、魔性の声だと思った。
どうしてこの人の声は、こんなにも。
信じたくなるのでしょうか。
「ありがとうございます。カナリーさん。私も、そばに居ます。」
2人の仲が更に深まり、友情が芽生えた。
2人は寮に戻る。
エリナと同室だった人はきっと今頃驚いている事だろう。
1人で説明したいと、エリナはカナリーに言い、ひとまず解散となった。
ほんの少しだけ、カナリーは心配していたが、きっと大丈夫だろうと
信じて見送った。
プツン
「ねぇねぇ。■■ちゃんはどうして、そんなに■■なの?」
私ってそんなに、■■なのかな…。
「あっはっは!こいつ何もない所で■■んでる~!」
うぅ…。痛い。
「■い。触らないで。嫌!」
埃が付いてたから…。
「どうしてそんなことも■■らないんだ?親御さんに教えてもらえなかったのか?」
■■ちゃんの為にって思って…。
「■■ちゃんに花壇のお世話をお願いすることにしました。皆拍手~」
お花さんは好きだから…嬉しいな。
どうして……?なんでぐちゃぐちゃにしちゃうの…?
お花さんがかわいそうだよ…。
みんな…。
カナリーははっと目を覚ます。
「お昼寝しちゃってた…。」
汗が服を濡らしていた。
ソファーに腰掛け、水を一口のどを潤した。
そういえば、私も前世では虐められてたっけ。
だから、飛行機の中で帰りたくないって思ってたんだよね。
嫌な記憶だ。忘れてしまいたい。
でも、嫌な記憶ほど、忘れられない。
人とはそういうものだから。
「はぁ…切り替えよ!明日は本選!」
その様子をマナが後ろから、カナリーを見つめている。
マスター…。
カナリーの記憶が少しずつ開示されていきますね。
前世の彼女は虐められていました。
エリナと男子の話を聞いて、記憶の扉が少し開いたのでしょう。
忘れないでください。
第89話、読んでいただきありがとうございます。




