コード66「別世界線:魔の1分間」
第66話
前回、時環の大魔女から話を聞いた後から
マナは魔剣ノ魔女の前に降り立つ。
魔剣ノ魔女が瞳をゆっくりと開け、
マナが入った聖白之王をじっと見つめる。
彼女が剣を引き抜いた時、山が、火山が、
空間が揺れる。
紅きドロドロとした灼熱の死が纏わりつく空間
魔剣ノ魔女の背後には、世界観にそぐわない機械パネルがあった。
そのパネルには、
[Do the likeliest、and God will do the best.]
(人事を尽くして天命を待つ)
そう書かれていた。なるほど。
システムの起動もしないといけないわけですね。
「まずは、システムを起動させるところから。そうなると、1分以上かかりますね。」
回避。
急な殺気を感じ、マナは首を傾ける。
マナの背後の岩壁が上と下に分かれる。
マグマが別エリアから流れ込んでくる。
超高速。
気が付くと、魔剣ノ魔女が懐まで来ていた。
「スキル発動。<スキル・ボックス>。」
光の箱の結界で魔剣の軌道を逸らした。
これなら…。
しかし、光の箱が破壊されてしまう。
魔剣ノ魔女の瞳がこちらの命を刈り取るかのように輝く。
マナは移動しながら、ボックスを張り直しては、斬り裂かれ、
装置へのルートを考えていた。
「装置までの道筋、演算します。」
マナは魔剣ノ魔女の苛烈な攻撃を華麗に躱しながら
パネルまでのルートを演算していた。
見つけました。
たった一つのルートが浮かび上がった。
魔剣ノ魔女が居合の構えを取り、横薙ぎを繰り出す。
「構え、タイミング、斬撃までの時間、今。」
ボックスを足場にし、魔剣ノ魔女の斬撃を躱しながら頭上を華麗に宙返りする。
そして、装置へとたどり着いた。
システムが自動的に起動する。
センサーで起動したらしい。
[God helps those who save the world.]
(天は世界を救う者に手を差し伸べる)
タッチパネルに手を置いた。
[Certified. Verified. All Green.]
(認証、確認、オールグリーン。)
[Start connecting to the world!]
(さあ、世界のつながりを開始しましょう!)
重低音と機械音が鳴り響く。
[Global Assist return has begun. 1 minute remaining. Good luck!]
(グローバルアシストリターンが始まりました。残り時間1分。ご武運を!)
60と表示され、カウントダウンしていく。
世界的大地震が発生する。
山が、火山が、世界が崩れていく。
だが、魔剣ノ魔女はそれを赦さない。
斬撃の嵐。
マナは<スキル・ボックス>を何重にも重ね掛けしながら自身とシステムを守っていた。
残り時間、50秒。
まだ10秒しか経っていない。
マグマが魔剣ノ魔女の頭上に降り注いだ。
しかしその全てを、マグマを”斬った”。
魔剣を片手にぶら下げながら、
優雅に一歩、また一歩とマナの方へ歩いてくる。
[Time remaining: 40 seconds.]
(残り時間:40秒。)
これほどまでに、1分が長く、
永久だと感じたことはなかった。
一瞬でも気を抜けば、首が落ちる。
マナは心魂体に戻るだけだが、肉体が無くなれば、
世界を巻き戻せなくなってしまう。
なんとしてでも、耐えきらなくては。
[Time remaining: 30 seconds.]
(残り時間:30秒。)
マグマに触れそうになり、避ける。
だが、一瞬注意力が2つに分かれたその時、
極太の斬撃が聖白之王の左腕を斬り落とす。
腕の断面からは血は出ずに光が漏れる。
[Time remaining: 25 seconds.]
(残り時間:25秒。)
ベアトリクス様…。
この世界線では…私たちは他人かもしれませんが…
[Time remaining: 20 seconds.]
(残り時間:20秒。)
「スキル発動。<スキル・ボックス>結界。」
ボックスを魔剣ノ魔女の前後左右上下にそれぞれ展開し、魔剣ノ魔女そのものを止める。
[Time remaining: 15 seconds.]
(残り時間:15秒。)
「全力完全魔気解放…」
ボックスが全て弾かれ、斬られた。
魔剣ノ魔女は邪気ではなく、魔気を解放させた。
世界現精魔大戦の人々の苦しみ、嘆き、悲しみ、怒り
それぞれの感情が魔力に乗り、
それを魔女は魔剣に吸わせていた。
そして、超極太な斬撃を放った。
インペスト大山脈の一端が、斬られた。
聖白之王の右足が切断される。光が漏れる。
「っ…!!」
<スキル・ボックス>で、ロボットのような足を生成。瞬時に支えた。
[Time remaining: 10 seconds.]
(残り時間:10秒。)
(もう一撃は耐えられない。…使って。私の能力も!)
脳内で聖白之王の声が響く。
聖白之王の能力使用権限を得た。
「使わさせていただきます!!」
[Time remaining: 5 seconds.]
(残り時間:5秒。)
魔剣ノ魔女の斬撃が、聖白之王の、マナの首を捉える。
「スキル…能力…複合発動。<ダブルスキル・クイーン[BOX]>!」
聖白之王の背中に、四角い線で描かれた翼が生え、魔力の王冠が現れる。
魔術式の描かれた翼の生えた光のボックスが出現。マナを守った。
[Complete. Start regression.]
(完了。回帰します。)
「魔剣ノ魔女…ベアトリクス様。あなたの事を私は知っています。私とあなたはこことは別の世界線では仲間になって、共に過ごし、共に生き、マスターの為にその剣をふるってくれていました。この世界のあなたの想いも全部、私が持っていきたい。残したい。この箱に触れてください。あなたの事も救いたい。記録として、データとしてでしか残す事しかできませんが、あなたをデータ上で復元が可能です。いつか必ず。」
「…どうしてそこまでしてくれる?私は貴方を殺そうとしたのに。」
ベアトリクスの魔剣の魔力が尽き、元の人格に戻っていた。
「マスターならこうします。それに、私はまだ稼働しています。」
聖白之王の姿ではあるが、マナの心魂はまだ稼働している。
「そっか。じゃあ…連れて行って。記録でもデータとやらでも構わない。その幸せな世界とやらに。」
ベアトリクスはマナの手をとった。
パネルから、いや、下から、
星の内側から、光の粒子が大量に波のように
大量に溢れ出した。
それはインペスト大山脈、それぞれの火口から
光が世界へ大噴火した。
地割れ部分からも、光の粒子が散布される。
世界が光に包まれる。
宇宙空間に届いたその瞬間、謎の魔女帽を被った人物が光を掴み、更に広げる。
宇宙全てに光が広がる。
「ありがとう。よくやってくれた。これで、戻る。」
時環の大魔女はひとまず安心と言った表情を見せた。
”ありがとう。マナさん。私の事もそっちで、探してね。”
聖白之王は最後に背中を押してくれた。
マナの心魂と、ベアトリクス、リベラ、魔剣のデータをマナは抱える。
もう一つの小さな水色の欠片も一緒に時を超え、回帰していく。
この世界線のベアトリクスと一切出てこなかったリベラのデータも
マナが一緒に連れ帰りました。
小さな水色の欠片。これは一体…。
皆さんもお気づきかと思いますが、もう一人大魔女が出てきましたね。
クライマックスかと思いきやもう少しだけ続きます。
もう一人、救わないといけない人物が過去にいますから。
第66話、読んでいただきありがとうございます。




