コード50「心から信頼できる人」
第50話
前回、ダンテが封印され、残りはリーナただ一人
リーナの放つ魔弾はことごとくカナリーに弾かれてしまった。
追跡し貫通する魔弾に関しても、魔弾そのものを結界で何枚も閉じることにより
押し潰すことで魔弾を圧縮。カナリーは対応していた。
「はぁ…はぁ…6発目まで使っちゃった…あとは呪いの7発目のみ…」
捕まったら…どうなるんだろ、
私の人生ここで終わりか…
また会いたかったな…
(諦めるんじゃねぇ!まだ何か手立てはあるはずだ。もっと考えろ!)
まだ手があるっていうの?
全てを弾かれ、あと1発しかないのに。
「もうやめましょう!あなたは…私を撃ってはいますけど、その全ては私の致命傷から外れているように見えます。血管はさておき。あなたから殺気は感じないのです!もう…こんなこと…」
雨が更に強くなっていく。
雷も鳴り出し、足場も悪くなっていく。
この人はずっと…叫んでる。
心の中でずっと泣いてる…。
誰も信じられず、
全てを信じるわけでもなく、
ただ己のみを信じているかのよう。
さっきのダンテさんを見る目も、
信用ではなく、本当に…信じてないんだ。
ずっと強がってるんだ。
でも内側ではずっと泣いている。
前世でも見たことがある、私だ。
前世の私に似てるんだ。
何か欲しいものがあっても、
我慢して、お母さんに大丈夫だよって言って、
我慢してる時の私にそっくりなんだ。
「どうして…そこまで、あなたは泣いているんですか。」
リーナは驚く。泣いているわけではなかった。
少なくとも外面では泣いていなかった。
だけど、内側では激しい感情のぶつかり合いにより、
精神はすり減っていた。
どうしてわかったの…?
「ど、どうしてそう思ったの…?」
(ダメだ。耳を貸すな。)
「それは…あなたの心、魂が泣いているように見えるから。きっとずっと我慢…していたんですね。あなたは、いえ誰にでも初めは誰かいたはずです。1人ではなかったはず。違いますか…?あなたにとっての家族が…。お話を聞かせてください。」
誰でも言いそうな台詞。
でもそんな台詞が私の心に響く。
この人の声は優しくて…温かくて…
まるで…お母さんみたいで…。
きっと心から信頼できる人…なのかな…
お母さん…お兄ちゃん…
リーナは過去を思い出していた。
「わ、私には…お父さん…お母さん…お兄ちゃんが居た…。」
(おい!リーナ!!!)
「まず…お父さんが死んだ。原因は…魔力漏核だった。」
(…リーナがそうしたいなら、もう止めはしないよ)
カナリーは銃を降ろしたリーナにほっとしながらリーナの話をしっかりと聞いている。
「お、お母さんも同じ病気で…それで…お兄ちゃんが居たけど…でも…お兄ちゃんも居なくなっちゃた。どこかへ行っちゃった…私とお母さんを置いて…。そしたら…お母さんを治せるって言う人達が来て…でもそれにはお金がかかるって言われて…組織に入れば免除してくれるって言われた。それで私はある組織に半強制的に入ったんだ。」
カナリーは考える。
なんだか聞いたことのあるような話だと。
どこかで…。確か…。
「その組織に入ってからは、名前を捨てろと言われ、名前をリーナに変えました…。」
リーナは組織に入る前、とある悪魔種に出会っていた。
「あなた家族は…?」
幼いリーナはその半透明な悪魔種に問いかけた。
その悪魔種は黒い霧のように見えていた。
手で触れることが出来ない。
だが、何かの生き物ということは分かっていた。
彼女は悪魔と契約した。
その悪魔種の名前はザミエル。なんでも、『魔弾』と呼ばれる物を生成でき、
リーナは銃と言われる器具の作り方をザミエルから教わっていた。
組織の奴らはその魔弾の悪魔ザミエルを利用しようとしていた。
ロードベルト国にとって危険なものは
管理しようとする奴らの手腕だ。
リベラとベアトリクスのように。
だが、リーナは基本的には魔力矢や魔力球で戦っていた。
魔弾は危険な代物とリーナも理解していたからだ。
彼女は7発の魔弾を撃って、何度か死にかけていた。
組織はそんなリーナに半分呆れていたが、それでも彼女を手放すということはしなかった。
むしろ、手元に置いておかなくては危険と判断しているのだろう。
そんなある日、リーナは母親に会いたいと言った。
どれだけ会わせてほしいと言っても、
会わせてはくれなかった。
ある時、組織の中で母親に再会することが出来た。
「お母さん…!やっと、会えた!歩けるようにもなって…ほんとに良かった…。髪色も白に変わっちゃったんだね。」
だが、
「すみません、どちら様でしょうか…?私に娘はいませんが…。」
その周りに居た人たちも顔を伏せている。
え?どうして…?お母さん…?私だよ?
もしかして…私の事、嫌いになった…?
私…こんなにも頑張ったんだよ…?
人を殺すようなことを命令されても…裏で手を回して
その人を助けたり…ほんとはやっちゃダメだけど
でも、心までは汚れてないんだよ…?
「お、お母さん…?」
しかし、本当に分からなく困っている様子だった。
あぁ…そっか、また捨てられたんだ。お兄ちゃんの時のように。
記憶…治療の副作用…?
なんでもいいか。
私の事ももう何も分からないんだ。
…。
あれ、何のためにここまで頑張ってきたんだっけ…?
お母さんのために…でもそのお母さんはもう居なくて…
ここに居る必要も…。
リーナはその組織を逃げるように抜けたのだった。
手を汚すようなことも任務としてしないといけなかったため
リーナは組織に対して未練も欠片もなかった。
唯一、未練があるとするのなら、お母さん…。
カナリーはこれはリベラから聞いたルナリアの話に似ていると感じた。
「それで…私は生きがいもなくただ彷徨っていた。生きるために仕事を探した。でもそのたびに組織が私を追いかけてきた。非合法な仕事しか…もうできなかった。」
そこで出会ったのがダンテだったという。
ダンテはリーナに優しくしてくれた。
記憶にはないけど、死んだ父の面影を思い出していたのだろう。
だけど、あくまで仕事上の付き合い。それだけは明確だった。
リーナは社交辞令と感じ取っていた。
誰も信用できない。
お父さんは死んでしまうし、
お兄ちゃんもどこかへ行っちゃうし、
お母さんは変わっちゃったし。
表面上信用することは出来たとしても
リーナはダンテを本気で信用することは出来なかった。
カナリーはあることを思い出した。
ずっと何かが引っかかっていた。
もしかして…いやでも、
「あの、あなたの名前はなんていうんですか…?」
「私ですか?私は、リーナ・カミンタフ。ダンテの名前を少し変えて真似たんだよ。そっちの方が…いろいろと楽だったから。」
リーナは改名後の名前を口に出した。
「いいえ。違います。リーナさんの前の名前です…私の想像が正しければ…あなたは…」
カナリーは言うべきか、いやここで言わなければもう出会うことはないと
そう思ってしまった。
「あなたの名前は、フィリナ・ホウローさんではないでしょうか…?」
リーナの目が見開いた。
そう、今まで相対してきたこの人物こそ、
カナリー達が探していた人物。
フィリナ・ホウローだったのだ。
「ど、どうしてその名前を!?まさか組織の人間!?」
リーナ、いやフィリナは驚いた。
まさか、自分を知る人物なんて居ると思わなかったから。
「あなたのお兄さんに会いました。あなたとフィオラさんを探して欲しいと。あ、でもあなたのお兄さんの名前を聞き忘れてしまってて…。」
リーナは頭を抱える。
どうして今ここで兄が…?
私達を捨てたんじゃなかったの?
分からない。
分かんない。
分かんない
分から…
リーナの息が荒くなってしまう。
ダメだ。私はしっかりしないと。
(そうだ。それでこそリーナだ。)
強い私になったんだ。
(弱い自分は捨てたんだよな。)
「なんで…お兄ちゃんが…?どうして、どこで、なんで?分からない…わかんない…やだ…やっぱり頭…ぐるぐるする…。今更…なんで…胸が苦しい…。」
(そうだよな。悲しいよな。分かるよ。俺も同じだったからさ。)
なんで?
私達を捨てたくせに?
どうして?
どういう意図で?
てか、生きてたの?
あの優しかったお母さんはもう居ないんだよ?
お兄ちゃんのせいだ。
分からない。
分かんないよ!!!!!!!!!!!
(あいつもしかして嘘ついたんじゃ?)
嘘…だったの…?心から信頼できる人だと思ったのに!
「嘘…つかないでください。そんなの…嘘に決まってます。」
「嘘じゃありません!お兄さんは心配してらっしゃってました!ずっと苦しそうに!私の事を信じられなくても…お兄さんのことは信じてあげて欲しい!」
あぁ、怒りがこみ上げる。
誰に?
お兄ちゃんを虐めてたお父さん
私とお母さんを捨てたお兄ちゃん
おかしくなっちゃったお母さん
私をコマのように使う大人たち
悲しそうな目で見て来るダンテ
嘘を言ってくるこの人。
こんな世界…もう…
「もうこんな世界大っ嫌い!!!!!!!!」
(…止まらないんだな。なら…こんな世界一緒に壊そう。)
リーナの感情、今まで我慢してきたもの
その全てが臨界点を超え爆発した。
リーナは銃をカナリーではなく自身に撃ち込もうとする。
「永射魔弾高等魔術<ハイスペル・魔弾Ⅶ>!!!!!!!」
リーナは自身の心臓へ魔弾を撃ち込んだ。
魔術式が溢れ出す。
リーナの姿が変貌していく。
髪は伸び、黒く赤い角が生え、
肌は黒く、漆黒に。目は発光するように。
背中から銃身がいくつも生え
それはやがて翼のようになっていた。
尻尾のようにも銃身が連なって生えてくる。
両手にはマスケットが二丁握られている。
リーナの体には銃が大量に生成されていた。
マナはリーナを観測する。
「「「「「魔弾の大悪魔 」」」」」
「こんな大っ嫌いな世界壊してやる!私と…俺で!」
リーナの過去が明らかになりました。
リーナはフィリナだった。
彼女の感情はいつ爆発してもおかしくなかった。
そんな時に聞かされた兄の情報。
ずっと押し殺してきた感情が爆発し、ザミエルがそれに手を差し伸べる。
魔弾の大悪魔 降臨です。
2024年4月から始まったこの小説
50話達成です!ここまでたくさん読んでくださって嬉しい限りです。
ありがとうございます!
これからも精進します!何卒よろしくお願いします!
第50話、読んでいただきありがとうございます。




