コード35「龍精種と悪魔種」
第35話
前回、魔剣ノ魔女を止めた後から
「本当にいいのでしょうか?」
男がリーダーらしき者へ確認を取っていた。
複数人が廃棄都市を確認できる離れた場所に居た。
「あぁ、構わない。市民への言い訳はいくらでもできる。だが、魔女が復活したんだ。あの都市はもう捨てるしかない。さあ、始めろ。」
黒服を着た複数人が詠唱を始める。
「複数火炎魔術<スペル・火災球>」
「複数付与魔術<スペル・風与鈴>」
「大規模暴炎魔術<ハイスペル・炎塵旋風>!」
廃棄都市に火の竜巻が発生し始める。
その火の魔術は周りを巻き込み、次第には全てを焼き尽くすだろう。
「遠隔スキル<スキル・リモートパネル>。」
「魔力之魔術<スペル・魔破片>複数発動。」
マナがカナリーを遠隔で魔術の行使をした。
大きな火の竜巻が廃棄都市を襲った。
しかし、死者は0人。それは、マナとカナリーにより、皆を魔破片で守ったからであった。
魔破片は色んな形にすることも可能であり、今回は結界のように複数枚張り巡らせ、皆を守っていた。
「魔女の確認をしろ。」
組織の組員が望遠魔術で見渡している。
「魔女は…確認できません!先ほどの大規模魔術にて屠ったものかと思われます!」
(死体は確認できなかったか、しかし、魔女とあのバケモノを廃棄都市で屠れたのは良かった。本当に幸運だった。あのままでは、この国そのものが無くなるところだった。)
リーダーと思われる男はフードを深くかぶり、その場を立ち去った。
リベラ・ミクストが目を覚ます。
「ここは…?」
窓の外は既に夜になっており、星がとても綺麗だった。
「ここは、私達の学生寮です。マナがここの方が都合がいいだろうって。」
マナはホテルミルキィリヴァーでは都合が悪いだろうと予測し、
学生寮へとリベラを連れ帰ってきた。
カナリーは都合が悪い理由が分からなかったが、マナを全面的に信用している。
アミルダさんにバレないように帰ってきたはずなのに
学生寮へと入った途端にこちらに気が付いたらしく、
隠しきれなかった。仕方なく、事情を説明すると
アミルダさんは全く問題ないと言ってくれた。
刀身のない魔剣がベッドの横に立てかけてあり
リベラが目を覚ますと、青黒い二本の角が生えてきた。
そして、何が起こったのか、全てをリベラへ話した。
「組織は…私を殺そうとしたですね…そりゃそうです…だって彼女の力が目を覚ましたのですから…でもあなた達に助けられるなんて、どうしてです?あなた達を殺そうとしたですよ?それなのに、どうして…」
カナリーは迷いなくこう伝えた。
「それは、あなたが苦しそうに、辛そうにしていたからです。そんな人を助けられるのなら、私は助けたい。あなたはずっと、辛かったんでしょう。でも、もう大丈夫です。もう、大丈夫だから。」
カナリーはリベラの手を優しく握った。
リベラはカナリーの魔力を感じ取り、安堵感を感じ取ることが出来た。
いつもは気を張っていたが、その緊張の糸がぷつりと切れた。
リベラの目から、ほんのりと温かいものが流れ出した。
「わ、わた…わたし…ずっと、ずっと…うぅ…ずっと誰かに止めて欲しかった。救って欲しかった。私と…私の中に眠るもう一人を…。」
カナリーはリベラの背中を優しくポンポンと撫でながら寄り添った。
カナリーとマナは改めて事情を聴く。
「実は私は主人格ではないのです。私は…悪魔種です。」
二つの羊のような角を触りながら話している。
「この体の主人格は、龍精種のベアトリクス・ミラクスという者です。龍精種は龍と精霊のハーフです。ベアトリクスさんは激しい感情により暴走するです。私が眠らなかったのは、交代してしまうからです。交代してしまうのはまた後ほど話すとして、この体は数千年前の人物です。どうして知っているかと言うと、記憶も見る事が出来るからです。」
「数千年前、ベアトリクスさんは過去に最強の龍剣士でした。しかし、ある時、邪龍が復活したです。その邪龍の討伐依頼が入り、その闘いで、彼女の故郷は蹂躙されたです。その時に、ベアトリクスさんは邪龍を屠り、精魔界に追い返したです。しかし、彼女は故郷を滅ぼされた怒りが収まらず、魔獣や魔物を滅ぼし回ってたです。そんな彼女の姿はまさに魔女。皆はベアトリクスさんが邪龍に呪われ、魔女になってしまったと恐れて、こう名付けたです。『魔剣ノ魔女』と。古い文献にも必ずある名前だと思うです。全てを滅ぼす邪悪で危険な魔女だと。」
「私は元々、精魔界に居たです。そこで私は両親に捨てられたです。もう、精魔界に居る必要も何もなくなったので、現世界へと来たのです。その時に、ベアトリクスさんを見つけました。彼女の心が泣いていたです。辛くて、苦しそうで、きっと悪魔種としての特性か、もしくはただの同情か、私は彼女に入ろうとしたです。でも、体に入っても私は彼女の意識に押さえつけられ、何もできませんでした。彼女はずっと暴れ回っていたです。彼女は暴れ回ったのち、眠りについたです。その時、私に主導権が移りました。そして、私はあることに気が付いたです。眠ると交代することに。」
「私は悪魔種。眠らずとも活動できる種族…だと思ってたです。しかし数千年の間で他者の手により何度か眠らされてしまい、そのたびに交代してしまいました。私が眠らされ、起きると近場の街がいくつも消滅していました…。それから数千年ほどが経った今、私の考えでは恐らく現世界の体を持つ者として認識されているらしく、悪魔種であるのにも関わらず眠気を多少感じるようになっていました。眠れるはずもないのに。それはきっと、龍精種の体だったからでしょう。それは詳しくは分かりません。そして組織の事は今は置いておいて、現在となるです。リベラ・ミクストと名乗るようになったのは千年ほど前からです。私の元々の名前は…もう思い出せないです。でも、もう良いんです。この名前も気に入ってるので。」
「次は…組織の事を話さないとですね…。」
マナは制止に入る。
「リベラ様、すみません、それは明日でもよろしいでしょうか。マスターが寝ていらっしゃいます。」
カナリーが寝息を立てて、マナに肩を預けて眠っている。
「それはすみませんでした。あの、助けていただいたこと、本当に本当にありがとうです。」
「それは、マスターに言ってくださいまし。マスターが助けようとしたからこそ、今のあなた方がいるのですから。」
リベラは元気よく答えるが、一瞬考えた。
もしかしたら、カナリーが本気を出していれば、今リベラ達は生きていないのだろうか。
少しだけ背筋が冷えたのであった。
「では、また明日。おやすみなさいませ。」
リベラ・ミクストとベアトリクス・ミラクスの関係のお話ですね。
壮絶な人生の2人。
数千年もの間、何度か眠ってしまったリベラだが
それでも、数百年間は確実に眠っていなかった。
リベラは本当に凄いですね。
第35話、読んでいただきありがとうございます。




