コード34「新たな能力」
第34話
前回、カナリーの制御が不能になったところから
頭の中で無機質な音が響く。
それはホワイトノイズかのように、砂嵐のように。
私の意識は途切れ途切れになりながらも、必死にしがみつく。
カナリーの本体は意思とはまた別に動いている。
「……!」
魔剣ノ魔女は魔剣を構え直す。
目の前で対峙していた者の魔力が大噴出し、その者の顔が見えない。
見えてはいるのだが、顔色、表情が特定できない。
その者の魔力が大火のごとく、青白くそれでいて綺麗な星の煌めきを放つかのように。
大地が揺れる。大気が乱れ叫ぶ。
一気に魔力が噴出したことにより空間が歪む。
マナのカナリーの魔力制御が外された。
だが、その残滓が引っかかり、
最大出力とまではいかなかった。
魔剣ノ魔女がこちらを伺っていると
急に廃棄都市の端までぶっ飛ばされた。
魔女が通ったであろう道の建物は全て粉砕しており、
気が付いた時には廃棄都市大壁にめり込んでいた。
カナリーはただ、魔力を噴出しただけであった。
「…魔力吸収解放。」
魔剣ノ魔女がカナリーの魔力を吸収する。
極太サイズの魔力剣が出来上がり、そのまま遠距離からカナリーへと振り下ろす。
今度はカナリーの魔力層にぶち当たり、
魔力剣とカナリーの魔力層がガラスのように砕け散る。
魔剣ノ魔女は追撃をするかのように、直接魔剣をカナリーへと攻撃するが、
カナリーはその攻撃を素手で止めた。
カナリーの意識内でレッドアラームが鳴り響く。
(……ダメ…!)
魔剣ノ魔女へ攻撃をしようとする。
だが、カナリーの意識と勝手に動く体がせめぎあい、
動きが多少遅くなる。遅くなるとは言っても、微々たるものではあるが。
魔剣ノ魔女とカナリーの激しい攻防が始まった。
お互いに縦横無尽に動き回る。
廃棄都市の建物がどんどんと倒壊していく。
魔剣ノ魔女は辛うじて魔剣で防御し続けているが、
またもや廃棄都市の反対側まで吹っ飛ばされる。
先ほどとは違い、魔剣ノ魔女の方が劣勢になっている。
マナは体の中で再起動を実施していた。
だが、ただ起きたところで何もできないであろうことは
マナ本人が自覚していた。
マナは心工知能からアップデートを申請していた。
「「心魂エネルギーを使用し、更新の申請を受諾。アップデート実施中。」」
アップデートには時間がかかるらしかった。
このままではマスターの元に駆けつけることが出来ない。
そんなことを思考していると、急激にアップデートが完了していく。
何者かの介入によりアップデートが完了していく。
「「遠隔用アルゴリズム。プログラム最新版。インストール。アップデートの完了を確認。システムオールグリーン。」」
心工知能Ver. 2.0 更新完了。
魔女が気が付いた時には今度は上空に居た。
吹っ飛ばされた先に先回りされ、カナリーの体は蹴りを繰り出す。
今度も魔剣で防御できているが、魔剣にヒビが入り始め、
はるか上空まで蹴り飛ばされた。
魔女が成層圏近くまで吹っ飛ばされる。
カナリーの体は地面を踏みしめジャンプをすると大きな砂煙が立ち上り、
流星が逆に空へ飛んでいくような軌跡が確認できる。
カナリーは魔女の居る成層圏まで到達し、
魔女の上に立つ。
ここでやっとカナリーの顔が確認できる。
その顔は無機質に、無表情に、まるでそこに感情がないように
ただ、目全体が青く、輝いているように見えていた。
マナが地上で目を覚ます。
魔力量が前よりも大幅に上昇していた。
「スキル発動<スキル・スペルブースト>対象、観測演算魔術<スペル・魔視+>」
「魔術完成。望遠観測魔術<スペル・双遠魔視>を発動します。」
今までは、片目に魔術陣が描かれ、魔術を観測していたが、
それが両目に発動される。今回は遠目に見る用に調整するため、
魔術レンズを2重に片目に重ねて上空を見る。
マナは、はるか上空にカナリーと魔剣ノ魔女が居ることを確認した。
「遠隔スキル。<スキル・リモートパネル>」
マナの目が夕焼け色に輝く。
マナの目が届く範囲であるなら遠隔で制御をかけれるようになったらしく
更に、<スキル・コネクトリンク>の効力も合わせられた。
マナの目にはひし形が戻っていた。
カナリーの制御が元に戻り、暴走が止まる。
(マスター、聞こえますか。私です。マナでございます。)
カナリーの頭にマナの声が響く。
(え!?マナ!?大丈夫だったの!?本当に良かった…。)
(話は後にございます。今は目の前の相手に集中を。魔剣ノ魔女の攻略法が分かりました。魔女は魔力をほぼ無限に吸い上げてきます。であれば、魔術で対抗しましょう。魔術であれば、吸収されません。サポートします。今ここで、魔術を発動させるのです。殻を破りましょう。)
カナリーは今まで魔術を発動したことが無かった。
それは魔力核の形を捉えられてなかったから。
カナリーは集中する。心の魂の奥底まで。
奥まで、奥深くまで。気が付くと、そこは
宇宙空間のような場所で目の前は真っ白であり、やはり認識が出来ない。
(マスター、魔力核はもう既に見えていたのです。もう少し離れて見てみてください。きっと、見えてくるはずです。)
少し離れると、小さな鳥?とすれ違った。
後ろを振り返ると、たくさんの衛星と巨大な星と輪がそこにはあった。
そうか。これが…私の…
心の中で魔力核を連想させる。
しかし、魔術の事をあまりまだ知らない。
どうすれば、と考えていると
いつもの世界の声とはまた違う声がはるか遠く遠く
遥か彼方から声が響いて聞こえてきた。
「「「スキル獲得を確認。対象、カナリー・アステライト。スキルの獲得条件を満たしました。」」」
「「「スキル名、<スキル・コード>。心魂へ刻まれました。」」」
声が聞こえなくなる。
いつもの声と違うのはどうしてだろう…
それに、いつもとは違ってはるか彼方から聞こえてくるようだった…
それはそれとして、<スキル・コード>…
なるほど、これは…使い勝手の良いスキルだ。
「スキル発動!<スキル・コード>!対象!魔術生成!」
魔術帯が生成され、新たな魔術が創造されていく。
その目には穏やかであるが好奇心で溢れている。
「出来た!これが私の…私だけの魔術!」
魔力之魔術<スペル・魔破片>
(マスター、全開ではありませんが一時的に出力を上昇させます。)
カナリーの魔力出力が少しだけ上昇した。
片手を掲げると、魔力が収束されていく。
その光景は地上からは小さな星が誕生したかのように、
ひし形の魔力の破片のようなものが形成されていく。
その破片はやがて巨大な光の剣のように変わる。
魔剣ノ魔女も負けじとカナリーの魔力を吸収する。
「…全力吸収魔力全解放!」
上空では、二つの巨大な剣が出現していた。
カナリーが手をひゅっと振り下ろす。
宙に浮いている光の剣が魔剣ノ魔女へと振り下ろされる。
魔剣ノ魔女の巨大な剣が振り下ろされ、2つの剣が交わった。
激しい火花というより、花火が起こり、雷雲が発生する。
そしてついに魔剣の剣部分が粉々に砕かれる。
魔剣を砕かれた魔女は魔力に当てられ地上へと落下していく。
雲は縦に大きく割れ、海は一瞬だけ裂け、水蒸気爆発を起こしていた。
一瞬ではあるが、空間に隙間が生まれていた。
その隙間は夜空のように満点の星空に満たされていた。
謎の隙間はすぐに閉じられていた。
廃棄都市まで落ちていく魔剣ノ魔女。
カナリーもまたゆっくりと降下してくる。
その光景はまるで神が降臨したかのような輝きを放っていた。
「マナ!待ってたよ…!おかえり!」
「マスターこそ、おかえりなさい。」
カナリーの表情は安心したかのような顔であった。
魔剣ノ魔女は負けを悟ったのか目を閉じ、魔剣を持ったまま穏やかに意識を失った。
<スキル・コード>ついにカナリーにもスキルと魔術を手に入れました。
それに、魔力核も分かりましたね。
カナリーの魔力量が桁外れなので、その形状が近いと分からなかった。
俯瞰して、離れて見る必要があったわけですね。
マナは進化とはまた別の、更新という方法でパワーアップしました。
この世界には、多くのパワーアップ方法があります。
それから、スキルを獲得する際、いつもの祝福の声とはまた違う声。
謎が深まります。
第34話、読んでいただきありがとうございます。




