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『幾星霜のソムニア -私とAIの異世界転生!-』  作者: 星廻 月華
【勇者編:アイゼンヴルグ章】
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コード304「グレイロック・バレーへ帰還」

第304話

前回、天使と龍人が助けに来てから

 エルナとリティシアのエネルギーが試練二体のエネルギーとぶつかり合い、魔列車の窓がまるで怯えたように揺れる。試練二体は魔力を高めガチガチに固め、ぶつけて来る。


「魔力凝固率45%。出力60%まで上昇」


 ライオロイドの戦斧から魔力の蒸気があふれ出て、押し返そうとする。だが、リティシアのエネルギー出力がそれを上回る。


「あはっ! もっと高めてみなよ! 龍流だけでぶっ飛ばせるよ!」


 とりあえず助かった。姉妹組が手を貸してくれている間に、魔列車を動かし、そのまま街まで戻れば良い。何なら恐らくあの二人なら、あの二体を難なく足止め可能だろう。


「よーし! 魔列車を動かすぞ! ナカ、ボク(ルイナ)、もう一人、制御が出来る者は居ないか?」


 他の勇者、天音ユウリが声を上げようとした。が、この時代の魔列車の制御と聞き、少しだけ自信が無かった。ナカは黒星の鍵杖(クラヴィス)の点検が出来、複雑な構造でもすぐ分かる。ルイナの脳内には、ナハトが居る。他にそういった者はここに何人かいる。


「それなら、私がやりましょう。私、魔列車の構造とか結構分かりますし」

 声を上げたのは、コールだった。いつの間にかそこに居た。小さな魔女は今はマイナールが見ている。


(コールなら……装備が結構複雑ぽかったし、行けると思うな。うん、安心)

 カナリーも心の中で頷いていた。彼女なら安心して任せられる。


(よし、勇者達の手を借りずに行けた。あの子達は悪くないんだが……監視の目があるからな。ハッキングでもされたら面倒だ。姉さんの居場所がバレる。恐らく……魔力に反応して試練が来たんだろう。前回、何故来たのか。あの時は、ナカが魔力を解放して来た。今回は、姉さんの魔力に。恐らくだが、勘違いしていると踏んでいる。今回もそう勘違いさせたのだろうな。それならそれで都合が良い)


「さて、魔列車の制御をここ三人、いや、六(・)人(・)でやろうか。準備は良い?」


 ナカとコールは顔を合わせる。まさか、そんな風に見透かされているとは。


「私はいつでも行けます!黒星の鍵杖(クラヴィス)も!」


「私も大丈夫ですよ~。ノーチェもいつでも」


 ルイナもナハトを呼び出し、管制室へ接続した。他の制御と言えば、魔力操作、及び、魔列車の出力。全体の制御。それ等をナハト、黒星の鍵杖(クラヴィス)、ノーチェがそれぞれ分担する。


(うん……動かせそうだ。あの二人に押し付けて悪いが、仕方ない)


 三名の活躍により、魔列車が少しずつ動き始めるが、動きがまだまだだった。黒星の鍵杖(クラヴィス)によると、エンジンはかかりはするが、燃料が足りない状況だった。魔力によって補う事が可能である。三名が魔力を少しずつ注ぎ始めると、ナカが少しだけ苦い顔をし始めた。

(あ、あれ……なんか、魔力、使いにくい……? さっき、魔力が混ざり合って……安定してたけど、使い方が少し違う……?うぅ……、どうしよう……)


 それを見ていた、マイナールがナカの背後に回り、魔力を少し注ぎ込む。すると、ナカは今の魔力の出し方を理解し始める。


「え、マイナールさん!?」

(あ……これ、なんとなく分かって来た……連続的に出すんじゃなくて、溜めてからだ……)


 カナリーは自身の魔力を少しずつナカの中へ注ぐ。普通の人なら、既に満タンになっても良いだろうに、底が見えない。


(あれ? この子……、魔力の質が私と似てるなって思ったら……魔力タンクも凄く多い。これなら……多少もっと注いでも大丈夫だよね!)


 カナリーがかなりの出力でナカへ注ぐ。ナカの白銀色の魔力が輝きを増し始める。


「お、おおぉ!?これなら……!」


 一気に解放する。魔列車の燃料が振り切れる程だった。蒸気が飛び出て、汽笛が鳴る。


「よし! 燃料も満タンだ! もっとスピード出すよ!」

 ルイナがレバーで速度を上げていく。魔列車が音を立てて、加速し始める。夜の岩石地帯をゆっくり走る。


 すると、後方から、激しい戦闘音が響く。


「あははっ! いっくよ~! 龍流! 爆彩炎!」

 リティシアが拳を突き出し、空を殴る。すると、拳の先から、爆炎が連続的に段階的に大きく爆発し、ライオロイドへ襲いかかる。爆炎の色が、橙、黄、青、そして、紫色へ連続爆炎が広がっていく。


 魔列車の車窓からはリティシアの出した大きな炎が見える。


「やるじゃん。こっちも! 天光! 輝天圧!」

 エルナが両手を広げ、天光を解放する。光度が増していく。その光景はまるで、そこだけ昼になったかのような明るさだった。


 レイスロイドの存在感が透けていく。


「こっちの事は気にしないで! ルイナ! また今度、なんかあったら話して! こっちは私らに任せて!」


 エルナとリティシアの二人は背中で語る。目の前の露払いは私達でやるとそう言いたいように。そこからは、とんとん拍子であり、魔列車は無事に街に到着する事となる。


 数十分後。戦斧を片手に持つリティシアは地面にその戦斧を突き刺す。手に持ったエルナの手の中でボロボロと崩れていく黒いローブ。ライオロイドとレイスロイドは二人によって、無事に討伐される事となった。


「さて、リティシア、久しぶり。元気してた?」


「うん! 元気だよ! ま、近くに居ただけだからさ! 少しは満足! でも、なんかちょっとだけ物足りなかったかも? でも、楽しかった! また今度、私らもやろうよ! 暇つぶしにさ!」


 エルナは頬を緩ませる。

「いやいや、同士討ちしてどうするの」


「ルールとかちゃんと決めてさ! 誰が一番強いかやろうよ!」


「まあ、私はあまり興味がないけど……、ま、いつかね。……。夜空が綺麗。星が光ってる」


 エルナとリティシアは空の星を眺めながら、ゆっくりと息を吐いた後、二人とも、自分達の元に居た場所へ帰っていくのだった。


 カナリーとコールの二人はそそくさと宿に戻り、荷物をまとめ始める。

「コレ……じゃなくて、コール、冒険者組合(クラン)から報酬貰ったら、すぐにこの国から出よう。この子をある場所に届けたくって」


 トランクバッグをパチッと閉め、華奢な腕ながらも軽々と持ち上げるコール。


「分かりました。でも、届ける? 大丈夫ですか? バレたりとかって」


 カナリーは考えるポーズを取る。

「まあ……多分、大丈夫。と言うか、このまま旅に連れて行けないだろうから……。危険な旅に連れて行けないよ。でも、きっとあの人なら大丈夫! それに、顔合わせないし。よし、冒険者組合(クラン)に行こう!」


 魔鏡想(レナトゥリィ)で一瞬で、マイナールの姿に変わる。

「それ、ホントに便利な魔術ですよね。変身、回復、無力化。応用力が高すぎますよ~」


「えへへ、オリジナル魔術なんだ! ありがとう!」


 二人が冒険者組合(クラン)へ向かうと、そこには昨日、クエストを共にした者達が多く居た。ウーズ達、ローン、他の冒険者、ソリナメンバー、ウミューシー、ルイナとリーナ。


 一瞬、リーナと目が合ったような気がした。リーナがマイナールの方へ歩みよる。

「あ、あの……昨日は助けてくださって、ありがとうございます」


 マイナールは会釈だけする。

(リーナさん……ごめんね、まだ会えなくて……でも、全部終わったらまた……もう少しだけ待っててね)


 リーナは何かを感じとり、違和感を感じた。何を感じ取ったのかも本人も分かっていない。それは言語化も出来ないような些細な事だった。


「あの……、私達、どこかで……?」


 マイナール、いやカナリーが息を飲む。罪悪感。申し訳なさと、色んなものが頭の中でぐちゃぐちゃになりそうだった。でも、カナリーは思考を切り変える。


「……いいえ。でも、もしかしたら、どこかで会っているかもしれませんね」

 マイナールの時の声だ。カナリーの声では無いが、どこか優しい。それはリーナからすれば、少し重(・)な(・)っ(・)た(・)。


 確信はない。でも、リーナは思う。

(この人が……カナリーさんだったら、良いのにな)


「そう……ですね。どこかですれ違っていたのかも。あの、また会えますか」


「あ……、はい。またきっと会えると願ってます」


 リーナは、口角が少し上がった。会えると思ってますだったなら、ただの予測だ。でも、願ってます。そのニュアンスは、またもう一度会いたい。そんな気持ちが流れ込んでくるようだった。どこか、温かい。


「……えぇ。私もそう願ってます」

 リーナは満面の笑みでそう返した。

グレイロック・バレー編あともう少しだけ続きます。

ここからは、マイナール(カナリー)が小さな魔女っ子となった、エントロティ・スカイを誰かに託すフェースに入りますね。旅を続ける上で、連れて行くわけにもいかずと考えたカナリーは、次に一体どこを目指すのでしょうか。


グレイロック・バレー編にて、カナリーが無事に帰ってきました。ここからは、カナリーもちゃんと本編に参加していきます。その途中で今まで何をしていたのか、少しずつ明かされていくことでしょう。また、新たな仲間、コールというキャラについても、少しずつ掘り下げていきたいと考えています。


ちなみに、リティシアについても、ここでは語る事が少なったですね。一応捕捉しておくと、カナリーから欠けた魂の一部が、龍人となった。と、このように認識して頂ければなと思います。彼女にも情報種が居ますが、あの戦いでは必要なかったようですね。エルナも同様でした。


第304話、読んでいただきありがとうございます。

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