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『XLIX :地下の蔦2』

僕は全神経を聴覚に集中させる。


ミシミシ…ミシミシ…


すると微かではあるが何処からか歪な音が聞こえる。


それも一箇所ではなく、全方向から。


嫌な予感がする、やはり戻った方が…。


そう思って繋いでいる手を軽く引いて声を掛ける。


「実紀さん。やっぱり一度…っ!?」


僕が台詞を言い切る前に真っ暗だった筈の部屋に突然灯りが付く。


あまりの明るさに、暗闇に慣れていた視界が白く眩み、思わず手で視界に影を作る。


「清白っち!大丈夫!?」


「あ、はい!」


声を掛けられたことで混乱していた頭に少し冷静さが戻る。


「何これ…!つた…!?」


何事かと僕は目を覆っていた手を退けると、実紀さんは短剣を構えていた。


「実紀さん…?」


何が起こっているのか一瞬わからなかったが、ぼやけていた視界がクリアになり、目に飛び込んできた光景に僕は目を疑った。


「なんだこれは…」


足元から天井へ張り巡らされた緑の蔦。


その蔦はミシミシと音を立てながらゆっくりと動き、数え切れないほど絡まり合っている。


「清白っち足あげて!!」


すると実紀さんは僕の足元に迫っていた蔦を斬り裂いた。


「何これ!ほんとに気持ち悪いんだけど…!」


四方八方からどんどん押し寄せてきている蔦を実紀さんは必死に斬っていく。


なんでこんな所に大量の蔦が。それになんで蔦が勝手に動いてるんだ。


「どうにかこの場から離れましょう」


不気味すぎるこの状況の僕は息を荒立てる。


「え…、人の……手?」


すると横にいた実紀さんは恐る恐るそう呟いた。


「実紀さん、何かあったんですか…?」


僕は慌てて実紀さんに視線を向ける。


「違う…。あそこに足も…。いやぁぁぁぁ!」


しかし悲鳴を上げた彼女は突然僕に抱きついた。


「何が、何が…あったんですか!?」


すると、顔をうずくめたまま彼女は震えた手で指をさす。


「………!?」


その指先の方向を見て僕は言葉を失った。


そこには身体中から蔦を生やした少年がいたのだ。


10歳くらいだろうか、恐らくもう意識はないだろう。彼の瞳からは光が完全に消えてしまっている。


彼から伸びる無数の蔦はミシミシと動き、僕らの方へと近づいてきている。


「まさか……」


しかし、もっとも驚くべきは……



その少年は1人ではなかったということ。


幼い子供が何人も何人も…。


そう、この部屋の蔦は人間かれらから伸びているものだったのだ…。


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