21 要するに信じるしかない
「とても信じられないんだ……考古学っていうのは、事実を客観的に、あるいは科学的に分析しなくちゃいけないんだ。霊とか神様とか宇宙人とか、証明できないことを理由にしたら、全部がそれで片付いてしまって、学問じゃなくなる。だから……信じろっていわれても無理だ……。でも、おれは声を聞いたし、迷いの森にいた沼田を見ている……。あれはおれが体験した事実だ。……まぎれもなく……本当のことなんだと思う……」
まどろっこしい言い方。要するに、信じるしかないって言っているんだよね。津島君らしい答えというか……。とにかく私は信じてくれたことがうれしかった。津島君は、うかがうようにあとを続けた。
「佐々木……って、霊能者なの?」
何を言い出すかと思えば。
「何言ってんの、そんなはずないでしょ。オカルト大嫌いなのよ、知ってるじゃない。お地蔵様がしゃべるなんて、私自身、一番びっくりしてるんだから」
「じゃあ……なん……」
「……勝軍地蔵様にちゃんと会って、直接聞いたほうが、津島君の納得がいくと思うよ」
私はやっときた最後のチャンスをのがすまいと思った。
「昨日の常夜灯に行こ!」
「でも……時間がないんだろ……あ、それに……鍵……」
「大丈夫!」
私は昨日のように、先頭にたって自転車をこいだ。鞘堂の鍵は、案の定、開いていた。扉を開けて、中へ入る。津島君がこわごわ、火袋に目をやると、そこが明るく灯って勝軍地蔵像が姿を現した。成功! 津島君は目をこらし、目の前で起きている事象に見入った。
「ほ、ほんとに……」
驚きのためいきをもらす津島君に、お地蔵様がうなずいた。
「やっと会えたの、津島都望季殿」
お地蔵様がやさしく言葉をかけたが、津島君のほうは受け入れるのにしばらく時間がかかった。
津島君は何も話せず、ただただ、まばたきも忘れてお地蔵様をじっと見ていた。自分の中で何かがすとんと落ちるまで。ようやく、小さく深呼吸をした。
「失礼しました…」
津島君が深々と礼をすると、お地蔵様はにっこり笑った。そして、今までのいきさつを津島君に話し始めた。




