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 ギルベルト様は、指を縦になぞりながら「日記だと思うのだが」と言葉を漏らした。

 私も同じように縦に目を流しながら文字を読むと、確かに少し不思議な文書にはなるが、日記に読まなくもない。


「確かに、()に読むと日記に見えます」

「どういうことだ?」


 私は縦に追っていた指を止めると、今度はその指を左上に持っていく。ゆっくりと指を横に進めると、そこには禁忌の呪いの文字が浮かび上がった。


「呪文は、横に目を通せば読むことができます」


 そう答えるも、ギルベルト様は首を横に傾げた。

 どうやら彼にはその言葉は呪文に見えないらしい。

 私は彼に『ここ』で習ったではありませんかと教えるために教科書を思い浮かべたが、確かに習った記憶は全くなかった。

 もしかして、これも過去の記憶によるものではなかろうか。


(レシーさん、どうかな)

『ええ、その通りです。これは私の国の古語、そして禁忌の呪文ゆえに王族のみに伝わる言葉。しかし、こちらの言葉に置き換えられて書かれているなんて普通ありえません』


 つまり、憶測ではあるがレシーは昔の隣国の姫で、この本を書いたのは、その隣国の姫と入れ替わった『エターナル姫』ではないかと考える事ができる。

 何かしらの恨み辛みが重なり、この呪いの本は完成した。

 そして本当に稼働したのだとしたら、ギルベルト様が苦しめられている呪いについては原因が分かるかもしれない。


「とりあえず本を全部読……」


 解決への兆しが見えたと目を輝かせた時、静かに扉が開き学園長が部屋へと足を踏み入れ、そして陛下からの処遇についてを告げられた。


「平民の娘の処遇は、『王宮での仕事を任され、学園での通学を終了するものとする』に決定した」

「えええ!?」


 学園長はこの内容に対して不満なのか、私にそれを告げた時は無表情を貫いた。偽の運命のパートナーである2人は、『学園での通学を終了』に対して嬉しいのかお互いの手を握りしめて見つあいながらジャンプをしている。


 平民が王宮での仕事を任される方が余程恐れ多い事を把握していないのか、それともただのばかなのか……。


『多分頭が悪い方でしょう』


 レシーのその言葉に、私はただ頷くことにとどめた。

 しかもその仕事内容が明かされていないところが、陛下の嬉しそうな顔が浮かぶようである。あの方絶対楽しんでいる。


「仕事内容については直接つげられるそうだから、すぐに向かって良い」


 そこまで話すと、学園長は出ていこうとした。

 私が慌てて引き止める。


「では、今をもって私は学園の生徒ではなくなるという事で良いのでしょうか」

「それ以外に何かあるかな」

「……いえ、何も」


 こちらを振り返りもせずに言葉を告げられた。

 その態度はまるで、私に対して怒りを表しているようだった。


お読みいただきありがとうございます!

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