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『聖女様ではないですよ』

「!?」


 完全に私の思考に対して返事があった。

 驚いて固まる私に、平民の2人はまだ悪口を語っているようだ。

 悪口はどうでも良いが、学園長はこの光景を黙って見ているだけな様子にもなんだか違和感がある。


(あ、あの、この声って聞こえてますか?)

『あら?私の声が聞こえるようになったのですね』


 やはり……こうやって考えていることが全て聞こえているらしい。


『らしいではなく聞こえてますよ』

(……少し黙っててくださいませんか)

『分かりました、良いと言うまで黙っております』


 話し方も丁寧だし、物腰も柔らかそうだ。

 割と緊急事態なのにこんな現象が現れて結構混乱はしているが、話をする事で冷静になれるだろう。

 聖女様ではないみたいだが、一体……。


『レティシアさん、私のことはレシーとお呼びください』

(レシー?レシーというお名前なんですか?)

『家族にそう呼ばれておりました。こちらに来てからは、……のみが私をそう呼びました』

(え?誰が……)


「という事で、自分の事を無能と認めたのだから、早く出て行ってよ。嘘つきが」

「そうよ、嘘つき」

「うそつき……?」


 途中から全く話の内容を聞いていなかった私が、パートナーの2人の言う言葉を繰り返し言うと、2人は再びよく分かるよう話してくれた。


「どうせギルベルト様のパートナーというのも嘘なんだろう!」

「そうよ、ギルベルト様があんたを好きだからってつけ込んだに違いないわ!」

「そんなにこの学園に入りたかったら僕たちのように貴族の目にかけてもらえるようにすれば良かったんだ」

「まぁ、貴方には無理だったでしょうけどね!」

『何故ここまで自信があるのでしょう……』



 頭の中でレシーが呆れたように呟いている。

 でも私も同意見だった、寧ろここまでの自信をつけさせた相手がいるとしか考えられない。

 彼らが話す、目にかけてもらった貴族とやらに。

 その時、学園長がパンと手を打って立ち上がった、そして私に向かって歩いてくる。



「パートナーが嘘なのかについてはさておき、そろそろ良いかな?平民の娘よ、荷物などないだろう。すぐに出て行く馬車に乗るんだ」

「荷物は多少ありますが」

「それはギルベルトに与えられたものだろう?」

「別に良いですけど、それでギルベルト様に探知されて困るのは貴方では?」

「心配してくれなくても、全部魔法で封じる」

「あ、そうですか」


 どうでも良いが、私への対処法が全てこの学園の外に追い出されるという適当な扱いなのは何故なのか。

 また、無視はされていたが特にきつい虐めも無かったのに、何故追い出されなければいけないのか。学園長が出てくるほど私は悪い事をした覚えはないというのに。、


 魔法で封じられたら、ギルベルト様が私に置いた指標も消えてしまうんだらうか。なんだか、呆気ないものである。


 こんなに勉強したり悩んだりしていたのに結局前の生活に戻るのであれば、ギルベルト様に出会う前まで時間ごと巻き戻してほしい。


 そうすれば今のように、心の中で()()に助けを求めることもしなかったのに。


お読みいただきありがとうございます!

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