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「ああ、来たね、平民の娘」
「お久しぶりです、学園長」
「久しぶり、早速だけどこの学園から出て行ってもらおうと思うよ」
学園長は以前と変わらない笑みで私を見つめながらそんな事を言ってきた。やはり仰々しいと思う白い建物の中は私にはとても似合わないとは感じる。そして、平民の身としてはここの学園に入ることが出来た事自体異例だと理解している。
しかし、学園長の隣に立っている噂の『パートナー』達が私の中で納得させてくれない。
「信じられないですよね、魔獣を倒した場所に居なかったくせにまだ、ギルベルト様のパートナーを名乗るなど」
「全くだわ、私たちの力で倒したというのに」
パートナー達が発言する内容を理解する事は出来なかった。
そもそも、『私たちの力』とは何を指しているのか聞きたいところである。
それに私だってギルベルト様に魔法をかけたのに、それを無かったことにされた事に対して反論をしたいと思った。
「ほら、こうやって2人も言っているじゃないか。それに『運命のパートナー』は結ばれる運命になければ共にいるべきではないよ」
「……はぁ」
そういえば、出会った初日で結婚をしないのかと聞いてきたのは学園長だったなと思い出す。
現在ギルベルト様と婚約者である場合、は免れるのではないかと一応口を開く。
「ギルベルト様とは先日婚約を結びましたが」
「だが、平民の君は自分に相応しいとは思わないだろう?当たり前ではあるけど。確かに魔力は増幅できたかもしれないが、よく考えればあの程度は増やすよう見せかけられるしね」
なるほど、私の言葉はまるで聞いてはくれないらしい。
確かに自分の中でギルベルト様との婚約関係は相応しいとは思っていない。
それはそうだろう。今まで平民として育ってきたのだから突然貴族と婚約を結ぶなんて気遅れるものだ。
しかしそれはギルベルト様だからではなく、相手が貴族であれば誰にでもしていた事だった。
この学園長は、自分の理想となる『運命のパートナー』を残したいと思っているのだと予想がついたが、その思考を変える事は今の私には不可能だ。
とりあえず、魔獣を倒した時に本当に2人が活躍したのかを確認したいと思った。
「では質問しても良いでしょうか」
「なんだろうか」
「魔獣を『私たちの力で』倒したとの事ですが、一体何をされたんですか」
自分たちに話を振られないとでも思っていたのか、2人は驚いた顔をして私を見てきた。
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