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自己満足、他が為成らず。一年後…  作者: 赤茶猿マン
終焉に向かう未来編
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悪い予感。

若かりし頃の善からの情報、主人公の母親からの情報、それらを照らし合わせた時、一つの可能性が…。



 夕食の後改めて善さんを皆んなに紹介して、善さんからこれまでの事を皆んなに話してもらった。ここしばらく平和だった、皆んなの心が大きく同様の色を見せたのが、人一倍鈍感なボクにも容易に見てとれた。


最初は下を向いて黙っていた母も、自分達が集めた情報を開示してくれた。内容は善さんが話してくれた事とほぼ同じ内容ではあったが、『最善、最悪』の名前に迄は至っていなかった様子だ。


その情報開示に続いて母が今後の事について話し始めた。


「私達が集めた情報と、さっきの善さんの話しに基づいて今後の戦略等は川上さんが段取りしてくれてるんだけど、ちょっと気付いた事があるの…。」


 そう話すと母は下を向いてしまった。その様子で何か言いにくい事を伝えようとしている事がボクにも分かる。無理に話させるのもどうかと言う気持ちが勝り、ボクから母にかけられる言葉が見つからなかった。自宅リビングに集まった皆んなの視線が母に集まり静寂が続く。


「アタシが考えた最良で最悪な結果と、お気に入りさんの母上が伝えようとしている事が同じかどうかは分かりませんが、宜しければアタシが説明して差し上げましょう。」


 緊張感を含んだ静寂を打ち破ったのは善さんのその言葉だった。全員の視線が母から善さんへと移された。先程まで下を向いていた母でさえ同じ様に善さんを見ていた。そして善さんと目が合うと頷いてその言葉を受け入れる意思を示して見せた。


「では…。ヤツらを倒すには前回皆さんが経験しておられる様なので申し上げる事はありませんが、アタシが…、恐らくは母上も気付いた事。それはヤツらを倒すとこの現代が変わってしまう恐れがあるという事。」


 現代が変わる。善さんのその言葉にボクは理解するまでに至らずにいた。周りの皆んなもそれぞれ顔を見合わせたりしていたので、恐らくボクと同じだと思われる。


「善さん、その現代が変わってしまうと言うのはどういう…。」


 本心から出た言葉なのだが、少しおバカな質問に思えて尻すぼみの言葉になってしまった。おうむ返しの質問に我ながら恥ずかしいと感じたからだ。


「現代が変わる。それは…、過去から来たヤツらを倒すと、あなた方にとっての過去が無くなる可能性があると言う事です。ヤツらがアタシの時代の者であれば、さほど問題にはならないのかもしれません。しかし、それ以前から来た者であれば、このチカラは存在しない事になります。その可能性を母上は危惧しておられるのですよね?」


「ええ…。あくまで可能性の話ではあるんだけど…。完全に無いとは言い切れない。そして過去が失われるという事は、今のこの私達の生活は無かった事になるという事なの…。」


 善さんと母の説明のお陰で何となくだが言いたい事は理解出来た。今の自分達の生活が存在しない事になる。つまり最初から無かった事になるという事だと理解した。確認の為に重要な事を聞いてみる。


「じゃぁ…さ。その…、これまでに亡くなった人なんかも、死んでない事になったり…とかかな?」


「そうね。それどころか例をあげると、このチカラのせいでお父さんは奈々子の元へ行ったのだから、その事も無しになる。つまり、奈緒子と奈美恵も産まれない事になる。そして稜…洋子。あなた達二人の関係も無かった事に…。」


 その母の言葉が重くボクにのしかかってきた。洋子さんとこの先の未来を築く事が出来なくなる可能性がある。隣で聞いていた洋子さんも、胸の前で両手を組み、下を向いて何かを堪えている様に見える。


「ですが、あくまで可能性の問題ですよ。お気に入りさん、そうと決まった訳ではないのです。今は違う事を祈りましょう。」


善さんがそう言ってなだめてくれたのだが、やはり不安が消える事は無かった。その後川上さんが戦略会議と称して話しを進めていたが、ボクと洋子さんが意見する事は最後まで無かった。そして会議も終わり、集まってくれた皆んなもそれぞれの家へと帰っていった。善さんは母の家に招待されていたので、今夜はそこに泊まるみたいだ。


 シンと静まり返ったリビングで、ボク達はまだ立てずにそのままの状態で黙ったまま俯いていた。洋子さんがボクの手に自分の手を重ねてくるが、その手は小さく震えていた。ボクは思わず洋子さんを抱きしめてしまう。洋子さんと離れてしまう事なんて考えられない。


「稜くん…、私ね、決めたよ。たとえ稜くんとの未来が無くなるとしても、ヤツらを倒すよ。この世界で暮らす人々が好きだもん。皆んなが好きだもん。大勢の人を犠牲にして、その上に自分達の幸せなんて築けないよ…。」


 洋子さんが涙まじりの声でそう伝えてくるが、ボクはそれでも洋子さんと離れたく無い気持ちで言葉が出てこなかった。今抱きしめているこの感じも、洋子さんを想うこの気持ちも無くなってしまう。そんな事を簡単に受け入れられる訳がない。


「ね、稜くん、過去が失われるなら出会わないって事じゃない?…、それって、今のこの感情も生まれないって事だよね…。今それを考えちゃうと辛いけど、新たな過去の私はその事を知らない訳だから、きっと過去の新しい自分は大丈夫だよ…。」


「洋子さんは…、それで平気なの?ボクは嫌だよ…。なぜそんな事が言えるの…、洋子さんはそれでも構わないって言うんだね…。愛してる気持ちもボクの事も忘れても構わないんだ…。」


 そう言い放ったボクを、洋子さんが突き放して、自室がある二階へと駆け上がって行ってしまった。去り際に洋子さんの涙が見えた。ボクは自分の甘えた気持ちと愚かさを悔やんだ。


洋子さんだって決して平気な気持ちで言った言葉では無い。そう分かっていたはずなのに、ボクは自分のワガママな言葉を吐きだ出して、洋子さんに投げつけてしまった。


 そう、あくまでも可能性なのだが、とても嫌な感覚が消えない。悪く考えてしまう事が、現実になるのはよくある話しだ。ボクはその経験がいくつもあるから、尚のことそう考えてしまう傾向にある。


本当は洋子さんの後を追い、さっきの言葉の謝罪をして抱きしめたい。しかし何かが邪魔してボクにそれをさせてくれない。こんなに我が強かったとは自分でも驚きだ。頭で理解していても、それを心が受け入れようとしないのだ。


 そんな事を色々と考えながら、ボクはリビングのソファーに横になった。そして、そのまま一夜を明かす事になった。


 そして次の日の朝。寺ッチを連れてゆうこさんが戻ってきたのだが、ボク達の悪い予感は的中してしまう事になる。ゆうこさんが持ち帰った情報で、明らかになったヤツらの本当の目的。


 自分達が未来で倒される事を知った『最善、最悪』は、出来るだけ多くの人材を従わせて、自分達が倒されるであろう時代へと送り込む計画を立てているらしい。そしてヤツらは、この世界に『能力』を植え付ける前の時代から来たという事。


ゆうこさんが送り込んでいた偵察隊の一人が、ヤツらのアジトに潜入して得た情報によると、ヤツらはこの世界に『能力』を植え付ける為に視察に来たらしく、その時にこの世界で自分達が滅ぼされる運命にある事を知ったらしい。


この『最善、最悪』の話しを聞いていた相手も興味深い人物で、ゆうこさんの口から出た名前は『藤永』だった。ヤツらに協力すれば更なる『能力』を授けると約束していたらしい。今、ヤツらのアジトに集まっている連中は藤永が集めた人材ばかりだと言う。


そして更に悪い知らせを持って、シャクシさんがボクの元へやってきた。その内容は、シャクシさんが管理していた、善さんより預かっている空間から、監獄に入れておいた筈の変異体達が忽然と姿を消したとの事。これは間違いなくヤツらの仕業に違いない。


 午後から再び会議を開く事になった。ボクが知らされた情報を皆んなも知る事になった。そして誰もが口をつぐみ黙ったまま俯いてしまっていた。この会議に洋子さんの姿は無かった。


皆んな黙っているが、ボク達がやるべき事は既に決定してしまった。ヤツらを倒す以外の選択肢は無いのだ。

悪い予感は良く当たるもの…。ヤツらを倒さなければ世界丸ごとが危機に晒され、倒しても現在のこの世界は泡の如く消えてしまう…。それぞれの胸に抱かれた複雑な感情。このままでヤツらに戦いを挑み、勝利する事が出来るのであろうか!?

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