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自己満足、他が為成らず。一年後…  作者: 赤茶猿マン
終焉に向かう未来編
13/29

予想外。

何やらおかしな始まり方だが、夢でも見ているかのような主人公。何が起きている?



 ボクは生まれて初めて空を飛ぶ経験をしている。まだ羽の動かし方がぎこちないけど、気流に乗って飛ぶ事は、思っていたより難しくは無かった。そうなんだ、初めて『憑依』に成功したのだ。


朝起きてキッチンでコーヒーを飲んでいると、窓の外に一羽の鳥が舞い降りて来たんだ。詳しくはないので、この鳥が何という名前なのかまでは分からないが、その鳥はキッチンのボクに気付いたのか、首を小さく小刻みに傾げながらこちらを見ていた。


その様子にボクも見入ってしまい、無意識に鳥に集中していたんだと思う。そして側に、近くに行きたいと思った途端に、不思議な感覚に身体がとらわれてしまい、気付いたら外にいた。いや、正確には外の鳥に入り込んでしまっていたのだ。


その時の事を思い出してみて初めて気がついたのだが、洋子さんの言っていたあの謎の説明が何となく理解出来た。頭の中をクリアに、もっと柔軟に考えて取り組む事が大切だと知る事が出来た。


そして念願の大空を羽ばたいている。という訳だ。決してゆうこさんの様な下心で成功したわけでは無い。まぁ、ある意味ゆうこさんも凄いのだけれど。


《あぁ、なんて気持ちがいいんだろう。ずっとこのまま飛んでいたいなぁ…。あ、というか…、離脱する時ってどうやるんだろ?ゆうこさんみたいに叩き潰されるとかか?いやいや、それでは鳥が可哀想だ。うーん…。》


訓練中だった訳でもないので、庭には誰もいない。いやノイジーが小屋から首だけ出して寝ているのが見える。時折ボクの方を見上げているが、無関心の様だ。にしても、洋子さんの時とは違い、随分長く飛んでいる気がするのだが。


 〜 昼 自宅庭 〜


 これは困った事になった。未だに『憑依』が解けないのだが、ボクにはなす術が無い。先程から訓練が始まり、分かってもらいたい一心で二人の周りを飛んでいるのだが、ボクだとは気付いてもらえないでいた。まぁ、無理もない。


「ね、稜くんどこに行ったのかな?起きた時はもう部屋に居なかったんだけど…、ゆうこ見てない?」


「ん?知らないよ。洋子とたまには二人でこうやって訓練出来るのもいいもんよね。お邪魔ムシがいないから色々話せるしね〜。」


《何て会話をしてるんだ!ボクが聞いていないと思って好き勝手な事言って…。洋子さんはそんな事思ってないから大丈夫だよね。洋子さんをそそのかさないでくれ悪魔め!》


「ん〜、それもそうだね。久々に二人で訓練だね。稜くんは私の指示通りに出来ないからスネたのかもね。今日はゆうこと二人で頑張るか!」


「おー!そうだそうだ洋子〜!たまにはアンタもあのウジウジしたのと離れないと息が詰まるよ?」


とっても酷い二人の会話で、凄くガラスなハートのボクは傷ついたのだが、今はそれを伝える事も出来ない。全く、元に戻ったらお仕置きをしないといけない様だ。実際は出来ないけど。


とにかくどうにかして戻る方法を見つけないと。二人の訓練の中でヒントが掴めればいいのだけれど、今日は訓練というより、身体を動かしながら、女子トークしてるって感じで、中々『憑依』をする気配が無い。


 それから無駄に三時間が過ぎようとしていた時に、ゆうこさんがお手洗いにと言って家の中に入って行くのが見えた。洋子さんが辺りをキョロキョロしながら、胸に手を当てて目を閉じて何かに集中し出すのが分かる。


《…くん、稜くん…、どこにいるの?返事してよ…。》


と頭の中の洋子さんの声が流れ込んできた。ボクはなんてアホなんだろう。そうだ、この手があったじゃないか。洋子さんが今してくれてる様に、ボクも洋子さんに念を送り会話すれば良かったんだと気付く。


《洋子さん!ありがとう、実は困っていたんだよ。…。》


ボクは洋子さんに念を送り、これまでの事を説明して、今もまだ鳥である事を伝え、そのまま洋子さんの前に舞い降りた。


「あ、もしかしてコレ…、稜くんだったの?あ…、さっきの会話聞かれてた!?」


《うんうん、しっかり聞かせてもらったよ。でも今はそんな事より元に戻る方法が知りたいんだけど?》


「あ〜、そうよね。ごめんね。えっと、フッ!てしてグッ!としてドーン!みたな感じ。」


そうでした、洋子さんに聞くとこんな説明になるのをまた忘れてました。正直なところ、また理解に苦しんでいます。


《あ、アハハ。洋子さんごめん、ちょっと分からないや…。》


「え?あ…、じゃぁ難しい教え方になるけど…、外に出るイメージをしながら、オデコの辺りに力を集中させて、飛び出す感じで力を外に解放するの。これじゃ分からないでしょ?」


《いや〜、それの方が絶対分かり易いと思うんだけど…。》


洋子さんが何故これを難しいと考えるのかが謎だが、今は早く元に戻りたい。早速ボクは言われた事を思い出しながら練習してみる。するとどうだろう、練習のつもりでやったのだが、なんと一度で成功したではないか。


「あ、ありがとう洋子さん。アハハ、やっぱり難しい方がボクは良いと思うよ…。」


「そ、そうなんだ…。稜くんって…、変わってるんだね、えへへ。」


いやいや、変わってるのはむしろキミだと思うのだが。それについていけるゆうこさんは同類だと思う。そこへ、噂をすればなんとやらで、お手洗いから戻ったゆうこさん登場だ。


「あ、あ〜稜くん、訓練に来たんだね。良かったよ、心配していたんだよ二人で。」


《ほほー、そうですかい。よくもまぁ涼しげな顔でそんな嘘をつけるものだ。》


「あ〜…、ゆうこ…、そろそろちゃんと訓練しようか?」


先程までの会話を聞いていたと知っている洋子さんがフォローを入れてきた。それを見て何かを察したのか、ゆうこさんの顔が一瞬強張った様に見えたが、言われた通りに訓練を再開しだした。この辺りはさすが長年の付き合いなんだなと感心させられる。


まぁ、言った、言わないの小さな事を色々文句つける気もないので、ボクもそのまま訓練に参加した。


 訓練の中で再確認出来た事なのだが、やはり洋子さんとゆうこさんは、長い時間『憑依』するのは無理の様だった。ボクはというと、あれから何回も『憑依』してるのだが、一向に疲れないし、使用中の制限も全く感じないのだ。一体何が違うのだろうか。


そんな事を考えながら二人の様子を見ている時、洋子さんの胸元から物凄い大きな音が、というより警告音みたいな感じのサイレンが鳴り響いた。慌てて胸元から何かを取り出す洋子さん。


その正体はネックレスだった。確かあちらの世界で、記念にとお婆さんに貰ったとか言っていたネックレスだ。洋子さんがネックレスに触れるとサイレンは止まったのだが、間髪置かずに次は一筋の青い光線がネックレスから発せられた。


「洋子さん、それって…、方角を表してるんじゃないかな?何かお婆さんから聞いてないの?」


ネックレスの光は町の入り口の方向を指してた。そしてボクの質問に洋子さんは首を横に振って答えてくれる。分からない事をあれこれ考えても仕方がない、取り敢えず確認しに行こうと二人に提案した。


本当はダメなんだが、何だか嫌な予感がするので、ボク達はそのまま『空間転移』を街の中で使って移動した。


 入り口を指していたから、素直に入り口付近まで飛んだのだが、どうやら行き過ぎてしまった様だ。青い光は自宅の方角を指している。


「行ったり来たりで時間をかけるのが惜しいから、ここから歩きで向かおう。」


ボクの言葉に二人は黙って従ってくれ、後をついて来ている。道なりに進める訳が無いとは思っていたが、どうやらまだ未開拓の林の中を歩く事になりそうだ。


 しばらく生い茂った草を掻き分け、それ程太く無い樹々を避けながら進むと、洋子さんが叫びながら前方へと駆け出した。


「お婆ちゃん!どうしたの?何でこっちの世界にいるの!?」


駆け寄る洋子さんの言葉で、目の前に横たわるこの人物が、『異世界』で洋子さんがお世話になったお婆さんだと分かった。


「…、う……、う…。よ、よう…こ…ちゃん?」


「お婆ちゃん!!お婆ちゃん!!しっかりして!」


「洋子さん、取り敢えずウチまで運んで行こう。その前に治癒をしてあげて。」


よほど驚いたのだろう。治癒をかける事も思いつかない程取り乱す洋子さんにそう伝えると、慌てた様に取りかかかる洋子さん。見た目の傷は塞がった様子だが、衰弱が激しかった様で、お婆さんは目を閉じたままだ。


まだ息はある様なので、命に関わる様な事は無いと思われる。ボクは洋子さんにお婆さんを抱えてもらい、そのまま『空間転移』で自宅寝室へと飛んだ。事情はお婆さんが起きてから聞く事にしようと、そのままベッドに寝かせ、今夜は洋子さんが側につく事になった。

ちょっとお間抜けな主人公と教官洋子、そしてその親友ゆうこ。主人公は二人を変わっていると言うが…、本人も十分に変わっている。気付いていないのは本人だけだ。アホな人達の事はさておき、異世界からあの洋子の恩人であるお婆さんがボロボロの姿で発見された!何があったのかは容易に想像出来るだろうが、次回まで誰にも教えないで頂きたい。頼んだよ?

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