第83話 えっ? 瀕死の時はどうする? そのときは……潔く諦めよっか♪
【本文】
「値段が2~3倍……ね。それってさ、使うつーか併用する意味ってあるのか? だってこっちの『かいふく草』が5シルバーなんだろ? それならこれを3つ買えば、たったの15シルバーだろ? その『ぞうふく草』とやらは『ちんせい草』の2、3倍っつうんだから……300シルバーとかするんだろ? それだとすっごく損するんじゃねぇのか?」
これくらいの簡単な計算なら、ヒロイン達全員からバカ代表の栄冠授与を欲しいままにするオレでさえも、すぐに理解できることだった。「だったら何故こんなものがそんなに値が高いんだ?」と聞こうとすると、その前にジャスミンが説明してくれた。
「もちろん目先の損得だけで見れば、値段が全然違うし絶対にお兄さんの言うとおりだね」
「だよな? だったら何で『ぞうふく草』とやらが必要になるんだ?」
「でも『ぞうふく草』は旅には欠かせない、あると便利なアイテムなんだよ!」
「うん???」
ジャスミンの説明にイマイチ要領を得ないオレだった。
「ならさ、『かいふく草』を大量に持ってその都度使ったらどうなんだ? そっちの方が効率良いんだろ?」
「お兄さんの言いたいことも分からないでもないけどさ、……でもね、お兄さんは街の外に旅に出るんだよね? そして……必ず魔物と戦うんでしょ? なら戦うには剣や槍なんかの『武器』が必要だし、体を守る鎧や盾などの『防具』も必要になってくる。ダメージを受けて回復するには『かいふく草』が必要だし、もし毒になったら『どくけし草』が必要になっちゃう。それにすぐ街に帰って来られれば良いけど、森で道に迷ったりする事も考えて何日分かの『水』や『食料』だって必要になってくるんだよ。それだけでも大荷物なのに更に『かいふく草』を大量に携帯できると思う?」
「とてもじゃないけど…………無理だよな」
『当たり前でしょ!!』っとジャスミンに怒られてしまう。
「あと『かいふく草』ばかり持っててっても、回復できるわけじゃないしね」
「はっ? どうゆことなんだ? 『かいふく草』で回復できない???」
「うん。これは例えばだけど、敵からダメージを受けるよね? それが『かいふく草』を使って回復が追いつける傷程度なら必要ないけれども、自分より強い強敵からダメージを受けたり複数の敵に囲まれ1度に攻撃を受けちゃうと『かいふく草』を使って回復させる効能だけじゃ、受けたダメージ分まで追いつけない場合もあるんだよ……そしたらその後はお兄さんでも理解できるでしょ?」
「あ、ああ、なら後は……死ぬだけだよな?」
そうゆうことか! 『かいふく草』は使っても効果が現れるまで時間がかかるし、一定以上のダメージを受けるとカバーできなくなる『許容範囲』ってもんがあるわけか。それをカバーするために『ぞうふく草』を併用して効能を高めて回復すんだな。なら他の薬草でもたぶん同じ理由なんだろうなぁ~。そこでようやく合点がいった。
「(まぁ何だかんだ言っても所詮は『草』だしな。軽い傷なら治せると思ったけど、そもそも瀕死の重傷を治せるとも思えなかったわ。……うん??? でも……待てよ)」
そこでオレは更なる疑問が生じ、ジャスミンへと再度質問することにした。
「ジャスミンに聞きたいんだけど、『かいふく草』と『ぞうふく草』を併せて使って、瀕死の重傷とかでも治るもんなのか? オレにはとても賄えなえるようには思えないんだけどさ……その場合はどうすんだよ?」
(だってよ、傷とかなら傷口に薬草でも埋め込めば血とか止まるだろけどさ、なんせ相手魔物だろ? 確実に殺しにきてんだから、手とか足とかポロリさせられても全然不思議じゃねぇよな? それに……)
オレはそう思うと、静音さんと一緒にいるもきゅ子に目を向けた。……そうこの世界には魔物の最上ランク『ドラゴン』が存在しているのだ。
「(もきゅ子のように子供ならまだしも、冥王ジズさんのように大きいドラゴンが相手では、一撃で簡単に瀕死状態……いや、そのまま丸呑みされても全然おかしくないしな)」
「あー……お兄さん。そのときは……潔く諦めよっか♪」
「諦めんのかよ!? 死ぬのかよ!?」
「お兄さん、今日もツッコミが冴えてるねぇ~♪」っと軽い調子でけらけらと笑っていた。……どうやらからかわれたみたいだ。
「で、そんときはどうすんだよ……」
オレは年下のジャスミンにからかわれたと知って、少し不機嫌になっていた。
「もぉ~お兄さん、そんな怒らなくてもいいじゃないかぁ~♪」っとオレの肩をバンバン叩いてきた。背が小さいクセにやたらと力があるようだ……少し痛い。
「……で、『かいふく草』で追いつけないくらい瀕死になった時の話だったっけ?」
オレは「そうだよ」とぶっきら棒に言うと、ジャスミンは少し真顔になってこう答えた。
「ま、さっきのは少しふざけすぎたけど……ホントの事なんだよね」
「えっ? ほ、ホントってまさか……」
オレは「どうせまた冗談なんだろ?」っと思ってたのだが、ジャスミンの顔は先程よりも真剣な顔をしていた。そこには先程のような無邪気な子供の笑顔はなく、1人の人間としての表情をしたジャスミンがいた。
「うん……そこまでの大きな怪我しちゃうとさ……ホントもう治らないんだよ。今この世界の医療技術では……いや、そもそももうこの世界にはまともな医者すら残ってないんだよお兄さん」
ジャスミンはとても悲しそうな顔で、オレに言ってくれた。
「マジかよ……」
正直この世界がそこまで追い込まれているとは夢にも思わなかった。そこでふと、静音さんが始めてこの街を案内してくれた時の言葉を思い出した。
『(はい。そうです。実は先の戦争で魔王軍の攻撃にあいまして……言いづらいのですが、他の町や村は軒並みその被害で全滅を……)』
「(そういえば静音さんはしっかりと説明してくれてたじゃねぇか! 何でそんな大事なこと忘れてんだよオレわっ!!)」
オレは魔王軍に対しても、また肝心な事を忘れてた自分にも、なんとも言えぬ悔しさから右手を握り締めてバンっと左手に叩き込み、怒りを露にするように憤ってしまった。
第84話へとつづく




