第84話 魔法を使う『魔法使い』になるには、ダブルステータスが必要条件!
「お兄さん……ありがとうね♪」
「ん? ありがとうって……何でジャスミンが礼を言うんだ?」
オレはいきなり礼を言われ、何に対してなのかよく分からなかった。
「だってさ、今のお兄さんはボク達のために、怒ってくれたんでしょ? だからだよ♪」
「うん? あ、ああ……」
魔王軍にも怒りはあったが、自分に対しても同等にあったのでジャスミンからそのお礼を言われ、少し気まずかった。
「あっ、でもねお兄さん……その代わりここでは魔法技術が発達してて、治癒魔法で重症患者の治療や人を生き返らせることができるようになったんだよ!!」
「魔法で人を治せるのか!?」
「うん! まぁと言っても治癒魔法を使える人も、今じゃほんの一握りの能力のある人達が残ってるだけなんだけどね。だから『かいふく草』みたいなアイテムがより重宝されるようになってるんだよ」
苦笑しながらジャスミンはそう答えてくれた。
「何か『魔法』ってぇ~っと、やっぱりこの世界には『魔法使い』ってのがいるのか?」
「あ~、まぁ『魔法使い』もいないわけじゃないんだけど……」
元気な娘ジャスミンにしてはいやに言葉を濁していた。何か言いにくい事でもあるのだろうか?
「うん? 『魔法使い』に何か問題でもあんのか?」
「うん実はね……その……」
とても言いにくそうにして、言葉を口にするのを躊躇をみせる。
「一体なんだってんだ? せっかくだからよ、教えてくれジャスミンっ!!」
オレが必死に頼み込むと、渋々ながらジャスミンは答えてくれた。
「『魔法使い』ってさ……ごにょごにょ……じゃないとなれないんだよ」
「はっ? ごめんジャスミン。声が小さくて上手く聞き取れなかったんだけどな。わりぃけど、もう一度言ってくれるか?」
「えぇっ!? も、もう一度!? 言わなきゃダメですか……?」
オレがもう一度っと言うと、ジャスミンは何だかすっごく恥ずかしそうに頬を赤らめて敬語を使ってきた。なんだかそれがとても可愛らしい♪
「(そんな赤面するほどの事なのか?)」
オレが疑問に思っていると、ジャスミンは意を決したように、大きな声で叫んだ。
「だ、だからねっお兄さんっ!! ま、魔法使いになるには、30歳まで童貞でいなきゃなれないんだよ!!」
「「…………」」
ジャスミンが赤面しながらもそう叫んだ瞬間、店内が「し~ん」っと静まり返ってしまった。
「お、お兄さんのバカっ(照)」っと小声で照れながらに抗議をするジャスミン。
「あ、ああ……わりぃ。何か変なこと聞いちまってさ」
そんな照れてるジャスミンを見ていると、傍にいるオレも何だか恥ずかしくなって、指で頬を掻いて誤魔化す素振りをする。
「アナタ様……」
「ッ!?」
ぽん♪ そう呼びかけられ、右肩に手を乗せられた。いきなりだったので驚いたが、どうやら声の主は静音さんのようだ。
「し、静音さん???」
オレは何故声をかけられただけじゃなく、手まで肩に乗せられたのか理由が判らなかった。いや、正しくは解りたくなかったのだ。
「(だって、いやきっと、いやいや絶対……101%の確立でいつものパターンだと察知しちゃったんだもん)」
オレの予想通り、静音さんは肩に置いた手でぽんぽん♪ と軽く叩かれ、お決まりのオチへと導かれる。
「アナタ様……アナタ様ならきっと良き『魔法使い』になれますよ(ぽんぽん♪)」
すっげぇ笑顔で静音さんから何かを慰められてしまう。
「静音さん……別にオレは『魔法使い』を目指してるわけじゃないからさ……」
オレは顔を引き攣らせながらに、無駄と解っていながらもささやかな抵抗する態度をとる。
「いえいえ、アナタ様なら自ら目指さなくともきっと『魔法使い』になれます! いいえ、その倍の……ぶっ。だ、ダブルスコアの60歳まで童貞を貫き通して、ききき、きっと『大魔法使い』になれるはずですよ! あ、アナタ様ならきっと成し遂げられるはずですよ! ぶふっもう無理もう無理(笑笑)」
静音さんは自らの笑いの値が限界値を超えをしたのだろう、セリフを言い終えるとお腹を抱えて床で笑い転げていた。
「(おいクソメイド……そんな床で暴れてると服汚れんぞ。あと自分で言ってて笑いすぎだろうがっ!!)」
だがそんなオレに追い討ちをかけるように、それまで黙っていたヒロインズが口を開いた。
「うむ。静音の言うとおり……キミなら良き『魔法使い』になれるかもしれんな! あ~っははははっ(笑)」
「ふふふっそうですわよお兄さま(笑) ところで……そもそも『どうてい』って何ですの??? 道程……道の過程ですの???」
天音と葵ちゃんにまで笑われてしまう。
「(ってか葵ちゃん、アンタはローションの温感と冷感は知ってるのに、なんで『童貞』を知らねぇんだよ。知識偏りすぎだろうがっ!)」
「葵お嬢様、まぁある意味では『大人になる道の過程』ですので、その解釈で合っておりますよ(笑) もう下手をすれば『神』に近しい存在なのかもしれません(笑笑笑)」
「…………」
そして、シメに何気に上手い事言ってんじゃねぇよクソメイドが! もはや静音さんの中でのオレは、『大魔法使い』すら超越した存在『童貞神』になっているのかもしれないな!
「(……おいどうするよ。オレの役割・立ち位置がついに『 』から『神』へと変わろうとしてんぞ! そんな適当でいいのかよ?)」
だがしかし、残念ながらオレのポジショニング・ライフルは発射台に固定されたロケットのように、いつでも発射する準備はできていたのだが、生憎と目的地が定まっていなかったのだ。
いつまでも発射体制のままだと、きっと爆発しちゃうよね! っと恐れ戦きながら、いつの日かオレのライフルがデビューする日を夢みつつ、第85話へとつづく




