表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/57

9 - 8

資料館へ着いた一郎たちは、

まずは資料館の周囲を結界で囲う事から始めた。

「御門くん、この建物の周りに結界が張れるかな?」


「ええ、結界石は、いつも持ち歩いているので、

結界を張る事は出来ますが、

この前の犬神の時の様に、

神が相手では、長くは持ちませんよ。」


「ああ、今、『白蛇様』を抑え込んでいる結界を解いた時に、

外に逃げなければ良いだけだから、

少しの間だけでも持てば良いぜ。」


響矢は、資料館の周囲に結界を張り巡らせて行った。


「これ程の結界を張るとは、

お主も普通の学生では無いな?」


「僕は、実家の家業が代々陰陽道ってだけで、

それ程、大した力を持っている訳では、ありませんよ。」


「いやいや、その若さで、これだけ出来れば大したもんじゃよ。」


「恐れ入ります。」


「よし!建物に結界も張れたみたいだし、

そろそろ、建物の中の結界を解くから心の準備をしてくれるか。」

一郎もアイテムボックスから、

神剣と『神の鎧』を取り出して装備した。


「はい、分かりました。」

「うむ、いつでも良いぞ。」


「じゃあ行くぜ、

『この地を縛るものよ、その役目を終えて解き放て!解呪かいじゅ!』どうだ?」

一郎が唱えると、建物を薄く光が包み込んで、

シャリーンと、薄い玻璃はりが割れる様な音が響いた。

「来るぞ!」

ズズズズ!と地震とは違って、

空間そのものが振動している様な地鳴りが響いて、

その音が徐々に大きくなってくる、

ひと際音が大きくなったかと思うと、

ドゴ~ン!と音を発てて資料館の屋根が弾け飛んだ。

「うお~っ!さすがにデケぇな~!」


壊れた屋根から姿を現したのは、

巨大な白い大蛇おろちで、

その太い胴体からは、九つの首が生えていた。

「あの姿はまるで・・・」

その異様な姿形を見て、響矢も絶句している。


「ああ、神話でお馴染みのヤマタのオロチみたいだな。」


「まだ、目覚めたばかりで動きが鈍い様だから、

早い内に手を打った方が良いぞ。」


「そうですね、俺が引き付けるから、

御門くん、一瞬で良いからヤツの動きを停められるか?」


「近づいて護符ごふを張らなきゃならないから、

僕じゃ、ちょっと難しいですね。」


「どれ、その護符をワシに貸してみよ、

近付いて貼り付けるぐらいならば、出来ると思うぞ。」


「分かりました。

これを、お願いします。

なるべく、胴体の中央付近に張り付けて下さい。」

響矢は、村長に護符を手渡しながら言った。


「うむ、任せろ。」


「じゃあ、引き付けるぞ、

『エアカッター!』

さあ来い!デカぶつ野郎!」

一郎が放った空気のやいばは、

大蛇へ向かって一直線に飛んで行きザクッ!と胴体に小さな傷を付けた。

『ギュルァァァァン!』

大蛇が怒りの声を上げて、一郎の方へと飛んで来た。


「来たぞ!」


「よし!ワシに任せるんじゃ!

どりゃ~っ!!」

何と、村長は大蛇に跳び蹴りを加えると、

その胴体に護符を張り付けた。


「今だ!御門くん。」


「はい!『その動きを封ずる!ばく!』

いいですよ、田中さん!」

護符から光の網が広がると、

大蛇の首や体に絡みついて、その動きを封じた。


「よし!任せろ!

殺神剣さっしんけん!』

でや~~~っ!」

一郎は神剣を構えると大蛇に向かって飛び掛って行ったのだが、

神剣が大蛇の首に当たると、

ゴイ~ン!という音を発てて、剣が跳ね返されてしまった。

「うおっ!痛って~、手がビンビンに痺れちまったぜ、

さすがは、悪神とはいえ神だけの事はあるな。」


「無理そうですか?田中さん。」


「いや、今のは、どのくらいの堅さなのか確かめてみただけだから、

今度は魔力をまとって切るから大丈夫だぜ。

そいや~~~っ!」

再び、一郎が切り掛かると、

今度はスパスパと大蛇の首が切り落とされて行った。


「おおっ!見事だぞ!」


「田中さん、もう捕縛符ほばくふが持ちそうに無いんで、

急いで下さい!」


「おう!もう少しだから何とか持ってくれよ!」


『ギュラァァァァァン!』

大蛇が断末魔の悲鳴を上げる。


一郎が最後の首を切り落とすのと、

光の網が消え去るのは、ほぼ同時であった。


「「「やったか!?」」」


大蛇の体を縛っていた光が消え去ると、

大蛇の体はズズ~ン!と地面に崩れ去った。


しばらく、一郎たちが様子を見ていると、

大蛇の体がサラサラと崩れ始める。

「どうやら、本当に倒せた様じゃの。」


「いつもながら、田中さんのちからには驚かされますね。」


伊達だてに、地球最強を名乗っている訳じゃねぇからな。

うん?」

一郎が声を上げたので、響矢と村長が視線の先を追って見ると・・・

「剣・・・いや、骨ですか?」


大蛇の体が消え去った後に、

剣の様な形をした骨が残されていたのだった。

「まるで、神話に出て来る剣みたいですね。」


「ああ、骨とはいえ、かなりの力を秘めている様だぜ。」

一郎が、骨を拾い上げながら言った。


「そうなんですか?」


「ああ、へたな悪霊ぐらいならイチコロだな。」


「その骨は、そなた達が持って行ってくれぬか。」


「いいんですか?

村のご神体くらいには、成ると思いますよ。」


「その神は、この村に取っては厄病神だからのう、

それに、受けた恩を返す当ても無いからの。」


「そういう事でしたら、

これは、お礼の品として受け取って置きます。

どうだ、御門くんが使わないか?」


「良いんですか?田中さん、

悪神を倒したのは、あなた何ですよ。」


「俺には、この神剣があるからな、

良かったら御門くんが使ってくれよ。」


「そう言う事でしたら、ありがたく頂いて置きます。」


「じゃあ、向こうに帰るまで、

俺が預かって置いてやるよ。」

一郎は、神剣や『神の鎧』と一緒に骨をアイテムボックスに収めた。


「ありがとうございます。

お願いします。」


「お~い!あの、大学生たちが目を覚ましたぞ~!」

村の人が、大声で村長に連絡しに来た様だ。


「どうやら、友達たちも大丈夫だった様だな。」


「ええ、良かったです。

これも、全部、田中さんのお蔭ですよ。」


「俺が、そっち関係で困った事があったら、

何か、お願いする事があるかも知れないから、

その辺は、お互い様さ。」


「ええ、その際は、是非ぜひお手伝いさせて頂きますよ。」


(これが、今回の事件のあらましだが、

仕事としてでは無かったので、

報酬は御門くんにあげた骨だけとなったが、

まあ、色々と面白かったから良しとしよう。

では、また会う機会まで、ごきげんよう・・・)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ