ケース6 城ヶ崎博士誘拐事件
K&T探偵事務所は、朝9時出勤だ。
いつものごとく10分前に、一郎が事務所のドアを開けると、
社長の姫花が、自分の席でコーヒーを飲んでいた。
「おはよう、社長!」
「おはよう、田中君。
田中君も、コーヒー飲む?」
「ああ、もらうよ。」
一郎が、自分の席に着くと、
コーヒーをカップに注ぎながら、
姫花が話を、きりだした。
「今日は、新しい依頼が入っています。」
「おお、久しぶりだな。」
「ええ、うちは、私の方針で浮気調査とか断っているから、
他社と比べると仕事量は少ないわね、
ただ、最近は依頼達成率100パーセントってことで、
少しずつ話題に、なってきてるみたいよ。」
「へ~、そうなんだ。」
「ええ、今回の依頼人さんも、
あちこちで断られて、困っていらしたんだけど、
ネットで、たまたま、うちの事を知って、
ご連絡下さったみたいなの。」
「へ~、それで今回は、どんな事件なんだ?」
「ええ、依頼人は城ヶ崎 光さんで、
23歳のOLをされてる方なんだけど、
お父様で〇〇大学の大学院で、脳科学の研究をされていた、
光一さんが、行方不明になってしまったらしいのよ、
光さんは、早くに、お母様を亡くされていて、
父ひとり子ひとりで暮されていたそうなの。」
「いなくなった時の状況は、分かってるの?」
「ええ、行方が分からなくなった日の、
当日に、同じ研究室の人が、
「もう少し残ってデータを整理する。」って言われる、
光一さんを見たのが、最後らしいのよ、
大学の入り口の守衛さんは、
光一さんが通っていないって証言しているわ。」
「警察は調べたのか?」
「ええ、光さんが頼んで調べてもらったらしいんだけど、
研究室には、争った形跡や、荒らされた感じもなくて、
警察は、光一さんが自分で姿を消したと見ているらしいわ。」
「光さんは、何て言ってるんだ?」
「それが、光一さんが悩みを抱えている様子は無かったし、
居なくなった日は、光さんの誕生日で、
朝、自宅を出るときに、
「プレゼントを用意してあるから楽しみにしてろ。」って、
おっしゃっていたらしいのよ、
そんな状況で、自分から姿を消すとは思えないって、
おっしゃってるの。」
「成程な、
突発的にっていう、パターンが有るかもしれないが、
普通に考えたら、自分から消えるっていうのは変だよな。」
「ええ、私も、そう思って依頼を受けることにしたのよ。」
「とりあえず、最初は、光一さんが消えた大学から調べ始めるようかな、
大学には調査に入れるかな?」
「ええ、光さんが頼んでくれたから、
研究室の人たちにも、話が聞かせてもらえるわよ。」
「じゃ、さっそくアポを取って、出かけるとするか。」




