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「これは・・・!」
強く、たちこめる瘴気の向こうに、
巨大な動物らしき影が見えている。
「えっ?えっ?」
社長には見えていないようなので、白魔法をかけてあげた。
「何あれ!
あんなのと戦うの!?」
どうやら、ちゃんと見えたようだ。
「いや、戦うというよりは、封じ込めるといったとこかな。」
俺が、風魔法で瘴気を吹き飛ばすと、
巨大な狼が、その姿を現した。
「御門くん、そろそろ始めてもらえるかな。
社長は、御門くんが作業に集中できるように補佐してくれ、
シールドを張ったから、相手の攻撃は届かないから、
何かしてきたら、神槍で対応してくれ。」
「分かりました。」
「分かったわ。」
「縛!!」
御門くんが、祟り神に向かって、符を飛ばすと、
光る網のように広がって、覆いかぶさった。
『グガアアアアッ!!』
祟り神は、網から逃れようともがいている。
「くっ!やはり、長くは持ちそうにありませんから、
急いでお願いします。」
「了解。」
どうやら、なんとか抑えておけるようなので、
俺も自分の作業を開始した。
(え~と、材料は、近場に転がっている、大きな落石で良いか・・・)
一郎は落石を錬成して、強度を上げると、
形を変形させていく。
「きゃっ!」
姫花の悲鳴に振り返ると、
身動きが出来ない、祟り神の体から、
何かが分離して、姫花たちの方に向かっている、
胴体が長く、一見イタチのようだが、
顔はキツネに見える、それが数十匹ほど襲ってきていたが、
シールドに当たって、一定の距離からは近づけないようだ、
危険がないのを確認した姫花は、神槍で迎撃し始めた。
「へ~っ。」
神槍を構えた姫花は、素早く動いているキツネを、
的確に捉えている。
(社長は、動いている物を見る、動体視力ってやつが優れているんだな、シューティング・ゲームとかさせたら、ハイスコアを叩き出しそうだ。)
どうやら、あちらは大丈夫そうなので、一郎は作業へと戻った。
「くっ!」
暫くの間、祟り神を抑えていた響矢だったが、
光の網が、所々(ところどころ)綻び始めてきた。
「田中さん!もう持ちそうにありません!
そちらは、どうですか!?」
バシィッッッ!!
響矢の言葉直後に、光の網は弾け飛んだ。
『グルゥァァァァ!!』
体が自由になった、祟り神は、
すかさず、姫花たちへと襲いかかった。
「ああ~っ!」
「きゃ~っ!」
姫花は、シールドを破って向かってくる、
祟り神を見て、最早これまでかと覚悟した。
姫花たちが、襲い掛かられると見えた瞬間、
突然、祟り神が、白く輝く珠に覆われた。
「何とか、間に合ったようだな。」
「田中さん!」
「田中くん!」
一郎が、珠に手を翳すと、
一郎の、手の動きに合わせて移動してゆき、
ソレの中へと、吸い込まれていった。
「コレはっ!!」
響矢の視線の先には、
縦、横、奥行が3メートルほどもある、
石造りの社が建っていた。
「建物に、封印と浄化を付与しといたから、
時機を見て、元の犬神に戻ったら、
封印だけ解除しれば良いだろ。」
「田中さん、あなたは、いったい・・・」
「何でもできる、万能探偵ってことで良いだろ。」
「はあ・・・」
「田中くん、犬神が元に戻っても、
信仰され無いと、また狂っちゃうんじゃないの?」
「その辺は、俺に考えがあるんだ。」




