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END

 翌日、安藤は普段よりも早く目が覚めた。

 安藤はドアを開けて、朝早くの気持ちのいい風を感じていると、和田が現れた。

「ゴーストがこんなに早い時間に起きるとは珍しいな。ニヒと戦えて嬉しいか?」

 超えられるからね、と小さく言うと、和田は満足そうな笑みを浮かべる。二人の間に沈黙が流れた。気持ちの良い風を感じながら、口を開いたのは和田だった。

「そうだ、これをやろう」

 安藤が和田をよく見ると手には白い紙袋があった。和田が白という清潔な色の物を持っているのが信じられず、何が入っているか心配になり凝視する。

「心配する必要はない中身は服だ」

「服をくれるのか?」

「そうともさ」

 安藤が袋を破って中を見ると、服のセンスに驚き声が出た。

「何だ、これ?」

 そこにあったのは漆黒の上下に漆黒のレインコートという黒ずくめの服装だった。

「レインコートを来ていれば、相手に装備がバレないだろう」

「どうして全身真っ黒なんだよ」

「全て同じ色にすれば、体のラインが分かり難いだろう」  

「センスは悪いが有り難く貰っておく。ニヒは何処に現れるように仕向けた?」

 和田は両手を肩のあたりまで持ち上げると首を小さく振る。

「ニヒと始めて出会った場所に現れるように情報操作をしておいてやったよ。過去の自分を超える場所は過去の自分がいた場所の方がわかりやすいだろう」

 東を盾にするという、非力だった自分を思い出しながらの戦いか。そう思うと、過去の二の舞にならないように気が引き締まっていくのを感じた。

 それから数時間が経ってから、安藤は和田から貰った漆黒の服を纏った。

 着替えが終わると、急ぐこともせずニヒと出会った橋へと向かった。



 安藤が橋の見えるところまで来ると、橋に誰か二人立っていた。戦闘用義眼を使ってズームすると、二人が見覚えのある顔だった。記憶を辿ると、差別主義者の高田と遅刻をよくする北野が二人たっていた。二人は中が悪いと記憶にあるが、どうして二人いるのだろうと思った。

 ゆっくりと近づくと、高田が話しかけてきた。

「久しぶりだな、安藤。いや、アンドロイド」

 差別主義者という記憶通り、人間ではない自分の扱いはこんなものかと冷静に思った。

「久しぶりらしいね」

 力なく答えると、北野が捲し立てる勢いで話始まる。

「俺ぁ達さ、散々迷惑をかけ、人を殺した機械のくせに、随分と平気なツラして人様の前さ来たものさ!」

 安藤は北野を真っ直ぐに見つめ答える。

「東を盾にしてしまった弱い自分を超えるために、ここに来たんだ。迷惑をかけたのなら謝るが、お前達の前に出てきた訳じゃない」

 その言葉が北の癪に触ったらしく、過去のように拳を振り上げる。

 安藤は北野を見ると、新しくなった人工眼がモードを戦闘用に変わる。すると、動きがゆっくりと見えた。これを過去の自分は喰らっていたのか。そう思うと、過去の自分の無力さを痛感した。

 安藤は振り下ろされる腕を、掴む。

「俺はニヒにあって、過去の自分を超えたいだけだ。邪魔をしないでくれ」

 北野の腕を掴んだ手に少しずつ力を加えていくと、すぐに視界上に警告の文字が浮かんだ。それとほぼ同時に北野が声を出した……。

「腕が!」

『これ以上の力を加えることは相手に後遺症を残します』

 文字を確認すると、安藤は力を加えるのをやめる。ゆっくりと安藤が手を離すと、北野は掴まれていた腕をもう片方の手で擦る。

「オメェは悪魔にでもなったか! 人間を傷つけられるアンドロイドたぁ、何様のつもりさ!」

 そう言うと、怒りの形相で安藤にもう一度殴り掛かる。安藤はそれを受け止めると、腹に掌底を打ち込む。

 北野は腹を抑えると、動かなくなる。

 その様子を見ていた、高田は震えるような声音で言う。

「ア、アンドロイドの分際で何をしてんだ!」

 北野は震えた手で安藤を指差す。

「掌底は腹ならば、そんなにダメージが来ないから大丈夫だ」

「そんなことではない! アンドロイドがどうして傷つけているんだ!」

「それが出来るように作られたからさ。だが、人間も人間を傷つけるのは良くない。どっちも同じさ」

 そう言うと、笑い声がした。

「面白いことを言うな。違法アンドロイド」

 声は学校の方からした。そちらを見ると、学校からゆっくりとニヒがこちらに向かっていた。

「旧友と会いたかろうと思い、準備してやったが、意味はなかったようだな。人間たちよ。お前達が責めるために会いたがった安藤は、もうこの世にはいないようだ。去らねば、女の二の前になるぞ!」

 ニヒの言葉を聞くと、北野と高田はそれぞれ都和と築紫に消えていった。

「お前が呼んだのか?」

 ニヒはかすかに唇を歪める。

「否。ただ教えただけさ、貴様がここに来ると」

 来ると知っただけで、二人が来たとは安藤には理解出来なかった。だが、自分がいない間に何かがあったのだろう。もしくは、自分の記憶にない感情の部分で何か起きていたのかもしれない、と安藤は思った。

「さぁ、我に人を殺させた罪。贖ってもらおう」

 ニヒは茶色いマントから手を出すと、片方の手に刃が片方にしかない刀のようなナイフが握られている。ニヒは握ったナイフを一度空中で振る。すると、ナイフの刃が伸び短刀ほどの長さになった。

 ニヒがナイフをいじると、刃が赤く輝き始める。安藤は腰にかけたナイフを手に取った。安藤は腰に二本、足に一本ずつで計四本の振動ナイフを持ってきていた。

 安藤はナイフを手に取ると、言う。

「俺はお前を倒し、過去の自分を超えてみせる」

 ニヒは言葉を笑うと、走って間合いを近づける。安藤の人工眼のモードがかわりニヒの動きがゆっくりとなる。ニヒがゆっくりとナイフを振りかぶるのを見る。ニヒが振り下ろそうとすると、安藤はニヒの腕をつかみ、振り下ろす動作を止める。そして、腹部目指して振動ナイフを指すと、硬い感覚がした。

 安藤が驚くと、その隙にニヒが安藤の腹部を蹴り、間合いを取る。

 安藤はニヒの硬い感触があった腹部を見ると、切られた服の間から金属が見えた。

「ニヒ、お前アンドロイドか?」

 ニヒは自嘲気味に笑うと、首を左右に振る。

「違う。我は人として生まれながら、機械の身にされた身。サイボーグだ」

 安藤はニヒに返す言葉がない。だが安藤を襲ったときに言っていた、安藤を羨む言葉の数々はそこから出ていたと分かった。

「サイボーグが現実に存在するとは驚いた」

「驚けば良かろう。見下せばよかろう。だが、俺はお前を殺す。それだけは変わらない。」

 ニヒは短刀を再び一本で構える。

「体を改造したのは一目で分かった。眼を変えて、動作を読むとは誇りもなにもない戦いを選んだものだな。それほどまでに俺を殺したいか、違法アンドロイド」

 ニヒは顔を歪める。

 安藤は誇りも糞もないという言葉に自身の自尊心を傷つけられたが、言い放つ。

「俺はお前を乗り越えて生き残る。ただそれだけだ」

 安藤の人工眼がニヒの体の水分を含む場所をしめした。頭までは機械化出来なかった。そんなことを思っていると、ニヒは再び間合いを詰める。

 俺はこれで過去を超えられる。そう思いながら、安藤はニヒの刃を軽々と避け、顔めがけてナイフを刺した。

 現代文学研究会で小説を書かせていただけるようになったレインです。

 今回は人間とはどういうあるべきかを書きたくて、この物語を書きました。ですが、ページが増えるほどに自分の中で、最初に書きたかった物が書けない状況に陥りました。

『人間がどう生きるべきか? 』と『人間とは何だ? 』、という言う疑問の間に大きな溝があることに気づき、答えが分からないままに書いたという状況です。

 そんな自分の答えもないままに書いてしまい、後半が特にグダグダになってしまいました。

 そんな作品ですが、部誌を手に取り読んでいただけたのならば嬉しいです。


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