第85話 認知
「まぁいざデキちゃったときは、魅那くんの子ども産むけど別にいいよね?」
「――、あぁ、責任は取らないとね」
朝食を並べる平和に言われ、返す魅那の声は掠れた。
「え……まさか産ませない、認知も?」
「冗談でその選択肢言わなくていいから。クラフトたちが責任取らないのはわかってるし、俺にできる補償なら全部する。
ただ朝は低血圧なのに色々考えてて、一瞬フリーズしてるだけだ。
今はもう、ほっといてくれ」
「ならちゃっちゃと切り上げて『いただきます』だよ、魅那くん」
「あぁ、うん。はい」
なんなんだよ、この茶番は。
こちとらクラフトの所業に下手したら吐く寸前だったんだが。
にしても平和のやつ、ほんとこういうときに逞しいよな。
自分と意図せず関係してしまった異性三人となにごともなかったかのように食卓を囲っている。
いまはそれ以上、深く考えるのをやめとこう。
ところで食後、ルービッククラフトが抜かした。
「なにを深刻に考えているキュキュか?
クラフトの力があればその気なら避妊なんていつでもできるンキュキュよ?」
「「「「!!?」」」」
女の子三人がわりと食い気味だった。普段は穏和な――いや最近はそこから程遠く見えるかもだけど――恵瑠乃が、自らクラフトの首を絞めあげているほどだ。
魅那はもうリアクションすることから放棄した。
*
初物がクラフトの暴走で催眠トランスからの無自覚のうちに終わっていた恵瑠乃と平和には男の自分ではその辺り、フォローのしにくい。平和は遊んでいるまで言わないが、俺の知らないところで普通に男作ってるんじゃないかとか、同業者の生々しい話しやらプロデュースやら事務所の話を暇潰しを口実に聞かされてたりと、普通に顔が広かったりするので、そういうのはありそうと思たりしたのだが――俺で、よかったんだろうか。いや、今更あの子の好意を疑ってないんだけど、普段の彼女の好みを知っているから、それが俺に向いたことに驚かされていて。恵瑠乃は恵瑠乃で、普段は王成バリアがあるからして、そういうことに意識の薄いままいるのかと想ってたら、流石にコウノトリがとかキャベツ畑で採れるとかそういう迷信に染まってたわけでもないんだよな。すんなり行き過ぎてて、そのほうが一周して空恐ろしいというか。
(つーか二人とやったときの記憶ほぼ飛んでるのどういうことだよ、いくらなんでも俺、催眠洗脳耐性なさすぎだろ……逆に帝国のとき、ゴルフクラフトに引っかからなかったのが不思議すぎる)
ウィズダムクラフトの言い分ではどうにも、こればかりは生まれついての体質がものを言うそうで、気合でどうこうできる類のアレではないそうだ。
「つまり変身してないときの魅那くん狙って催眠かけとけば最初から勝てたんじゃないか、うちら?」
「それをやるとどのみち帝国で行き詰まってたよ」
「それもそうか……」
平和が結構恐ろしいことを言っている。智絵があっさりifを潰した。まぁそも、ローゼン・テラスに行ったときも智絵に秒で眠らされてたのを考えると、ウィズダムクラフトが局所的に彼を相手の特効と化したろうことは想像に難くない。いまの三人が敵でなくて、じつに胸を撫で下ろすべきところだ。
でも俺の下半身が節操ないのはもう言い逃れようがなくなったり――どうしてこうなった?
スマートフォンに、ユキノから着信がある。
「もしもし、六分儀からなんて珍しいな」
『平和そっちにいる?』
「逆になぜ俺のとこだと想うんだ、本人に聞けばいいだろうに」
『んなこと言ってるから女の子に嫌われてるんだよ』
「――、せめてお前か王成限定にしてくれ。
いますよ、それでどうして欲しいんだ?」
『あーいや、確認しただけだよ。
あの子晩から電源切ってるみたいだから』
「本人につけるよう伝えとく」




