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第32話 概念語彙創出《アナグラシア・オノマトペ》

 アナグラムの用いる概念語彙創出アナグラシア・オノマトペは、ナンプレクラフトの概念数整合の参照元だ。

 クラフトの使用時に扱われる力ないしエネルギーを、碑郷の研究者たちは『神秘力アルカオルゴン』と呼んでいる。

 クラフトから発するあらゆるエフェクトは、神秘力から変換されるらしい、概念語義もそういうことだ。

 戦闘時に使用された概念語彙の記録から、数字を扱ったものを限定的に再現抽出することでナンバープレイスの概念数整合が確立した。

 概念語彙を構成する殆どはアルファベットであり、数字を扱うことは彼女も稀だったはずだが――そういえば昔、ポリゴォンとセィルロイドが一時期やたらと彼女に数字を使わせていたが、そういう戦略だったんだろう。


(その頃から帝国とメルキオ卿は通じていた――下手するとバルタザール卿もだが)


 特にセィルロイドがいつも粉塵爆発的なエフェクトを用いると、大なり小なりエフェクトそのものの母数が要って、チャトランと彼女が対応に追われがちだった。


「案の定、こうなったな」


 ポリゴォンが拘束衣のまま、クロンダイクに攻撃されて回避している。

 先に不審な動きを見せたら攻撃しろと、クロンダイクには言いつけておいた。


「アーミーとはいえ、クロンダイクは超人戦闘の経験値が圧倒的に足らない。

 このままクラフトを使って潰えるのと、この場であいつに返り討ちに遭うなら、どちらがマシか」


 ナンバーこと魅那の狙いは、ポリゴォンとクロンダイクが衝突することだ。


(最悪どちらか死ぬだろうが、従わない部下なんて足手まといだし――メルキオのやつが変な条件足さなければ、まだクロンダイクは使い倒してやったのに)


 ところで背後に気配があった。


「この前の擬似クラフトホルダー……それにポリゴォン?

 碑郷はよく彼を外に出したな」

「きみか、アナグラム」


 彼は振り返ったが、直後宙に文字列のエフェクトが現れ、攻撃を受ける。

 概念数をエフェクトで飛ばすも勢いでは押し負けていた。


(オリジナルクラフトは術の入力速度にラグがない、かたや複製品の数字ではそこから術を構築する時間と威力で劣る)


 その場合、ナンバーは数字ないし数式列を予めストックするなどして対応することが殆どだ。


(今使われた文字列――)


 覚えておこう。


「あなたが使うのは紛い物の数字だけ。

 ならオリジナルの私で押し負けるわけない!」

「この戦い、なんの意味がある」

「ジグソーとチャトランからクラフトを奪ったでしょう!

 返してあげて、あなたが償うなら、今をおいてほかにない」

「――、償う?」

「ルービックがおかしくなったのも、チャトランが笑わなくなったのも、あそこでポリゴォンと擬似クラフト使いを戦わせているのだって、全てあなたがやらせていることでしょう!?」

「俺はチャトランほどの策士じゃないしな。

 このクーデターだって、今の今まであの子が仕込んだものじゃないかって考えてたくらいだ」

「つくづく……性格が歪んでいるわね、自己評価も」

「は?」

「チャトランがどれほどあなたに煮え湯を呑まされてきたか!」

「マジで何言ってる、そりゃクラフトぱくったのは事実だけど」


 彼女らが碑郷を離れてのちの二戦ならとかく、戦闘で彼女らの足を引っ張らない程度には、必死だったのだけど。


「あなた、いつもルービックにええかっこしいじゃない」

「はぁ、だとしたら?」


 五十歩ぐらい譲って仮にそれを認めるとしよう、そしたらなんだというのか。


「チャトランがどれだけルービックを想っているか、あなたさえ身を引いていれば!」

「ルービック、恵瑠乃が王成に振り向いたと?

 冗談じゃない、俺ははなからそういうものじゃないだろう、ろくに戦闘時の会話だってしてこなかった自覚はあるけど、ならコナかけてたわけでもない。

 それに――碑郷から離れた時点で、きみたちの絆に俺なんて関係ないだろう」


 アナグラムの動きが止まり、ナンバーも後退して踏みとどまった。

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