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幕間01 版権無視のワゴンセール

 智絵が皇都へ戻ってくると両手いっぱいレジ袋に詰まった菓子の束が入っていたことに、ほか四人は歓喜した。黄金碑郷でたたき売りされていたそうで、手持ちで安く仕入れたのだとか。

 帝国では菓子の類などすっかり見ないために最初は湧き上がっていたパビリオンたちだったが――、


「版権ってあるじゃない」「うん」

「ヒーロー業のうちらが監修できないのわかってて、パロディどころか肖像権すれっすれのグッズお出ししてくる菓子メーカー、なんなのあいつら?」


 ジグソー平和が段々苛立ってきて、恵瑠乃は相槌を打ってなだめている。

 グミのシリーズは『ルービックピース』、『ウィズダムダウジングロンバス』、『チャト子と始めるチェスピース』、クラッカーやクッキーには『ピースのヘルロックピーシーズ』なんて……そいえばこれだけはたしか、戦闘後に声をかけられたジグソーが商品開発担当者にロックがどうとか細かくコンセプトを聞かせたわり、口約束だったこともありその後一銭も得られなかったと嘆いていたのはまだ記憶に新しいうちだ、食品そのものを除いたグッズ系だと『アナの計量カップ』だのとあった。

 無論大抵半額か八、九割り引きのシールが載っている。


「いや安かったにしてもなんで全部私たちのパロディグッズなの?

 ねぇなんで!?」

「そりゃ捨て値で甘いもの腹いっぱいなら実利を取るでしょう」

「そだね智絵って元からそういうとこあるよね……確かに、ないよりは遥かにマシですけども」


 五人とも呆れながらもよくコンビニでそれっぽいブランディングしているやつらしく、味はまぁまぁと言ってて、でもこいつら私たちが帝国側についた途端捨て値でワゴンに全商品軒並み突っ込んだんだよなぁとか、いい気味とか、結局不満たらたらなんである。

 都合のいい時は我らがヒーローだのヒロインだのと持ち上げておいて、自分たちの期待に反することを仕出かし、汚点がついた途端にそれまでをなかったものとして唾棄する、ほんとうに虫のいい連中だ。結果今安く手に入っているのは皮肉すぎる巡り合わせだが、いずれも味はまずまずといったところなのでまぁよしとしよう。


「そういえばナンバーはルービック関連のこういうグッズ、色々持ってるみたいだけど」

「え――いやそこでナンバーくん関係なくない?

 そも彼ってそういうの興味あるんだ、なんだか俗っぽい一面知っちゃったなショックだ……」


 智絵は逆効果だったかごめんと、誰にともなくぼやいている。

 最後に残った袋に王成が手を付けた。


「これは? 食べ物じゃなさそうだけど――」


 中身を見てから、彼女は愕然とする。


「な、な、な――なななななななんでぇ!!!??」

「ぐっじょぶいいリアクションだ」


 サムズアップする智絵を王成は激しく非難した。


「どうしたらこんなものまでまとめて買ってくんのよ!!?」

「そりゃ某安の殿堂で隅に見つけちゃったからね」

「こんなのあるのなんて、どう考えてもカーテンでゾーニングされてる場所トコでしょうがッ!!!」

「ふぅん、詳しいんだね王成」

「なに、そんなに騒いで――いったいなにが入ってるって」


 恵瑠乃が反応するも、察したアナグラムことユキノと王成が押しとどめる。


「いいんだよ知らないままの恵瑠乃でいて?」

「そうそう、おこちゃまにはまだ早いかな」「はぁ……」


 結論から言うと、残る袋に入っていたのは某社がよくアニメなんかのパロディでお出ししているキャラクターもののオ○ホールである。アナグラムなどはSNS上でアナがどうだの名前で散々擦られてしまった後なので、免疫のない王成の反応は察するに余りあった。

 煮え切らない恵瑠乃だったが、視線はさっきまで食していたものに戻っている。


「お、食玩――キャラクターカードあるんだ。

 ナンバーくん、シクレ枠扱い?

 珍しいね、ほかの商品だとメビウスちゃんが限定枠みたいなことは結構あるけど」

「あいつに限っては各所扱いの振れ幅ひどいよね、シクレにすると叩かれて、かたやキャラクターTCG由来のやつにレアリティ付与されてみたなら、いやノーマルはおかしいだろ単体性能的にって――」

「ごめん平和ピースがなにを言ってるのか途中からわからない」


 王成が嘆息していた。


「三賢人お抱えになってから、カスパールさまが根回ししてるのか、あの子の悪口とか露悪系は出てないよね、というかもともと大した人気もないから、言うほどのことでもないかもだけど。カスパールさま、あいつのこと好きすぎるから」

「意外、王成ってナンバーくんのこと嫌いだと想ってたけど」

「うそ――恵瑠乃に……ばれてた?」


(逆に普段あれだけ犬猿の仲なのに、ばれてない自信があるのか)


「私のこと、なんだと想ってる?

 よく見てるんだね、その気だったら彼、説得できたんじゃないの」

「――、それは」


 意地悪を云うのはひとまずやめにするが、最近の王成に対して、恵瑠乃も想うところないではないのだ。


「呼んでも来ないメビウスちゃんはとかく、ナンバーくんはいつも、私たちに真摯に向き合おうとしてくれてた。こんなのって、きっとよくない。

 もう彼は私たちの味方になってくれないだろうけど、私――思い通りでなくても、いつだって最善を尽くしたいんだ、これからだって……できれば最後まで」

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