第29話 人外の理屈
ジグジグ野郎曰く、
「『インテリジェンス・ドレス』は戦士たちを包み護るものジグ、なのにこいつは戦士の血肉と魂を際限なく喰らう暴食、知性の欠片もない下品な力の塊ジグよ、獣の力――コイツらに較べれば、百歩譲ってナンプレのほうがマシだぞジグ!」
「つくづくとって付けたような語尾だな……」
「そこ今気にするところジグか!!?」
マスコット妖精のキャラ付けをいちいちツッコミ入れてても仕方ない。
「そうでない人間を生贄にしていること自体はいいのかよ?」
「いいわけないジグ!
いくら勝手に人間が同族を生贄にしていようが関係ないジグけど、たかが捧げられただけの人間のガキどもなんかやこんなものらとうちらを同列に語らないで欲しいジグ!」
「うわぁ……なぁ、ひとつだけ頼むから、お前らそれをパビリオンたちの前で言わないでやってくれよ?
俺でさえドン引きだからね」
「なんでジグか?」
「ジグソー!きっと言う通りにしたほうがいいのチャト!」
こういうとき、チャトランには少なくとも一般的な良識は備わっているようでほっとした。本質的に人間とは別の種族としての生態と異種族なりなプライドがあるってことだろう。
「で、どうすんのオリジナルクラフトくんたち。
あるいは今が俺を止められる千載一遇、唯一の機会だったかもしれないぞ?」
魅那はナンプレクラフトを手元に取り寄せて振った。
またチャトランクラフトは、目を潤ませている。泣き虫だが、それだけ主人の身と行く末を案じているのだろう。
「クラフトを破壊しようとすれば、クラフトに抵抗される。
ポリゴォンにやられかけた時はそうだったが」
「装着者がクラフトを手放す意志を固めた場合は、その限りじゃないジグ」
「でも私は壊さないチャト」「なぜ?」
「お前が死ぬと、ルービックは今度こそ壊れる、そしたら私のパビリオンも――今まで以上に追い詰められるチャト」
(王成のため、か)
「良ければすこし聞かせてくれよ。どうせお前たちは、次にあいつらに会うとき、返してやるつもりなんだから……話すくらいの時間は、まだあるだろう」
「なにを?」
「そんなの決まってる。お前らのパビリオンたちと、どうやって結ばれたか――切っ掛けだとか、もっととりとめのないことでもいい。あいつらのこと、少しでも知っておきたいんだ。
また戦うことになる前に、さ。そうなってからでは、もうできないだろうから」
(膠着や一進一退ではダメだ、総当たり戦を繰り返していれば、互いの手のうちを読み合い、殺し方も洗練されて加減できなくなる、なにより賢人会は俺へ成果を要求する、もう失敗は許されない)
「次にやるときは、きっと誰かしら死ぬ――みんなそれを言わないだろうけど、そうなると多勢に無勢な以上、俺のほうがフラグというか……逃げ場がない。
お前たちはいざなれば、クラフトホルダーたちを連れて逃げろよ、立場なんてないんだから、きっとやり直せる」
「どうしてチャト、お前は――ナンバープレイス、紛い物なのに」
「そりゃまぁ、宮仕えだからな」
あの子たちが帰ってくるべき場所、立場、名誉、他人になんと謗られようとも、そういうものを奪わせないために……ただ、ルービック、恵瑠乃の背をなぞっていただけだ。
あの子が俺にそうしてくれたように。




