第28話 横領犯
そうだ、俺が高望みし続けたから、あの子たちを巡り巡って苦しめる。
「わかったよ……好きにしろ」
魅那はふたりの前に、ナンバープレイスの擬似クラフトを差し出す。
「たった今、ここで。
お前らが本気でそう思っているなら――やれよ、ほら」
「「――」」
結果的にクラフト妖精たちを連れてきたこと、今は少しだけ感謝している。
自分ではどうにもならない戦いを、その判断の先を彼らに委ねていいのなら、それはきっと俺に許された最後の機会でもあるんだろう。
「そのクラフトはお前たち本物と違い、他人の生き血を啜って生まれた呪物だよ。
お前らはそれを薄々感じとってるようだけど」
「チャトラン、本当にやる気ジグ?」「……やらなきゃ、ルービックも私のパビリオンも、また壊れちゃうチャト!」
チャトランクラフトは、どうにも宿主に性格が似たようだ。責任感の強さはまさしく王成の陰ながらパートナーってことだろう。だけど、あれだけ勇ましいことを言っておいて、なぜか泣き崩れかかっている。
「なにを泣いてる?
せっかくお前の願いが叶おうとしているのに。
それを壊せばお前のご主人は喜んでくれるだろう、邪魔者もいなくなって、万々歳じゃないか――被害者ぶった顔はやめろ、殴りたくなる」
「……うぅ」「チャトランに意地悪するなジグ!」
「あ、これ俺がまた悪い流れなんだ」
一応自身の進退、というか生死がかかっているから見届けたいのだが……チャトランクラフトはいつまでも泣いてばかりで、やる気を見せない。
「ダメ、チャト」
「はぁ?」「ジグー……!」
もう片方からの圧があるので、魅那はリアクションを嘆息ひとつにとどめる。
ものの、煮え切らないなら相応のけじめを求めた。
「なんのつもりだ、チャトラン。お前のご主人、王成は俺を嫌っているだろう。
そう難しいことじゃない筈だ」
「うちも、迷わない、決めたはずなのにチャト……!」
本当に迷わないのなら、俺を説得するまでもなく擬似クラフトを奪えばいいのだ。
「まぁいいや。ふたりに聞きたい気まぐれがあるんだが、いいかな」
ナンバープレイスを妖精たちと机の上に放置したまま、ならばこちらはどうかと懐からスパイダークラフトを取り出す。こちらは最悪彼らに壊されても、同期していた秋山が死ぬだけだし、そも秋山も二度しか実戦で装着しておらず侵蝕も初期のうち抑えられている、その可能性は限りなく低いはずだ。
「それは?」
「黄金碑郷が造った決戦兵器、デジタライズクラフトのひとつだ、紛失と欺瞞して、連中からくすねてきた」
「宮仕えのくせして、立派な横領犯ジグ」
「だがお前たちも、得体の知れないよりはマシじゃないか?
俺はあの二戦で初めてあれらを見たんだが、お前らはどうよ」
「いんや、うちらも初めて見たんだジグ」
「これナンプレのやつより気味悪いチャト……」
「ふむ。
ナンプレの時は製作に三十人が犠牲になった、こいつはそれ以上ってことか?」
「人数の問題じゃないジグ」
ジグソークラフトは首を横に振る。
「これは我々の対極にあるジグ、本物を模した紛い物も最悪だけど、こいつはきっと――装着者をとり殺すためのクラフト、ジグ」




