第52話・外の世界へ
インフルエンザに感染してしまいなかなか熱が下がらず、その後始末に追われた結果長期間お休みしてしまいました。3月5日には投稿できると思います。
「すっごいね~。いろんなお店があるよ。ほら、ルセアちゃん行こうよ」
「リムちゃん、ちょっと待って…」
リムは興味津々といった様子で、通りの左右に開かれている様々な店舗に視線を奪われている。
ここ、王都の商店街には飲食店や宿屋といったものから、異世界ならではの武具店なんてものまで開かれており必要なものがなんでも手に入りそうだ。
ルセアはそういった店の虜となっているリムと手を繋ぎ、あっちこっちへと体を引っ張られている。
本来、ルセアの方が能力値が上のため力負けすることはないのだが、リムを傷つけないためかされるがままになっている。
「あまり離れるなよ。2人とも可愛いから、誰かにさらわれちゃうかもしれないぞ」
「えへへ、じゃあその時はおにいちゃんが助けに来てね」
リムは俺の言葉を間に受けずニコニコと笑っているが、この言葉は何も冗談ではない。
リムは仮にもエルフの王族だ。産まれてからずっと部屋に閉じ込められていたため、その容姿を知るものは非常に少ない。
しかし外套を被せているとはいえ、時おりその隙間から見せる宝石のような輝きを放つ銀髪は万人が見惚れる美しさだ。
また、幼いながらも王族としての気品さが漂い、銀髪と相まって非現実的な雰囲気を醸し出している。
ルセアも聖女の卵並びに魔女の卵の称号を持つだけあって、一切の汚れを知らないような清廉さと異性はもちろん同性すら虜にしてしまいそうな妖艶さを併せ持っている。
こんな2人の幼女が手を繋いで歩いていれば、たとえ両者とも外套で顔を隠していても嫌でも目立つ。
その両者の後ろにまさに絶世の美女という名がふさわしい美貌を持つアリシアがいればなおさらだ。
そして、美しい幼女2人と美女と共に歩く唯一男である俺。周りの男たちの殺意のこもった視線をひしひしと感じながら歩いていた。
俺たち4人がグリム王国の王都へ来ることになった訳は、数日前に遡る。
☆ ☆ ☆ ☆
俺たちが新しい仲間であるルセアやルージュと親睦を深めるという名目でだらだらと過ごしていると、部屋から飛び出して来たリムが唐突に叫んだ。
「おにいちゃん、お外行こう!」
お外?この32階層以外の階層に行きたいのだろうか。
「他の階層か、何階に行きたいんだ?」
「違うよ、外だよ外。ダンジョンの外だよ」
唐突にどうしたのだろうか。まさか、家に帰りたくなっのかもしれない。もしそうならば、止めるのはなかなか難しいぞ。
俺がリムの真意を探っていると、リムの後ろからルセアが申し訳なさそうな顔で現れ、俺に近づき耳打ちした。
「申し訳ありません。リムちゃ、いえリムさんに冒険者であった時の話をしていると、どうにも興味を持ってしまったようでして…」
ああ、なるほどな。リムは基本的に文字通り外に関しての知識がない。それは今も昔も同じだ。
そのため、リムと違い神官として冒険者として外で生きてきたルセアの話に興味を持つことは当然だ。
リムからすれば全く知らないお伽話を聞いているような感覚だったのだろう。唯一おとぎ話と違うのは、その舞台となる場所が存在しており、すべて実話で体験できるということだ。
実際にお伽話と同じことができるとするなら、やりたくなるのも分かる気がする。
とりあえずそれはそれとしても、ダンジョンの外か…良いかもしれないな。
外の世界に関しての知識はルセアや他の捕らえた冒険者から多少得てはいるが、それには限界がある。
サーチ・モスキートで調べるのもありではあるが、行動範囲に制限がある上にルージュとの戦いで半数以上を失った。これ以上、あれを多用するのは危険だ。
それならば、実際に自分の足で行ってみるのは良い手だ。百聞は一見に如かずと言うしな。
「良し、外に行って見るか」
「ホント、やったぁ」
リムは飛び上がり、俺に抱きついてくる。外に行けるのが余程嬉しかったようだ。
「あの、カナデさん。外に行くのは良いんですけど、どうやって行くんですか。まさか、ダンジョンの入り口から堂々と出て行くわけじゃないですよね」
そうだ、しまった。アリシアの言う通りだ。現在このダンジョンは公にはなっていないが発見されている。
そんなダンジョンから出ていけば面倒なことになるのは免れない。最悪の場合は目撃者を全員殺せば良いが、その影響でダンジョン調査が早まるのは避けたい。
どうする、どうすれば良い。俺は一生このダンジョンから出られないのか。
「なんなら、私が飛ばしてあげても良いけど」
非情な現実を突きつけられていた俺にルージュが救いの手を差し伸べた。
「結界で人気のない場所に飛ばせば、誰かに見つかることもないでしょ」
完全に忘れていた。ルージュの持つ結界術のスキルには結界内のものを転移させる能力があるのだった。
最近、ぐうたらと紅茶を飲みながら俺やアリシアとトランプで遊んで過ごす姿や、リムと仲良くするルセアを嫉妬のこもった眼差しで見つめる間抜けな姿しか見ていなかったから、こいつが強力な力を持つ龍だと言うことが頭から抜けていた。
「せっかく外に行くなら王都とか良いわよね。王都の近くにある森になら、印を打ってあるから飛べるわよ」
神だ。ここに神がいる。あのだらしなく情けないルージュが神々しく見えてしまう。
「ルセア、王都の案内はできるか」
「事細かくは難しいですが、王都であれば幾度か行ったことがありますから、案内くらいであれば」
「決まりだ。リム、王都に行くぞ。アリシアも早速準備をしよう」
俺はリムを抱えて、アリシアに準備を急かす。行くと決まったからには、明日にでも行くつもりだからだ。
ルージュは急に慌ただしくなった俺たちを見て、椅子から立ち上がり背伸びをする。
「私も準備しようかしら。人間の国なんて久しぶりだから、ちょっと楽しみかも」
俺は楽しむ気満々なルージュに残酷な一言を告げる。
「お前は居残りだぞ」
「…へ?」
間抜けな反応をするルージュだが、これだけは決定事項だ。
「なんで?、なんで?」
「俺たちがこのダンジョンを離れれば戦力が減るだろ。ダンジョンコアも外には持ち出せないからここに置いて行くし、ないとは思うが万が一の時の為にお前を置いて行く。アレを除けば、このダンジョンの最高戦力はお前だからな」
「そ…んな…」
ルージュは怒りからか絶望からかわなわなとを身を震わせる。気の毒だが、仕方のないことだ。
その後、俺たちを恨めしげに睨むルージュに結界術を使ってもらい俺とアリシア、ルセアとリムは王都近くの森へと転移した。
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