第51話・娯楽と卵
前話の訂正コメントありがとうございます。
ダンジョンに迫る危険がまだ遠いことを知ってから数日が経った。アリシアの異常ともいえる甘えも鳴りを潜め以前と同じとはいかないが、ずいぶんとマシになった。
そして正式に仲間として受け入れたルセアは案の定リムと仲良くなり、頻繁に一緒に遊ぶようになった。今もリムの部屋で2人で遊んでいる。やはり年頃が近い者同士打ち解けるのも早いのだろう。
しかし、そうなればその輪から弾かれるのは幼女というにはいささか年を取りすぎたルージュだ。ルージュは見た目10代半ばといったところだが、実年齢は本人曰く容易く三桁を超えるらしい。
そんな大年増なルージュは幼い2人が楽しく遊んでいる間には入っていくことができず、俺とアリシアと共にトランプで大富豪をして遊んでいる。
俺はリムが膝にいないため、その代わりにルージュを呼びよせた原因である古龍の卵を膝に乗せて興じていた。
古龍の卵をあまりそばに置くことはなかったのだが、流石にルージュの前では粗末には扱えない。
卵から伝わるほんの僅かな胎動を感じながら、自分の手札からカードを選び取り出す。
「ルージュ、そう言えばさ」
「ん~、何?」
「卵返してやろうか」
俺は膝の上に乗せた古龍の卵を撫でながら、♠2を場に出す。
「卵って、その古龍の卵?」
ルージュは手札とにらめっこしていた顔を上げて、俺の膝の上にある卵を指さす。
「そうだ。当分はお前をこのダンジョンから出すわけにはいかないが、この卵くらいはお前に渡しておいてもかまわんだろう」
「案外優しいのね。私はまだ貴方に何も償えていないのだけれど」
ルージュは意外だといった様子で目を丸くする。
「お前の役目は戦力としてダンジョンを守ることだからな。それに関しては仕方ないだろう。それより返してやるよこの卵。これの産みの親はお前と浅からぬ関係なんだろ」
「ええ、その子の親は私の叔母にあたる人よ。つまりその子は私の従兄弟ってこと」
従兄弟か、思っていたよりも関係性が濃かったな。まさかそこまで近い血縁だとは思っていなかった。
それならあれだけ血眼で取り返そうとしていたのも頷ける。まぁ、相手の話を聞かないほど躍起になっていたには問題があったが。
「私、叔母さんとは結構仲が良かったのよ。だから卵が盗まれたって聞いてすぐに探し回ったわ。けど、なかなか見つからなくて叔母さんにもういいわって言われたんだけど、必死に探したのよ。そしたら、ほんの少しの間だけ卵の反応があったからそれが途切れたところに向かったらこのダンジョンだったってわけ」
アリシアがレプテンの屋敷から持ち出してから反応があったということは、あの屋敷か地下室には魔力や気配を遮断する何かしらの仕掛けがあったのかもしれない。
「そう言えば、ここに向かう前にお父さんに早まるなって止められていたんだけど、今思えば貴方のこと知ってたのかもね」
ルージュの父親、竜王か。同じ魔物の王として何かしら感知されているのだろうか。そう考えたら竜王だけでなく他の獣王や海王にも何か感づかれていると考えた方が良いな。
どちらにしても、ルージュをこのダンジョンに縛り付けている以上竜王とはいつか相まみえなければいけないだろう。
少なくとも娘に対して忠告をするくらいには大切に思っているようだしな。
「お前の従兄弟なら、なおさら俺よりもお前が持っていた方が良いだろ。何ならイブが持ってる残り2つの卵もお前に渡そうか?」
「う~ん、それは良いわっと」
ルージュは手札からJokerを取り出し、俺の出した♠2にかぶせる様にして場に出す。
「ぐっ…何でだ?」
俺は顔をしかめながらルージュへと問う。
「イブってあの蠍の魔物のことでしょ。そんなことしたら卵が孵らなくなるわ」
「えっ、龍の卵って温めなくても良いって聞いたからイブに渡してたんだけど、まずかったか」
「いえ、違うわ。今のままなら孵るってこと。貴方が持ってる子と違ってあの子たちは環境に適応し始めているから、今その環境を変えてしまうのは良くないわ。それにしてもこれだけ短期間で適応が始まるなんて、あの蠍四六時中卵のそばにいたんでしょうね」
イブには体に糸で貼り付けてあったからな。常に一緒にいたと言っても過言ではない。
「そうか、ならこれは渡しておくよ」
俺はそう言いながらルージュの元へと移動して卵を置く。
「良し、もうすぐ昼食の時間だな。俺がリムを呼びに行くとしよう」
俺がその場を去ろうとするとルージュが俺の腕を掴んで引き留める。
「待ちなさい。まだ勝負は終わっていないわよ。ほら、私はJokerを出したんだから貴方も何か出してみたら」
ルージュが憎たらしい顔で俺を挑発する。こいつ俺がその気になれば殺せること忘れてないか。まあ、そんなことしないけど。
俺が打つ手がなく歯がゆい思いをしながら顔をゆがめ、それをルージュがほくそ笑む。そんな状況をどう思ったのかは知らないが、アリシアが急に立ち上がる。
「それでしたら私が行きますよ。リムちゃんたちにご飯ですって言えばいいんですよね」
アリシアは穏やかな口調で話しながら、Jokerの上に♠3を重ねる。そして、残りの手札4枚、Qの革命を場に出し2階へと上がっていった。
「えっ…」
「ほぇ…」
俺とルージュは優雅に一抜けしたアリシアを見つめているだけだった。
大富豪のルールは日本大富豪連盟の連盟公式ルールを参考にしました。私の地元では5や7、10にも能力があったのですが、公式では能力のあるカードは少ないようですね。
次回更新遅れる可能性があります。
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