第33話・街の反応
このダンジョンへとリムを連れてきて1日が経った。そろそろ、レプテンの様子を見ることにした。
お馴染みのサーチ・モスキートを使い、ルルイエの街の状態を観察する。外壁を越え、上空に移動する前に街の様子が変わっていることが分かった。
門番の警備が前回よりもかなり厳しくなっている。門兵の人数も増え、念入りに持ち物の検査をしているようだ。
壁を越え、街の中の様子を見ると警備の厳しさは顕著になっていた。明らかに街を徘徊する兵の数が増え、道行く人の幾人かが職質検査のようなものを受けていた。
レプテンの屋敷の周りは警備がさらに厳しくなっていた。兵の数が前回の3倍以上に増え、人が行ったり来たりしておりずいぶんと騒がしい。
アリシアが脱出の際にあけた穴の場所には、布がかけられ隠されている。流石に1日では修復はできなかったようだ。
前回と違ってメイドが働いていないのか、窓の開閉がほとんどない。とはいえ、屋敷への人の出入りが多いため、侵入するのは容易だ。
屋敷へと入る兵と共に中へと移動する。屋敷の中も警備は厳しいが、文官のような兵以外の者をよく見かける。
前回ならゆっくりと歩いていた者たちだが、今では皆小走りであったり中には走って移動する者もいる。
非常事態ということが明らかだ。現状の詳細を知るにはレプテンの部屋に行くのが一番なので、前回の記憶をたどりながら部屋へと向かう。
部屋に近づくほど人の行き来が多くなり、部屋の前に来ると扉の前に幾人かが並んでいた。文官だけではなく、騎士のような者も並んでいた。
部屋に入っては数分で出て、また次の者が部屋に入る。その間に別の者が列に並ぶ、それを繰り返していた。
文官や騎士が部屋に入り、報告をするたびに部屋の中から罵声が聞こえる。扉越しにも声が聞こえるほどの大声だ。
よく見れば部屋の出入りが多いためか、扉がわずかに開いている。これならわざわざ部屋に入らなくても会話が聞こえそうだ。
扉の隣に張り付き、耳を澄ます。すると、レプテンと1人の男の声が聞こえてきた。
「……よると、侵入したものは魔物の可能性が高いと考えられます。ですから、闇ギルドが調教して飼っている魔物の可能性が高いです。情報をかぎつけた他の貴族が雇ったのかもしれません」
「で、見つかったのか」
「はい?」
「あのエルフは見つかったのかと聞いているんだ!」
「いえ…それはまだ」
「私はエルフを連れて来いといったのだ。もし、闇ギルドが関わっているのなら金を積んでエルフを取り返せ。魔物だろうが人だろうがなんでも使って、ここにエルフを連れてこい」
「は、はい。分かりました。すぐに実行します」
焦ったような声が聞こえ、男が部屋から飛び出るように退室した。そのまま廊下を走り抜けていった。
「おい、次の者は入れ」
部屋からレプテンの声が聞こえ、並んでいた次の者が入室した。
そして、先ほどのように報告をしてはレプテンに罵声を浴びせられ退室する。それを何度も繰り返した後、レプテンが疲れた声で言った。
「はあ、少し休憩する。次の者は指示があるまで待機しておけ」
そう言って、レプテンは報告を受けるのを止めた。待てば、報告は再開されるだろうが、先ほどまでの報告で大よその現状は分かった。
レプテンたちはリムの行方は全くつかめていない。闇ギルドが関わっているという事実とは全く違う報告が上がるほどに。
魔物が行ったという予測は上がっているようだが、それ以上の情報はつかめていないようだ。
しかし、それは仕方のないことだ。アリシアが残した犯行の跡は極めて少ないからだ。
アリシアは姿すら見られておらず、残された侵入の跡は殺した死体と別館に開けた大穴くらいだ。
そんなものから犯人を割り出すのは不可能だろう。少なくとも、ダンジョンの魔物が犯人だとは思わない。
これ以上、ここにいてもレプテンの罵声を聞くだけだ。早々に立ち去る事にしよう。
屋敷を出て、再び上空に移動して街を観察する。前回とは大きく違う光景がレプテンがリムのことをどれだけ重要視しているかが分かる。
アリシアは地下室で囚われていた魔物も殺したはずだが、それよりもリムのことが重要らしい。報告の中でもリムを取り戻すための会話ばかりで、魔物を殺したものを見つけるためではなさそうだった。
この様子ならばダンジョンへと調査隊を派遣する余裕はなさそうだ。その間にダンジョンの強化ができる。
とはいえ、魔物の構成は終わったからそこまで急用にすることはない。
となると、俺自身の強化でもしようかな。何気に俺自身が戦ったことはほとんどない。戦った経験といえばホーン・ラビットを刀で両断したくらいだ。
いい加減に王魔法を試してみたりしたい。
俺は次の目論見を考えながら、街の観察を終えた。
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