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第20話・侵入者 前編

 温泉から出て、着替えながら侵入者の詳細を聞いた。


 アリシアの部下である蜘蛛たちによれば、数は6人。4人ほどが鎧や剣も装着しており冒険者というより鎧を着た騎士のような姿をしているという。


 残り2人は神官のような装備の者と必要最低限の装備をした細身の文官のような者らしい。


「偶然見つけた者たち、というわけではなさそうだな」


「そうですね、偶然にしては装備が整いすぎですね」


「だな」


 このダンジョンの入り口付近の森は、そこまで危険ではない。


 前回、仲間探しをして森を散策したが、遭遇した魔物は百足竜以外では最高でもDランクの魔物にしか出会わなかった。


 Aランクの百足竜はおそらくあの森の主だったのだろう。この辺りの魔物が弱いからこそ、殺してもあまりLVが上がらずにあれだけ低かったのかもしれない。


 百足竜を除けば大した危険はないこの森に、あのような重装備は必要ない。もし、百足竜対策で装備を固めているのだとしたら、あの程度の装備では百足竜とは到底戦えない。


 百足竜に関して知っているのならば、もっと装備を整えるはずだ。そのことから考えると百足竜のことは知らないでこの森に来たことになる。


 そうなればあの装備に矛盾が生じる。本来この森では文官の男のような最低限の装備でも良いくらいだ。騎士たちのような装備は、この森では持て余す。


 となると、それだけの装備が必要なのは、どんな危険があるかわからないダンジョンに挑むからだと考えられる。


 この前の冒険者と違い騎士ばかりということは、貴族の子飼いの兵だろうか。


 とにかく、俺がダンジョンマスターになってから2組目の侵入者だ。


 1組目には、上層は容易く突破されてしまったが、今度はそうはさせない。そのために、今まで準備して来たのだから。


「頼むぜ、お前を見つけるのに苦労したんだからな」


 俺は虫かごから1匹の蚊を出した。



【種族】サーチ・モスキート

 Aランク下位の虫族魔物。魔力の繋がったものと聴覚、視覚で得た情報を共有できる。隠密能力がある上に動きが速く認識することは難しい。自然界では生息しておらず、生殖機能もない。



 この魔物は侵入者の索敵に使うためのものだ。アリシアによれば、この魔物は錬金術や魔術を用いて造られた人造魔物らしい。


 今は失われた技術で作られた魔物で、繁殖もできないため現存する個体はほぼいないようだ。


 にもかかわらず、なぜ俺がこの魔物を持っているのかというと先代のダンジョンマスターの遺産というやつだ。


 最深部の森に放っていたようで、アリシアにその話を聞いて必死で探した。


 繁殖ができないため数は増えたりはしないが、何かしらの事故で数が減ることはある。


 ただでさえ少ししか生み出されていなかったこの小さな魔物を見つけるのには、とてつもなく苦労した。


 逃げることはないはずだが、心配すぎて虫かごに入れたくらいだ。


 この魔物は魔力をつなげることで、この魔物が見ている風景や、聞こえる音を俺も知覚できる。


 こいつを侵入者の近くに配置して、その情報を得る作戦だ。


 大きさも普通の蚊よりも小さいくらいで、見つかる危険は少ない。


 ダンジョンコアが生み出せるものに、ダンジョン内の様子を見ることができる魔道具があるらしいが、ダンジョンコアの魔力量をかなり消費するらしい。


 ただでさえ、残り少ないというのにそんなものは生み出せない。その魔道具の代わりとして、サーチ・モスキートを使うのだ。


 早速、魔力をつなげて偵察に向かってもらう。思ったよりも侵入者が来るのが早く、あらかじめ入り口に配置するのが遅れた。


 しかし、この魔物は俊敏がかなり高い。1階層を突破される頃にはたどり着くはずだ。



 ☆☆ ☆ ☆



 サーチ・モスキートが侵入者の姿を捉えた時には1階層を突破され、2階層を進んでいるところだった。


 情報通り、人数は6人で間違いない。鎧などには目立った傷跡はなく、怪我を負っているものもいない。


 1階層にはパワーアントしか配置していなかったが、やはりパワーアントでは殺すのは難しそうだ。Fランクごときでは傷すらつけられていない。


 編成は文官のような男と神官を守るようにして騎士が囲むような形になっている。


 文官の男の方が身分が上らしく、騎士たちに指示しているいた。


「もっと早く進めんのか、こんな雑魚に手間取りおって!」


「そう言われましても、未開拓のダンジョンは何があるか分かりません。警戒して進まなければ危険です。


 そもそも私たちにダンジョンでの戦闘経験はありません。やはり、経験のある冒険者を雇った方が良いのでは…」


「うるさい!私に指図するのか。そもそも、冒険者を雇ったものの、前金を受け取り逃げられたではないか!」


「彼らは高名な冒険者たちです。人格も悪い話は聞きません。逃げたのではなく、このダンジョンに進入後消息を絶ったとの報告もあります。彼らでも敵わない者がこのダンジョンにいるかもしれないのです」


「もしそうだとしたら、奴らが名ばかりの者たちだったというだけだ。レプテン子爵様の兵であるお前たちなら問題なかろう?」


「……」


「ないとは思うが、もしこのようなダンジョンの魔物に遅れをとるようなら、即刻解雇してやるからな」


「…了解しました」


 騎士は項垂れ、とぼとぼと歩いていた。


 やはり、こいつらはこのダンジョンを攻略しに来ているようだ。攻略というよりも調査かもしれないが。


 会話を聞く限り、おそらくそのレプテン子爵とやらが冒険者を雇った貴族だろう。


 雇った冒険者が失踪したため、自分の兵を差し向けたということか。その失踪の原因はこのダンジョンなのだが。


 騎士たちはそれなりの実力はありそうだが、あの文官の男は戦闘経験は皆無だろう。


 上層の魔物では騎士を殺すのは難しい。どうにかして、運良くあの文官だけでも殺せないものか。


 可能性があるとしたら、一瞬でもいいから騎士の動きを止めて隙を作ることだ。


 奴らはまだパワー・アントとしか戦っていない。つまり、パワー・アントとの戦いに慣れてきているということだ。


 それを利用すれば、もしかしたら騎士の1人でも殺せるかもしれない。


 俺は作戦を行うべく、魔物たちへと指示を出した。


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