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第19話・魔石

 上層の大まかな魔物の配置は決まったが、注意すべきことがある。主体となるファイアー・ビーとパワー・アントは弱いことだ。そのため、侵入者を殺せるように他の魔物は多少強くした方が良い。


 しかし、一方的に殺すわけにはいかない。あくまでも不注意の事故、または少し実力が足りなかったという形で殺す必要がある。


 決して、このダンジョンで戦えば絶対に死ぬとか、絶対に突破できないという情報を持ち帰らせてはいけない。


 ダンジョンは魔力をダンジョン全体にいき渡らせるために下の階層に進めないようにはできない。つまり、入口から最深部まで確実につながっているということだ。


 魔物やトラップを使って最深部に侵入されるのを防ぐわけなのだが、殺されたくはないから階層が深くなればなるほど突破されにくくなる。


 中には突破不可能なトラップなんかを設置するものもいるらしいが、その情報が知れ渡ると攻略者の数はぐんと減る。


 これには明確な理由がある。そもそも冒険者がダンジョンを攻略するのはそれをするだけの利益があるからだ。


 代表的なものは魔物の素材、魔石、特殊な道具や武具が目的だ。


 魔石とは鉱物が魔力の影響を受けて結晶化したものだ。ダンジョンでは魔力が全域に満ちているため魔石ができやすい。


 ダンジョン以外では、魔力のたまりやすい強力な魔物の住処の近くなどに発生することがある。他にも意図的に鉱物に魔力を当て続けることで作ることもできる。


 魔石の用途は様々だ。代表的な用途は魔道具の燃料として使われることだ。前に冷蔵庫のような魔道具があるとアリシアに聞いていたが、そういった魔道具を動かすには魔石が必要だ。この世界における電気の代わりのようなものとして使われる。


 他には魔石は魔力をため込む性質があるため、魔法使いなどの魔力を多く必要とする者たちが杖などの媒体に埋め込み魔力を引き出すのに使う。


 また、見た目の美しさから宝石として扱われることもあるようだが、そんな使い方をするのは金持ちだけだ。


 魔石には純度というものがあり、魔石が魔力を浴び続けた期間によって純度が変化する。当然、その期間が長いほど純度は高くなる。


 純度が高いほどため込める魔力の量も多くなり、見た目も美しくなる。


 そして魔石は純度が最大まで高まると、その性質が変化する。魔力を受け続けることで魔力の伝達率が高い金属へと変化するのだ。


 その金属はミスリルといわれ、ミスリルを加工して作った武器は魔法を乗せることができる。


 この世界における希少な金属の代表例だ。当然、採取量も少なくその価値は計り知れない。


 また、魔石はミスリルとは違ったもう一つの金属にも変化する可能性がある。ミスリルとは違い魔力の伝達率がほぼ0になる代わりに、とてつもない硬度をもつオリハルコンだ。


 その硬さゆえに武器とすれば、ほぼ破壊不可能なものとなる。そのかわり、硬い分加工も難しく原石として出回ることの方が多い代物だ。


 このオリハルコンもミスリルと同じく高い価値がある。


 これらの魔石とは違い、特殊な武具や魔道具も冒険者たちがダンジョンを攻略する目的の1つだ。


 ダンジョンには死んだ冒険者の武器であったり、装備品であったりが転がっている。浅い層であれば、それらはすぐに他の冒険者たちが持ち帰ってしまう。


 しかし、深い層で冒険者が死ねば、新たな冒険者たちはそこまでたどり着くことは少ない。その間に、ダンジョンの魔力を受けて装備品が特殊な力を宿すことがある。


 こういった物は深層まで行ける実力のある冒険者が手に入れる機会が多いため、そのまま上級冒険者が自らの武器として使っていたりすることが多い。侵入者のA級冒険者が持っていた黒い大盾もこの類のものだった。


 これらのものが冒険者がダンジョンに潜る理由であり、より深層であるほどにこれらが見つかる可能性やその価値が上がる。


 だからこそ、これ以上進めない状況を作ってしまうと深い層へと潜る上級の冒険者はダンジョンに来なくなってしまう。そのため、攻略不可能だと感じさせる仕組みの情報は持ち帰らせてはいけない。


 こういったことを知った風にいったが、実際は全部教えてもらったものだ。


 ミスリルやオリハルコンの知識はアリシアから教えてもらったものだが、彼女の知識は少なくとも500年前のものだ。


 そのため、これらの知識のほとんどが捕らえた冒険者から引き出したものだ。現役の上級冒険者の知識であるため、間違いはないはずだ。


 これらのことを考えると、このダンジョンには魔物素材しか価値あるものがない。虫の魔物の素材が取れるダンジョンはここしかないため、他のダンジョンよりは素材の価値は高い。


 しかし、やはり魔物の素材だけでは足りない。他の要素はこれからダンジョンを運営していけばやがて用意できるものだが、魔石くらいはある程度の数を設置したい。どこかにないものか…。



 ☆ ☆ ☆ ☆



 はっきり言って、魔石はすでにダンジョンにあった。


 魔石はダンジョンだけにしかないものではない。魔力が留まる上位の魔物の巣にも発生する。ということは、このダンジョンにいるAランクの魔物たちの巣にはもちろんある。


 特にAランク中位以上の魔物の巣には、ミスリルやオリハルコンまであった。さすがにこれを設置するのはもったいないので、こちらで活用させてもらうことにした。


 手ごろな魔石をいくつか上層に埋めることにした。しかし、ただ埋めても不自然に見えてしまう。そういう時には魔物を使う。



【種族】サンド・クリケット  ランクC

 Cランク下位の虫族魔物。土の中を掘り進み、敵を土中に引きずり込む。陸上での戦闘は苦手。



 こいつは要するに螻蛄(オケラ)だ。勿論サイズは大きく1メートル近くはある。この魔物は土魔法が使えるため、上層の壁に埋め込む魔石を自然に見せるようにしてもらった。


 ダンジョン内の魔物のためにも、光苔のほうも何とか用意した。敵が見えずに戦えないなんてことは起こしたくない。


 大まかなダンジョンの準備が整い、また温泉でくつろいでいるとアリシアが駆け込んできた。


「カナデさんっ、侵入者が来ました!」


「おいおい、もうちょっとゆっくりさせてくれよ」


 俺は温泉から上がり、詳細を聞くことにした。


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