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冤罪令息、本日も論破します  作者: みかん


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第42話 操られた者たちの証言

◆帰還の報告


聖都から戻った慎は、ヴェルナの、四か国連合の本営で、緊急の協議を、招集した。


集まったのは、レオンハルト、ロイド、オルグレン侯爵、そして、ミレス、ラーセン、デミアの各国代表。加えて、協力者として、ヴァルクスも、同席した。


慎は、禁書の間で得た、真実の全てを、語った。


声の術。それを刻んだ、古の賢者たち。疲れ果てた魂を選んで招き、確信を持つ者ほど深く操るという、その仕組み。そして、術を終わらせるには、ヴェルナの祭壇のさらに地下にある、術の核の石を、砕くしかないこと。


だが、それを砕けば、二度と、転生者は、この世界に、来られなくなること。


協議の場は、重い沈黙に、包まれた。


「……にわかには、信じがたい話だ」


最初に口を開いたのは、ラーセンの代表だった。


「声だの、術だの。我々は、これまで、財産の掌握だの、権力の簒奪だのと、現実的な陰謀を、相手にしてきた。だが、今の話は——まるで、おとぎ話だ」


その反応は、当然だった。慎自身、もし他人からこの話を聞かされたら、同じように、疑っただろう。


「信じがたいのは、承知しています」


慎は、静かに、言った。


「ですが、これは、事実です。そして、それを、証明できる者が、ここにいます」


慎は、ヴァルクスを、見た。


「ヴァルクス殿。あなたは、議長として、禁書の間に、入ったことがある。あの部屋の、石板の記述が、事実かどうか。あなたなら、証言できるはずです」


ヴァルクスは、ゆっくりと、立ち上がった。


各国代表の、疑いと、敵意の混じった視線が、彼に、集まった。当然だった。ヴァルクスは、彼らの国々に、多大な被害を与えた、張本人なのだ。


だが、ヴァルクスは、その視線を、正面から、受け止めた。


「私は、エルト・ヴァルクス。あなた方の国々に、償いきれぬ罪を、犯した者です」


ヴァルクスは、静かに、切り出した。


「その私が、何を言っても、信じてもらえないかもしれない。ですが、これだけは、私の魂に誓って、申し上げます。ヴァンディアール殿が語った、声の術は——実在します」



◆ヴァルクスの証言


「私は、四十年前、この世界に来ました」


ヴァルクスは、語り始めた。


その声には、これまで慎が聞いてきた、どの言葉よりも、深い、実感が、こもっていた。


「前世で、私は、貧困と戦う仕事をしていました。世界を、少しでも良くしたいと、本気で、思っていました。そして、その志のまま、過労で、倒れた」


各国代表は、静かに、聞いていた。


「気がつくと、私は、ヴェルナの、若い聖職者の身体の中に、いました。最初の数年、私は、ただ、この世界に、慣れることに、必死でした。世界を変えようなどという、大それた考えは、ありませんでした。私は、ただ、目の前の、貧しい人々を、助けたかった。前世と、同じように」


ヴァルクスの声が、わずかに、震えた。


「変化が、始まったのは、私が、聖都の議員になり、初めて、禁書の間に、入ったときからです」


「その部屋で、何があったのですか」


レオンハルトが、問うた。


「石板を、読みました。降る者について。世界の岐路について。そして、その部屋を、出た夜から——」


ヴァルクスは、目を、閉じた。


「囁きが、始まったのです」


協議の場が、静まり返った。


「最初は、ごく、かすかなものでした。世界を変えなければならない、という、思い。それは、あまりに自然に、私の中に、溶け込んでいたので、私は、それを、自分自身の意思だと、疑いもしませんでした」


「疑わなかった」


慎が、静かに、言った。


「はい。私は、確信していました。この世界の、不正な構造を、変えることこそが、私の使命だと。前世で果たせなかった理想を、この世界で、実現するのだ、と。その確信が、強ければ強いほど——今思えば——声は、深く、私の中に、根を張っていったのです」


ヴァルクスは、目を開け、慎を、見た。


「ヴァンディアール殿に、初めて会ったとき、私は、彼が、私と同じ、降る者だと、すぐに分かりました。そして、彼と話して、混乱しました。彼は、私と同じ立場から来たのに、世界を変えようという、あの衝動を、まったく、持っていなかった。なぜ、この男には、声が、届いていないのか。それが、私には、理解できなかった」


ヴァルクスは、続けた。


「今なら、分かります。彼は、常に、自分を、疑っていた。自分の判断が、間違っているかもしれないと、恐れていた。その疑いが、声を、拒んでいたのです」


ヴァルクスは、各国代表を、見回した。


「私が、なぜ、道を誤ったのか。それは、私が、悪人だったからではありません。私が、自分の正しさを、確信しすぎたからです。そして、その確信を、声に、利用されたからです」


「では、お前は」


ミレスの代表が、鋭く、問うた。


「己の罪を、声のせいにする、というのか。操られていたのだから、罪はない、と」


その問いに、場の空気が、張り詰めた。


ヴァルクスは、静かに、首を振った。


「いいえ。私の罪は、私の罪です。声に、囁かれたとしても、実際に、手を下したのは、私です。多くの人を欺き、傷つけたのは、私自身の、選択です」


ヴァルクスは、深く、頭を下げた。


「私は、償います。どのような裁きも、受け入れます。ですが——」


顔を上げた、ヴァルクスの目には、切実な、光があった。


「私は、次の、降る者が、私と同じ道を、辿ることだけは、避けたい。声に操られ、罪を犯し、そして、壊されていく。そのような悲劇を、繰り返させたくない。だから、私は、証言します。声の術は、実在する、と」


協議の場は、長い、沈黙に、包まれた。


ヴァルクスの証言には、演技では、決して出せない、真実の、重みが、あった。



◆コルネリウスの言葉


「もう一人、証言できる者がいます」


慎は、言った。


「コルネリウスです。彼は、声に、最も深く、操られていました。そして今、その支配から、解放されている。彼の証言は、ヴァルクス殿の証言を、裏付けるはずです」


慎の提案で、コルネリウスが、厳重な監視の下、協議の場に、連れてこられた。


かつて、大陸を支配しようとした男は、今、憔悴しきった姿で、代表たちの前に、立った。


「コルネリウス」


慎は、静かに、問うた。


「あなたが、聞いていた声について、この場の、皆に、語ってください」


コルネリウスは、うつろな目で、代表たちを、見回した。


「……信じないだろうな。だが、話す」


コルネリウスは、語り始めた。


「私は、ヴェルナの丘で、目を覚ました。前世の記憶は、ない。ただ、疲れ果てていた、という感覚だけが、残っていた。そして、目を覚ましてから、しばらくして——声が、聞こえ始めた」


コルネリウスの声は、平坦だった。感情の、抜け落ちた声だった。


「支配せよ。統べよ。その声は、私の、全てになった。私は、疑わなかった。疑うという、発想すら、なかった。声の言うことが、私の意思だと、完全に、信じていた」


コルネリウスは、自分の、両手を、見た。


「私は、聖都で、権力を握った。ヴァルクス様を、裏切り、排除した。全ては、声の、導きのままに。私は、自分が、正しいと、確信していた。その確信が、あればあるほど、私は、迷わず、進めた」


コルネリウスは、顔を上げた。その目に、初めて、感情——深い、後悔——が、浮かんだ。


「そして、あの地下で。ヴァンディアール殿に、問われた。お前は、本当に、自分の意思で、動いているのか、と。その瞬間、初めて、私は、自分を、疑った」


コルネリウスの声が、震えた。


「疑った瞬間、声が、消えた。そして、私は、気づいた。私が、これまで、してきたこと。それが、私自身の意思では、なかったこと。私は——」


コルネリウスは、言葉を、詰まらせた。


「私は、空っぽの、器だった。声に、満たされていた間だけ、私は、目的を持って、生きていた。声が抜けた今、私には、何も、残っていない。私が、本当は、誰だったのか。前世で、何を、望んでいたのか。何も、思い出せない。何も、分からない」


協議の場は、水を打ったように、静まり返っていた。


コルネリウスの言葉は、糾弾されるべき、大罪人のものだった。だが、そこに滲む、深い、空虚と、喪失は、聞く者の胸を、締めつけた。


「私は、裁かれるべきだ」


コルネリウスは、静かに、言った。


「私が、してきたことの責任は、私が、負うべきだ。だが、一つだけ、皆に、知ってほしい。あの声は、実在する。そして、それは、疲れ果てた者を、選んで、呼び寄せ、確信を持つ者を、操る。私は、その、犠牲者であり、同時に、加害者だ。次の誰かが、私と、同じにならないように——どうか、この声の術を、止めてほしい」


コルネリウスは、深く、頭を、垂れた。


その姿を見て、レオンハルトが、静かに、口を開いた。


「……信じよう」


レオンハルトは、言った。


「二人の証言は、演技では、出せないものだ。声の術は、実在する。それを、前提に、議論を、進めよう」


各国代表も、一人、また一人と、頷いた。


慎は、その様子を見て、少しだけ、安堵した。


(信じてもらえた。これで、次の議論に、進める)


だが、その次の議論こそが、最も、困難なものだった。



◆砕くか、残すか


「では、議論の、核心に入ろう」


レオンハルトが、言った。


「ヴェルナの祭壇の、地下にある、術の核の石。それを、砕くべきか、否か」


慎は、改めて、選択の、二つの側面を、整理して、示した。


「石を砕けば、声の術は、終わります。二度と、転生者は、操られない。これまでのような、悲劇は、繰り返されない。これが、砕くことの、利点です」


慎は、続けた。


「ですが、石を砕けば、転生者を招く力も、失われます。この世界は、二度と、転生者を、招けなくなる。世界が、本当に、危機に陥ったとき、それを正すために来るはずの、転生者が、来られなくなる。これが、砕くことの、代償です」


代表たちは、それぞれ、考え込んだ。


最初に、意見を述べたのは、オルグレン侯爵だった。


「率直に言おう」


侯爵は、老練な政治家らしい、冷静な口調で、言った。


「私は、砕くべきだと、思う。転生者を招く力など、なくてもよい。これまで、何人もの転生者が、この地に招かれ、そして、操られ、大陸を、混乱させてきた。ヴァルクス殿の四十年の計画も、コルネリウスの簒奪も、元を辿れば、この術が、原因だ。この力は、世界にとって、益より、害の方が、大きい」


その意見に、ラーセンの代表が、頷いた。


「同感だ。得体の知れない力を、この世界に、残しておくのは、危険すぎる。砕くべきだ」


だが、ミレスの代表は、異論を、唱えた。


「待たれよ。事は、そう単純では、ない」


ミレスの代表は、慎重に、言った。


「石板には、こうあったのだろう。世界が、真に危機に陥ったとき、それを正すために、転生者が来る、と。ならば、過去に招かれた転生者の中には、世界を、救った者も、いたのではないか」


慎は、その指摘に、はっとした。


(そうだ。ヴェルナの老人も、言っていた。過去に現れた転生者の中には、街を豊かにした者も、いた、と。建国の英雄の一人も、転生者だった、という記録も、あった)


「その通りです」


慎は、言った。


「過去には、この世界を、良い方向に導いた、転生者も、いました。声に操られず、正しく、その知恵を使った者が。もし、石を砕けば、そういう、未来の、可能性も、失われます」


議論は、紛糾した。


砕くべきだ、という声。残すべきだ、という声。それぞれに、理があった。


慎は、その議論を、聞きながら、じっと、考えていた。


(これは、答えのない、問いだ)


前世の監査は、常に、正解があった。不正か、否か。事実か、虚偽か。積み上げた証拠が、必ず、一つの答えを、指し示した。


だが、この問いには、正解が、ない。


救いを取るか、可能性を残すか。それは、価値観の、問題だった。何を、より重んじるか、という。事実の、問題ではなかった。


(僕の、得意な戦い方が、通用しない)


慎は、初めて、自分の武器が、無力であることを、感じていた。



◆問われる者


「ヴァンディアール殿」


議論が、行き詰まったとき、ベネディクトが——聖都から、この協議のために、駆けつけていた——静かに、口を開いた。


「あなたは、どう、思われますか」


全員の視線が、慎に、集まった。


慎は、すぐには、答えられなかった。


(僕は、どう思う)


石板には、こう書いてあった。選ぶは、後の世の、降る者に、委ねる、と。


つまり、この選択は、本来、慎のような、操られない転生者に、委ねられていた。数百年前の、最後の賢者が、託した、選択。


慎は、深く、息を吸った。


「……正直に、申し上げます」


慎は、言った。


「僕には、まだ、答えが、ありません」


代表たちが、意外そうな、顔をした。これまで、常に、明快な答えを、示してきた慎が、答えを、持っていない、と言ったのだ。


「この選択は、事実の問題では、ありません。価値観の、問題です。救いを重んじるか、可能性を重んじるか。そこに、唯一の正解は、ありません」


慎は、続けた。


「僕が、恐れているのは、僕が、独断で、この選択を、下すことです。石板は、この選択を、僕のような者に、委ねると、書いていました。ですが、僕が、それを、僕一人の判断で、決めてしまえば——」


慎は、ヴァルクスを、見た。


「それは、ヴァルクス殿が、犯した過ちと、同じになります。自分の判断こそが、正しいと、確信して、世界の未来を、独断で、決めてしまう。それこそが、声の、思う壺かもしれない」


ヴァルクスの目が、見開かれた。


「僕は、この選択を、僕一人では、下しません」


慎は、はっきりと、言った。


「四か国と、聖都と、そして、この世界の、多くの人々の、声を聞いた上で、決めたい。時間は、かかります。ですが、これは、この世界の、未来を、決める選択です。急いで、独断で、決めるべきでは、ありません」


慎は、代表たちを、見回した。


「一つ、提案があります」


「なんだ」


レオンハルトが、問うた。


「術の核の石は、当面、砕きません。ですが、ヴェルナの祭壇と、その地下は、四か国と聖都が、共同で、厳重に、管理します。誰も、二度と、この力を、悪用できないように。声の術が、次の誰かを操れないように」


慎は、続けた。


「そして、砕くか否かの、最終的な判断は、時間をかけて、下します。次に、転生者が現れる、兆しがあれば、そのときに、改めて、議論する。それまで、この選択は、保留とする」


「保留、か」


オルグレン侯爵が、腕を組んだ。


「決断を、先延ばしにする、ということか。それは、優柔不断では、ないのか」


「いいえ」


慎は、静かに、しかし、確固として、答えた。


「これは、逃げでは、ありません。この選択の、重さを、認めることです。答えのない問いに、無理に、答えを出そうとすれば、必ず、どこかに、歪みが、生まれる。ヴァルクス殿も、コルネリウスも、答えを、急ぎすぎた。だから、道を誤った」


慎は、言った。


「僕は、迷い続けます。この問いに、迷い続けることこそが、僕にできる、最も誠実な、答えです」


議論の場に、静寂が、落ちた。


そして、その静寂を、破ったのは、ヴァルクスの、静かな声だった。


「……見事です」


ヴァルクスは、深い、感慨を込めて、言った。


「四十年前の私が、あなたのように、迷い続けることが、できていたら。答えを、急がず、独断を、避け、多くの声を、聞くことが、できていたら——私は、道を、誤らなかったかもしれない」


ヴァルクスは、慎を、見た。


「あなたの、その迷いこそが、声の術を、超える、力なのです」


慎は、その言葉を、静かに、受け止めた。


(迷い続けることが、力になる)


それは、皮肉な、真実だった。


強さとは、確信を持ち、迷わず進むことだと、多くの人は、思っている。だが、この事件が、教えたのは、逆だった。迷い続け、自分を疑い続けることこそが、最も、強い。最も、自由なのだ。


レオンハルトが、頷いた。


「……ジルの、提案を、採る。術の核は、当面、保留。ヴェルナの祭壇は、四か国と聖都で、共同管理。最終判断は、時間をかけて、下す。異存の、ある者は」


代表たちは、互いに、顔を見合わせた。


そして、一人、また一人と、頷いた。


答えのない問いに、無理に答えを出さない。その選択を、この場の、全員が、受け入れた。



◆コルネリウスの願い


協議が、終わり、コルネリウスが、監視の下、連れ戻される、その直前。


コルネリウスは、慎の方を、振り返った。


「ヴァンディアール殿」


「はい」


「一つ、頼みがある」


慎は、コルネリウスの、前に、立った。


「なんですか」


コルネリウスは、しばらく、迷うように、視線を、さまよわせた。そして、静かに、言った。


「私が、前世で、誰だったのか。それを、知りたい」


慎は、その言葉に、胸を、突かれた。


「私は、空っぽだ。声に、満たされていた間だけ、目的があった。今は、何も、ない。だが、私にも、前世が、あったはずだ。誰かを、愛し、何かを、望み、そして、疲れ果てて、死んだ、一つの、人生が」


コルネリウスの声が、震えた。


「私が、裁かれる前に、せめて、私が、本当は、誰だったのかを、知りたい。私が、ただの、声の、器ではなく、一人の、人間だったことを、確かめたい」


慎は、コルネリウスの、その願いに、深く、心を、動かされた。


(この男は、大陸を支配しようとした、大罪人だ。だが、その根源には、こんな、切実な、願いが、あった。自分が、人間であったことを、確かめたい、という)


「……分かりません」


慎は、正直に、答えた。


「あなたの、前世の記憶は、失われています。それを、取り戻せるかどうか、僕には、分かりません。ですが——」


慎は、コルネリウスの、目を、見た。


「あなたが、今、そう願っていること。自分が、人間だったと、確かめたいと、願うこと。その願いそのものが、あなたが、ただの器ではなく、心を持つ、一人の人間である、証拠です」


コルネリウスの、目に、涙が、滲んだ。


「……そうか」


コルネリウスは、静かに、言った。


「そうか。私は、まだ、人間、なのか」


「はい」


慎は、静かに、頷いた。


「あなたが、犯した罪は、償わなければなりません。ですが、あなたは、人間です。そして、人間である限り、あなたには、やり直す、可能性が、あります」


コルネリウスは、しばらく、慎を、見つめていた。


そして、深く、頭を、下げた。


「……ありがとう」


それは、大陸を支配しようとした男が、初めて、口にした、感謝の言葉だった。


コルネリウスが、連れ去られた後、慎は、しばらく、その場に、立ち尽くしていた。


(声は、人から、迷いを奪い、そして、人間性を、奪う。だが、迷いを取り戻せば、人間性も、戻ってくる)


慎は、思った。


(僕が、戦っているのは、声そのものではないのかもしれない。僕が、守ろうとしているのは、人間が、迷い、悩み、後悔する、その、弱さそのものなのかもしれない)


弱さこそが、人間を、人間たらしめる。


その、逆説的な真実を、慎は、この戦いの中で、深く、学んでいた。


窓の外、ヴェルナの空に、日が、傾き始めていた。


答えのない問いを、抱えたまま。だが、その問いに、迷い続ける覚悟を、胸に。


慎の戦いは、まだ、続いていく。


(第43話に続く)


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