陰キャサッカー(後編)
カスの学園小説を書こう
第二話「陰キャサッカー(後編)」
…「学園内人気投票」
それは
全生徒間で互いに行われる、完全匿名の人気投票である
恋愛友情尊敬畏敬…理由は何でもよく自分の好きな相手に投票する。
持ち点は各自5ポイント
振り分けは1人に5ポイント投票してもいいし、5人に1ポイントずつ分けてもいい
誰しもが
「人気なんかのために頑張るのはどうなのか」と、軽蔑し
「人気のないものを吊るし上げて何が楽しいんだ」と、憤り
「人気なんてそのひとのすべてじゃないんだ」と、無視を自分に宣誓し
結局はその魔力に抗えず
その公開処刑に参加してしまう
自分がどう周りに思われているか気にならない人間などいないのだ
もし周りのことなんか考えないぜなんて言ってる奴がいたら、そいつは「キャラなんて考えない無愛想だが偽りのない」
「キャラ」だと思われようとしているだけなんだ
「そして…」
その先を聞いた
三郎は膝をつく、肩を落とす、喉が詰まる感触を感じる、目頭が冷えて緊張する
彼は分かりやすく萎縮した
「アンチ票」
各自5点ずつ与えられたこの得点はその1点でマイナス1点換算である
0点のCを基準にSからEまでこの学園の生徒はランク分けされるのだ
本来三郎のような虫には、ダンゴムシのような三郎には目立たぬ日陰が賢明である
好かれる要素のない虫は
目立てば目立つほどに匿名のアンチ票でランクを下げられ、
まさしく便所虫のような気分で学園生活を送るハメになるだろう
「わかったかしら、新入生」
「例の童話の醜いアヒルの子、
あれは格上が格下のコミュニティに紛れ込んでいるの」
「場違いに紛れ込むのがあなたじゃあ、
格下陰キャのあなたじゃあ」
「お話が成り立たないのよ」
「…ありがとうございます先輩」
「マゾヒストなの?」「…」
「そうじゃなくて、教えてくれて」
「それはどういたしまして」
「そら卓球部でも入ってらっしゃい、あいつらには私が話をつけとくから」
「それは…」それは…
そんなことをしなくても
僕のことなんてどうせ誰も覚えてないからいいですよ
そういいかけて三郎は言葉を飲み込んだ
いいのかこれで?
ここで忘れられていいのか?
いや
いやいやいやいやいや
いやいやいやいやいやいやいやいやいや
ダメだった筈だ
すべては僕の…!!!
「僕は…」
「…?」
「それでもやっぱりサッカー部に入りたいんです」
「高校デビューがしたいから!」
ドン!
やはりありきたりな効果音であり、これまたありきたりな動機にはぴったりである
「…」「フッ」「くっはっはっはっは」
人の決意を腹から笑う悪い女、しかし鼻で笑われるよりは幾らか気分がマシなのかも
「まぁ私に強制力があるわけじゃないし好きにしたらいいんじゃないの」
「ちなみに私のランクはD」
「…やっぱりですか」
「何がやっぱりなのかな?」
こういうところがやっぱりである
急ぎ足でグラウンドに向かう
覚えられてるか否か、どちらにせよやるしかない
ここから僕の青春が始まるのだ
ーーーーー第二話完…嘘である!
「蜉蝣症候群」
三郎が抱える秘密で不治の病
その病気にかかったものは成人と同時に死ぬ運命
三郎の本当の目的は自分の葬式に一人でも多くの人を呼び込むこと
最後で最期の青春が始まるのだ
何だこのカスの学園小説は!




