二月十三日。
あと一日たてばバレンタインデーだと言うことは知ってるけど。あいにくオレにはそんな予定もなく。むしろ今日よりも明日の方がインパクト強いんだろーな。
昼休みの教室で。窓の外を見ながらそんなことをぼーっと考える。ついでに、明日のオレは一体どこで何をしているんだろうとも考える。単に同じことの繰り返しの気もするけど。ほぼ誰にも気づかれることなく授業を終え、帰宅して。夕飯を作って食べる。もしかするとケーキくらいあるかもしれない。今日の残りかもしれないけど。
「どうしたの?」
クラスの女子の声にふいに現実にもどされる。なんでもない、考えごとしてただけと返すと彼女は不思議そうに小首をかしげて遠ざかってしまった。
「ほしいよな」
率直な願いは虚しく空にとけて。明日じゃなくてもいいから。来年、いや数年後でもいいからオレに明るい未来を! そんなことを願いながら午後の授業にのぞんだ。
そして時は流れて。
「はい」
目の前にさらされたのは赤い包み。ご丁寧に銀色のリボンがかけてある。
「なに、これ」
長方形のそれは、片手で持つには大きく両手で持つには小ぶりの大きさで。
「一日早いけどできたから。いらなかったの?」
「いります。ものすごくいります!」
眉根を寄せた彼女にとられまいと必死で包みを奪いとる。手違いだったと言われても絶対返さない。返してなるものか。
必死ですねえという声も無視して包みを開けると白い箱が。その中には念願の茶色の固形物。
「ついに……ついに!」
何とは聞くことなかれ。義理だろーが別のものだろーが、もらって嬉しくないはずがない。
「これって手作り?」
だとしたらものすごく嬉しい。期待をこめて問いかけると『うん。あなたのお師匠様の』と言われ、迷わず箱ごと地面に叩きつけようとして──止められた。
「半分嘘よ。そんなに動揺しなくてもいいでしょ」
「動揺するわ!」
何が悲しくて大の男が作った菓子を食べなきゃならねーんだ。少しくらい夢をみさせてくれ!
「半分って何」
ジト目で聞くと、あなたのお師匠様から作り方を教わったのという返事。男に、しかもあいつに料理を教わるのはどうかと思うけど叩きつけなくてよかったと安堵した。
「もうひとつあるんだけど」
だから。あとのことにはノータッチだった。
「昇」
首にかけられたのは真新しいマフラー。それは手作りじゃなかったけど。
「誕生日おめでとう」
はにかんだ顔がまぶしくて。こっちの方が、言葉が。チョコよりも何倍も嬉しかった。
それは、ほんの数年先の未来のお話。
旧自サイトの名前かつ苦労人の誕生日記念と言うことで。当時は『椎名かざな』と言う名前でやってました。
サイト名は『二月十三日。』今のサイト名は『五月十八日。』作者の安直さがよくわかります。日はまたいでないのでぎりぎりセーフと言うことで。




