第七十三話 腹立ち紛れに後ろから斬りかかった
俺は手についた細かい白髪を、手をパンパン言わせて払うと、外に足を向けた。
洞窟の通路には、ほぼ等間隔に青い炎を宿した松明が設えられており、どう考えてもこの松明を目印に進めば、外に出られるに違いなかった。
歩き始めて、三分くらい経過したところで、ドタドタと複数の靴音が聞こえてきた。加えて、ガシャガシャという金属音めいた音が耳にうるさかった。
「ちぃ、めんどくせぇ、あいつらの仲間か……? いいだろう剣の錆にしてくれる……」
騙され、此度のクエストが徒労に終わり、挙句、前髪のほとんどを失った泣きっ面に蜂状態の俺は、虫の居所がすこぶる悪かった。
俺は剣を出現させると、左手にあった大きな石筍の陰に隠れて息を潜めた。
ややあって、やや荒い息づかいが鮮明に聞こえてきた。
今だ!
そう思って、陰から踊り出すやいなや、「覚悟! 前髪の仇!」と叫んで、手近にいった一人に腹立ち紛れに後ろから斬りかかった。
直後、ガキんと硬い音が通路に轟いた。
眉を寄せてから繁々見ると、両手で持った長剣で、フルプレートの騎士が俺の斬撃を受け止めていた。
背後には、よく似た格好のやつが二人いて、兜のスリットの奥から投げた視線を俺に釘づけにしていた。
最初、黒尽くめではなかったから、やつらの仲間ではないのか、と考えたのだが、老人と老婆が身をやつして俺を欺いたことを思い出すと、急に腹の辺りがカッと燃えるような感じがした。
その熱に焚きつけられるように、脳を怒りに支配された俺は叫んだ。
「騎士にまでなりすましてんのか! この嘘つきどもが!」
言って、剣を自慢の怪力で持って振り抜くと、俺の斬撃を受け止めたフルプレートを剣ごと吹っ飛ばした。
吹っ飛ばされたフルプレートは、背後の二人を巻き込むかたちで、派手な音を鳴らしながら、地面に転がった。
その折り重なったフルプレートたちに向かって、俺は左の人差し指を向ける。
そうして、言い募るように魔法名を立て続けに口にした。
ウォーターバレット——水魔法の弾丸が何発も彼らに撃ち込まれた。
間もなく土煙が彼らを覆い隠す。
なす術もなく、やられたフルプレートたちがおかしくておかしくて堪らず、俺は瞑目し哄笑した。
「弱えええええ! ギャハハハハ!」
と、次の瞬間、チクリという軽い痛みを覚え、俺は笑うのをやめて、冷や汗を垂らした。
目を開けるフルプレートたちは俺を取り囲み、切先を俺の喉、左頬、首筋に軽く突き立てていた。
「サー……武器を手放してもらえますか?」
喉を掴んでいる前方のフルプレートに低い声で言われ、それを呼水に俺の熱は急速に冷め、ほどなくして消えた。
眦が裂けんばかりに目を剥いた俺は、「はい」と口に出すと、剣を取り落とし、自然おもむろに両手をあげた。




