表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【5万pv】ありあけの月 小話集【感謝申し上げます】  作者: 香居
松笠菊の花に寄せて ──保元三年(1158)葉月

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

65/67

五話




「さて」


 義兄上が重々しい空気を変えるかのように、改まったお声を出された。


「これを」


 手渡されたのは、未草(ひつじぐさ)

 小さな白い花だった。


「花言葉は知っているかな?」

「確か……『純真』でしょうか」

「そうだね。『清純な心』という意味もあるのだよ」

「覚えておきます」

「素直で良いね。これには、千歳様からお言葉も賜ったのだよ」

「……私に、ですか」

「そなた宛てゆえ、そうなるね」


 義兄上は目を優しく弓なりにして、こう仰った。


「『陽は昇りて、未草を見んとす』」


 ──私が天皇()となった暁には、未草のように清純な心を持つそなたに会おう──


「…………」


 義兄上を介した千歳様のお言葉に、とっさに返答ができなかった。


「少々、驚かせすぎたかな?」

「…………少々どころではごさいませぬ。心の臓が止まるかと……」


 気遣わしげながら、いたずらっ子のような表情をなさる義兄上に悪態をつくことで、ようやく思考が戻ってきた。


「ふふ。それは、すまないことをしたね」

「笑いごとではありませぬ。何故私が、千歳様のお言葉を賜ることとなったのですか」

「私が事あるごとに、そなたの話をしていたから、かな」


 爽やかに仰る義兄上のお顔を拝見すれば、兄バカ全開の自慢話をなさったのだろうということは、想像に難くない。


「……義兄上」

「そんな冷めた目をせずに、笑っておくれ」

「できませぬ」


 立身出世を望む者ならば、大いなる誉れとなるだろう。だがあいにく、私は義兄上たちの補佐をしたいだけだ。

 職務のために、ある程度の地位の方に目をかけて頂くことは、今後必要になるかもしれない。だが、それは最高位の方でなくても良いと思う。

 先人たちを見ればわかるではないか。「分不相応な望みは身を滅ぼす」とな。


「難しく考えずともよい」


 父上が優しく仰った。


「千歳様の今のお立場で、直にそなたに接触すれば深読みする輩もおるゆえな。第一、政治的なことが絡んでくれば、朝長も花の橋渡しなど致すまい」


 ……確かに、父上の仰るとおりだ。


「私が浅慮でございました」

「いや。多方向から考えを巡らせるのは、大事なことぞ」


 此度は朝長の日頃の行いが、そなたに杞憂を与えたのだとお笑いになる父上。

 義兄上は「ひどい仰りようですね」と嘆くふりをなさる。

 私の心をほぐそうと、お二方はお心遣いくださった。


 しばらくして、父上から「返答はいかがする?」と問われ、私は思案した。


「……松笠菊は、手に入りますか」


 私の言葉に、松笠菊の花言葉「正しい選択」「立派な」を思い浮かべられたらしい義兄上が、「何とかしよう」と頷いてくださった。


 次いで、添え文はと問われた。

 諸々の事情を勘案して、義兄上が代筆してくださるそうだ。


 私は義兄上を真っ直ぐ見つめ、こう申し上げた。


「『御心のままに』……と」


 ──賢明なご判断をなさった千歳様に、心より敬意を表します。そのご立派な御心に、添いたく存じます──


いつもお読みいただき、ありがとうございます。

この節目のお話で、100人目の方にブックマークをいただきました。ありがとうございます。

これまでにブックマークをくださった方々にも、厚く御礼申し上げます。


一話を書くごとに様々な資料を繰っているため、次話との間が空いてしまうことを申し訳なく思っております。

飽きずにお読みくださる皆様に、感謝申し上げます。

ただ、念のために申し上げておきますと、資料をもとにしてはおりますが、物語の設定と混ぜております。ひとつのお話として、お楽しみいただきたく存じます。


改稿が多いため、更新話としてお知らせが入ってしまうと申し訳なく存じます。

もしも更新通知を設定してくださっている方がいらっしゃいましたら、解除していただければ幸いです。


最新話の投稿は当日、活動報告にてお知らせいたします。

よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ