ふたりの貴公子
昨晩23時以降にお越しくださった方々、申し訳ございません。
活動報告でのご挨拶で本年は締める予定でしたが、もしも期待してくださった方がいらっしゃると申し訳ないので、急遽、閑話を投稿することにいたしました。
お時間のある時に、お読みいただければ幸いです。
皇后宮にて、権少進に就任してから数ヶ月。
あまり活動をしたがらない表情筋は仕様だとご理解頂けてから、皆様とも打ち解けられたように思う。
この部署で、長官に匹敵する権大夫・徳大寺実定様とは、詩歌管弦の話ができるくらいには親しくさせて頂いている。
初めにお声がけ頂いた際には、驚きすぎて目が丸くなったが。
あの時の、おかしげにお笑いになった実定様の柔らかな微笑みは、今思い出しても顔から火が出るようだ。
私のような元服したての若造に、従三位の実定様が直々にお声がけくださるとは思ってもみなかったとはいえ、いらぬ恥はかきたくないものだ。
実定様も、ご兄弟が大勢いらっしゃる。
その中に、多子様という妹君がおられる。
私が任官を賜った大元である、統子内親王殿下が皇后陛下となられた際。
多子様は太皇太后陛下となられた。
多子様に、太皇太后宮の権亮として仕えていらっしゃるのが、実定様の甥御様である一条能保様だった。
ある時、実定様との世間話で、能保様の話題が出た。
どうやら、実定様が私のことをお話になったらしく、能保様がご興味を持たれたのだとか。
……いや、いらんよ。
──いかん。心の中で、つい前世のつっこみが出てしまった。
信頼様に続く実定様、そして千歳様で、高位の方はお腹いっぱいなのだ。
先日、義平義兄上に「お前は高官を引き寄せる香でも焚いているのか?」と訊かれてしまったし。
──そのような香があったら、権力に目を光らせる者どもが、こぞって欲しがるだろう。
話は反れたが、反らしたい私の心境をお察し頂ければありがたい。
結局、実定様の柔らかな微笑みに「ご遠慮申し上げます」とは言えず──
本日、実定様の邸宅にお呼ばれし。
「一条能保と申します。お初にお目にかかります」
「源頼朝と申します。お目にかかれて、光栄に存じます」
実定様にご紹介頂き、互いの自己紹介が済んだところだ。
まるで、お見合いのようだ。
微笑みも顔立ちも柔らかな印象の実定とは対称的……というほどでもないが、能保様はキリリとした印象を受ける。
お二方が座っていらっしゃるのを拝見すると、品の良い貴公子が並ばれているようだ。
ここに、ぜひとも朝長義兄上を加えたい。
女房たちが狂喜乱舞する〝貴公子の集い〟となるだろう。
「……殿。頼朝殿」
実定様の優しい呼びかけに、我に返った。
「いかがしました?具合でも悪いのですか?」
「……いえ。失礼致しました。お二方の目映さに、心が旅立っておりました」
正直に白状すると、能保様は愉快そうに笑われた。
「頼朝殿は面白い方だな。叔父上の仰るとおりだ」
私が……面白い?
「能保。その口調は改めなさいと、何度言えばわかるのです」
「叔父上。身内だけならば構わないと仰ったのは、あなただろう?」
「頼朝殿は、初対面ではありませんか」
「頼朝殿とは、近い将来、身内になる気がする。だから、構わないだろう」
「……あなたお得意の〝感〟ですか?」
実定様が若干疲れたように訊かれた。
「今まで、外したことがないからな」
能保様は不敵にお笑いになると、私のほうを向かれた。
「だから、末永く、よろしく頼む」
「……こちらこそ、よろしくお願い申し上げます」
よくわからぬまま、能保様につられて深揖の礼にて、返答申し上げた。
……だから、お見合いか。
どこか遠くのほうでつっこみが聞こえた気がするが、それよりも。
私もなぜか、実定様と能保様とは、不思議なご縁があるように思えた。
本年、一月より始まりましたこのお話。
23時という時間以外、投稿日が定まらないにも関わらず気長にお待ちくださり、お読みくださる皆様には感謝の念に堪えません。
マメに投稿できずに申し訳ないと感じながら、資料を繰る時間がどうしても長くなってしまいます。
最終的な形にする際は物語の設定と混ぜますが、根底には資料の出来事を元にしたいとの考えからです。
一年間、このお話を書き続けてこられたのは、お読みくださる皆様のおかげに他なりません。
本当にありがとうございます。
皆様どうぞ、良いお年をお迎えください。





