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選考結果!

 茹で上がるタコに、冷や水を掛けたのは高島の方だった。時計を見ている事を考えると、時間を気にしているのだろう。彼のスケジュールが詰まっているのだろうか?

 川辺の肩を強く押し何とか席に着かせると、川辺は納得の行かない顔で舌を鳴らした。

 

「やはり、僕の方から話を進める事にするよ」

 

 そう言うと高島は暫くの時間を取った。それは二、三秒という時間で、その間に話の内容を考えたのだろう。

 応接室の時計、秒針が着実に時間を刻む中で話を纏め上げた高島はまた口を開いた。

 

「まずは、試験御苦労と言っておこうか。あの兵装、戦力差で君達は良く戦ったと思うよ」

 

 その言葉で俺は少し胸を撫で下ろした。

 

「結構厳しい状況でした、本当なら……」

 

 俺は、その先の言葉を口にしようとした時、体中から冷や汗が吹き出して来るのを感じた。誘われる程に浮かれて口を出したのは不味かったか。

 

「本当なら君は三ラウンドも米兵部隊の餌食なっていたはずだ。だが、互角以上に戦えた、それは何ぜだね」

「なんや、オッサン達。自分らの部隊がボロクソにヤラレたんがそんなに悔しいんか?」

「米軍がどうなろうが私には関係ないよ。顔に泥を塗られたのはマーキスの方であって私じゃないからね」

 

 高島の言葉で、俺と川辺はマーキスの顔色を伺った。マーキスと視線が合うとマーキスは明るい表情を見せた、その表情からは逆に恐怖すら感じられる。

 その、明るい殺気に押されてテーブルに置かれたカップを見つめる事しかできなくなっていた俺は、行き先の見えない状況、流れを変えるべく自分から質問してみる事にした。

 

「確かに、マニュアルには無い操作をしたのは事実です。ですが……隠しコマンド無しに米兵と互角に戦える連中が何処にいるんですか? 武器も兵装も二枚も上で真っ向から行って勝てるっていうんですか?」

 

 ――もう開き直るしか道が残されていなかったのは事実だ、他に良い方法があるって言うのなら聞いてみたい。

 俺の開き直りの問に予想外の答えが返ってきた。

 

「実は……」

「実は、二チームだけ居るのだよ。真っ向勝負で二本以上取ったチームが」

 

 マーキスに割って入る高島の答えに俺は唖然とした、一チームなら未だしも二チームも……。

 正々堂々と……。

 

「一チームは実力で、一チームはTSCの特性で勝った」

「でも、俺達だって特性をフルに使って……」

「特性をフルに使って一勝も危ういか? 私の部下達だって同じ条件だったんだ。今日初めて機兵を操縦する相手に開発側しか知らない特殊コマンドを使って、それで危ういか……」

 

 マーキスの言葉を疑うしかなかった、精密射撃をして来る米兵達が素人だとはとても思えないからだ。

 それ以上に自分の適応能力の無さを否定したくなかった。

 絶望に打ちひしがれる俺に、思わぬ所から助け舟が流れ込んだ。

 

「マーキス、そうは言う物の君達のチームは演習前に事前に操縦テストをしているだろ? 二号機の件に隊長不在。それにあのチームはFPSというゲームジャンルの全米チャンプをキャプテンとして招き入れたそうじゃないか」

「隊長は居たではないか。隊長が居たから善戦できた」

「あくまでも代理で戦っていただけ、彼女に戦闘能力は無かったよ」

 

 急に始まった内輪揉めに目を疑った。そして、高島の言う事が正しいのなら、スタート地点でスナイパーライフルを構えていた敵リーダーは全米チャンプという事になる。

 高島は仲間同士の間に出来た亀裂にも全く動じた所を見せず、少しばかり俯くと自分のコーヒーを飲みほした。

 

「鈴木君コーヒーのお代わりを貰えるかね?」

 

 高島は飲み干したカップを助手へと渡そうとしたが、何故か助手は銀色に輝く丸いトレーで自分の顔を覆っていた。そして、高島の声に気が付くと慌ててトレーを本来の使い方に戻し、部屋奥の給湯室へと姿を消した。

 

「まあ、以下を踏まえた上で採用結果を下そうと思うのだが……」

「つまり、特殊コマンドを使ったのがいけなかったって事ですか?」

 

 俺達がソファーに座ってから既に十分くらい時間は経過していたものの、痺れを切らすには十分な時間だ。この威圧感が作りだす特異的な空間の中、早く解放されたいが為に少しばかり軽口を叩いていた。

 

「絶望的な状況だからこそ希望を見出さなくては駄目だよ、戦士なら尚更だ。君には宣伝するべき場所が沢山あると言うのに、君も社会に毒された典型的な日本人なのかね」

 

 俺の軽口に、突っ込みを入れてきたのはマーキスの方だ。残念ながら下手に出た俺の言葉に嫌味を重ねられる結果となったのだが。

 

「良いだろ、事前に決めた事なんだ。君がこれ以上口を挟むと話がややこしくなるよ、マーキス」

 

 高島はマーキスへ執達すると、また話を続けた。

 

「君達は特殊な条件下で良く戦った。特殊コマンドもプラス材料として今回は受け入れた上で判定を下そう」

 

 高島の口から不意に出たプラスという言葉に少しばかり心を踊らされた。偶然にもトラブル続きの俺達に与えられた特別措置なのだろう。

 

「故に判断した結果、この中から二人、入隊届は手配してある」

 

 二人という言葉に反応せざる負えなかった。

 

「ちょ、ちょっと待っください、チーム全体を採用するんじゃ……」

 

 俺は机に両手を付き立ち上がると、動揺しながらも二人の重役へ懇願する視線を送った。

 

「誰がそんな事をいった? 自衛官か? 君達の隊長か? 採用枠がそれ程多くないのだよ。一万人を超える学生を収容するだけの設備もな無ければ、君達を軍人に仕立て上げる教官の数もそれほど多くない、空軍、海軍、陸軍、各士官の手を借りたとしても精々500人が良い所」

 

 俺の視線に応えたのはマーキスの方だった。そして、マーキスの言葉が本当なら採用倍率は20倍、採用されなかった人は可哀そうだが前線送りになってしまうという事になる。

 この施設でモグラになって安全圏を確保するには相当の運が必要だという事だ。

 

「そこで本題だ。君達の中で一人は残念ながら、地方の駐屯地に行ってもらうのだが……。皆ももうわかっているだろう」

 

 マーキスはそう言うと、視線を対岸のソファー隅へと送った。俺もマーキスと同じく視線を合わせると、そこには冬眠中のハムスターの用に未だ小さくなる萩原の姿があった。

 

「君ももう分ってい居ると思う、試験中もそうだったね。自分の立場が危うくなっても何も言わなかった」

 

 水を得た魚の用に喋るマーキスの言葉が痛かった。萩原が試験中通信を使わなかったのは事実だ。だからと言ってそれが彼の責任になるのだろうか? おかしい、萩原が通信を使えなかたのは、マニュアルをホール内の自分の席に忘れて行ったからだ。ココまでは彼の責任、だが、何もわからず、コクピットに放りこまれて碌な説明も受けずに試験開始……適応出来なかったので要りません……そんな理不尽話あってたまるか。

 ――何よりも前線に行く仲間を尻目にノコノコ自分だけ安全な場所で待機なんて出来るわけもない。

 

「ちょい待ちーや、何ボケかましとんのや。丸メガネが戦闘中喋れんかったのも、そちら側の責任やないか!」

 

 憤慨する川辺の罵声がマーキスへと浴びせられた。詰まる所、これが本題なのだろう、通過者とそうでない者を分ける事、区別する事。自分たちが後で批判を受ける事を極力避けるため、それが俺達三人を此処へ呼び寄せた最大の理由なのだろう。

 もし萩原だけが用済みなのなら個別に呼び寄せれば良い話なのだから……。

「そうですよ、俺達はチームで戦ってたんです。それに隊長にも話を聞いてみたんですか? 俺達の作戦は彼無では成立しませんでした」

 

「全てだ。すべてを考慮した上での決断だ。無論君達の言う隊長の意見も参考にした、その結果誰でも出来る事と私は判断したのだよ」

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