応接室の三人
今俺の目の前には三人の男女が居た、二人は朝見た事のある顔、そして、声なのだが。女性は今回初めて見る。髪はセミロングのストレートで肩まで掛るくらい、高島という科学者と同じ白衣を着ている事から科学者の一員なのだろう。多分、年も俺達と然程離れてはいない、それに目が少し悪いのだろうか萩原同様メガネを掛けていた。だがフレームは細目の四角で萩原よりはセンスが良いい。
マーキスと高島は初めから応接室中央に置かれた対面式のソファーに腰を深く持たれていた。ソファーの後ろ、入口の直ぐそばで唖然の立ち竦む俺達を見て、黒人の中将は口を開けた。
「ああ、君。少し外で待っていてくれないか? それ程時間はかからないさ」
中将の言葉は俺達の前で未だ敬礼の姿勢を崩さない自衛官に浴びせられたものだが、中将の
「それ程時間はかからない」という言葉に少しばかりの安堵を覚えた。
――こんな殺気立った空間に長時間も居られない、気がくるっちまう。
自衛官が退出した後、応接室の中には六人だけが取り残され、狩る側と狩られる側の立場が一本の亀裂の様にハッキリと分かる。
唖然とした俺達を見た、ソファーに座る主導者は少しばかりの笑みを浮かべると俺達に問いかけた。
「諸君等も早く座ってはくれないか? 話が進められないだろ……」
中将に言われるがまま、対岸の席に座る俺達は前方から浴びせられる冷めた視線を感じて直固まった……。
俺の横、順番に座った戦友も何処となく居心地の悪さを感じているようで、いつも以上に肩幅が狭く見えた……。
試験のチームメンバー全員が座り終えたのを確認すると、対岸のソファーに座る白衣、高島の一言ですべてがはじまった。
「さて、君達は何故ココに呼ばれたか分かるかね?」
高島の口からも吐き出された言葉ですら、やはり理解に苦しむもので。俺達はお互いの顔を見合わせると、また暫くの間無言の時間が続く事となる。
その無言の空間を汲み取るように、先ほど間で二人の重役の後ろで待機していた女性が、トレーに乗せたコーヒーを各自の席へと置き始めた。
「コーヒーを入れました」
「すまないね」
一言、助手らしき女性に声を掛けてから、高島は自分の席に置かれたコーヒーを啜る。
「彼女は研究の方は今一なのだが、何かと気の利く女性でね」
「高島、話がズレているぞ」
「ああ、すまない。出来の悪い助手の話は又今度、君に聞いてもらうよ」
俺は、肩を竦めながらも終始この高島という男を観察していた。助手の目の前で悪態を垂れているので、助手の表情を伺って見たのだが顔を顰める様子も無い。
要領良い助手、そこまで出来が悪い様には見えないのだが。
高島は、コーヒーがまだ半分以上入っているカップを自分の手前に置くと、俺達の強張った表情っを伺って、深い溜息をついた。
「まあ、予想通りというべきなのだろうがね……。あんな事をしたんだ」
高島はそう言うと、自分のチリチリの天然パーマを指で弄り始めた。その高島の表情は何処となく上の空だ。
「マーキス、君が呼んだのだから君の方から話せば良いんじゃないのかね?」
高島に言われ、マーキスは自分が飲もうとしていたコーヒーのカップをテーブルに置くと、少しばかり咳き込んだ。
「やはり、私が言わなければいけないか? 私は冷戦時代に生まれた保守的な人種だ。こう言った最新の機械構造とやらには不向きなのだが……」
「ふむ、僕も同じ時代の生まれだが」
まるで話の進まない状況に、重い空気に痺れを切らしたのだろう。俺の隣に座る川辺が勢い良く席を立ちあがると、コーヒーカップの置かれた机に握り拳をハンマーにして撃ち付けた。
机は鈍い音を上げ、まだ一口も口を付けていないコーヒーは机へと零れ落ちる結果となった。
「なんや、何々や。オッサン達、ワイら呼びつけんと、その理由は言わないんか? 用がないんやったらワイは自分の部屋で休ませてもらうわ!」
「落ち着け川辺、今あの人達を罵倒したって俺達に不利に働くだけだって」
俺は川辺の肩を掴んでいた。川辺を何とか席に座らせたいが為の言葉、この状況を穏便に収めたかったのだ。
川辺が声を荒げた事により、萩原は石膏作りの像の用に固まった。心なしか顔色が白く見える、完全に血の気が引いているみたいだ。
こういった状況に萩原は不慣れな様だ。
無論得意な人間の方が少ないとは思うが。
俺達が座らされて話が始まってからも未だ席を座る気配を見せない高島の助手は、コーヒーを運んだトレーで顔を半分程隠し完全に防御の姿勢を取っていた。
当の重役二人はというと、川辺が威嚇しても全く動じる気配を見せない。
瞬き一つしないマーキス中将は冷めた視線を俺達に送り。高島チーフは自分がしている金色の時計を見つめていた。
「そろそろ話を進めて良いかね」




