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運命の三ラウンド-4

 俺の機体はその反動のせいで着地点で滑ると。地面に背を向け転落だ。視点は天井を見上げ、逆様である証拠に演習施設の照明が良く見えた。

 やがて機体が地面へと落ちた衝撃で一瞬ディスプレイに砂嵐が紛れ込む。

 そして、正常な状態にカメラの映像が戻ると。俺が着地するはずだったキューブの頂上が眩く光りだした。どうやらランチャー弾が爆発したみたいだ。

 

「大丈夫? 何か当たったみたいだったけど?」

「ああ、また地面に落ちる羽目になるなんて」

「ねえ? 人の話聞いてるの。聞こえてるならちゃんと答えてよね」

「えっ、ハイ、すいません。体力は異常ないみたいです、後は物理的に壊れてなければ動けると思うんですけど」

「問題無いやろ、対戦車ライフル食らっても三号機はヒョイヒョイ動いとったで」

 

 四号機の言う通り、恐ろしくタフな機械だ……。5メートルの高さから落ちたというのに、何事もなかったかの様に俺の機体はまた起き上がった。

 一通りの通信が終わると、俺の居る通路に三号機がやってきた。俺を見つけて一定の距離を置き止まると、頭部をキョロキョロ動かしていたので、多分俺を観察しているのだろう。無言なのが尚更、今の俺には痛かった……。

 

「どないしよ、また昇って来るんか?」

「いえっ、大丈夫です。発見されてしまった以上、上と下でそんな大差ないでしょ」

 

 俺が通信を終え、ボタンから指を離したとたん。また前方からランチャー弾の発射音が聞こえてきた。

  どうやら敵さんは、キューブ上に居る隊長達へ射撃が届かないものだから嫌気が差して、グレネードランチャーを使って一掃しようとしているみたいだ。

  多少、撃つ方向や角度を調節しているのだろう。先ほどとは明らかに違う場所から発射音が聞こえた。

 

「うほっ、アブナッ。今度は右から流れ玉や……」

「呑気な事言わないでください、一発でも落ちたらそれで終わりなんですから」

「もう、向こう側ばかり卑怯じゃない。こっちにも遣しなさいよ!」

「何いってるんですか? 隊長は持ってるでしょグレネード。それよりも敵の位置わかりますか?」

「ちょっと待ってね、今確認するわ」

 

 次に隊長達から連絡が来るまでに少しばかり間があった。その間の中にランチャー弾の爆発音が紛れ込んで来た。爆発は俺達の居る処のはるか右側の方向で鳴り、暫くして消えた。

 明後日の方向に飛んで行ったランチャー弾の光は俺達の視界には入って来なかった。たぶん、キューブに登っていたのなら太陽の閃光に似た光を拝む事が出来たのだろう。

 

「敵の位置把握できたで。アイツ、俺らの真下でグレネードランチャーを工夫して飛ばしよるんよ」

「えっ、真下ですね。方向は左側で大丈夫ですか?」

「ええ、大丈夫よ。あまり顔出せないから早く来てね」

 

 そう言うと隊長達からの連絡はまた途絶えてしまった。通信してきた声に多少の嘲笑が感じられた事から隊長達も、当たらない物だと高を括っているのだろう。

 

「わかりました、直ぐ行きますんで少し待っててください」

 

 一言隊長へ連絡を入れると俺達地上班は敵を倒すべく移動を開始した。

 俺の後ろには三号機が付いて来ている。たぶん隊長よりは援護に期待できそうなのだが、実際どれくらいの腕なのかは、撃ち合いになってみないとわからないのだ。

 

「ああ、あと。敵引き付けておいてくださいね」

「えっ、引き付けるってどうすれば良いのよ」

「せやなー、ジャンプしでもしとれば良えんやないか? 隊長なら、おちょくっとるように見えるわ」

「ちょっと、それどういう意味よー」

「名案ですね、激しい動作音で俺達の足音が搔き消されますから」

 

 暫く考え込む間があっただろう、やがて隊長の機体が空中へと舞い上がると激しくその場に着地した。その音は思ったよりも大きく。俺の期待を遙かに上回るものだった。

 

「その調子でお願いします。次いでなんで四号機さんも参加してください」

「えっ、わいもやるんか」

「出来る限り交互に踏みならした方が効果的なんで……」

「しゃーないなー……」

 

 やがてキューブの頂上で二機のロボットが激しく動き出した事により、敵は呆気に取られている事だろう。唯一の誤算があるとするならば、ジャンプした事により隊長達の機体がジャンプした瞬間だけ見える事だった。ジャンプした所を狙撃されては元も子もない。とは言え真下の敵くらいにしか見えていないだろうが。

 俺は急いで隊長達の居るキューブ真下へと移動すると三号機へと通信を入れた。

 

「03号機さん、そこの隅っこに居る敵を倒します。俺が先に出ますので援護お願いししますね」

 

 そして、通信ボタンから指を離すと共に行動を開始された。

 今も直、俺の真上では隊長達が激しく踏みならす事で眼下の敵を引き付けている。

 敵も自分の武器をライフルに切り替えたらしく、命中率を高める為にバーストを切った単発の銃声が奥の通路から聞こえて来た。

 

「きゃっ。……早くなんとかしてよ」

「ええ、直ぐ終わります――」

 

  ――敵も少し纏まって行動していたならこんな状況には陥らなかったのだろうが。そう、御前らの敗因は俺達アマチュアを甘く見た事だ。

  俺が通路に顔を出した時、敵の青いTSCは自分の頭上に居る標的目掛けてライフルを構えていた。

 が、俺が通路に現れた事により、大慌ての敵機は地上の標的に照準を合わせざる負えなくなったのだ。更に一拍の間を介して登場した三号機により標的を定めるのが困難になった敵機の銃身が微かにブレるのが見て取れた。

 気がつけば引き金を引いていた。俺の射撃に合わせるように後方からも銃声が聞こえて来る。

  三号機の援護が無事に入ったのだろう。

 やがて発射された弾丸の波は敵を覆うように過ぎ去って行くと、敵の青いTSCは静かに地面に膝を付き、そのままの勢いで地面へと倒れこんだ。

 ここまで来るのに既に四分が経過していた。ディスプレイ中央上段に表示されているタイムバーは既に一分を切り、試合終了の時刻が近付いて来ている事を俺に教えた。

  それにしても、自分が動かしているのは指だけのはずなのにこの疲労感はなんなんだろうか。

 

「あっ、倒してくれたんだね。ありがとー」

「ええ……何とかなりました……」

「何か息荒いけど大丈夫?」

「問題ありません」

「なら良いんだけど」

 

 隊長は通信が終わると疲れ果てた俺を尻目にまた動き始めた。

  俺が問題無いと言ったのがいけなかったのか? 少しは気を使って欲しいものだ……。

 体長は先ほどランチャー弾が飛んで行った方向へと向かって機体を動かすと、キューブの上を飛び跳ねながら移動して行った。

 やはり隊長の移動は早い、俺達を置き去りにして早くも右端だ……。この移動の速さ、手際の良さには内心呆れを覚えるくらいだ。

 どうせ、敵を倒すのは俺達なんだから、もう少し落ち着いて行動してくれても良いのに……。

 そんな事を考えている内に隊長から通信連絡が入って来る。

 案の定、敵に発見されたのか……。

 そんな思考が俺の頭を過った。

 

「――何か変なんだよね。敵が倒れてるっていうのか……誰もこの機体には触ってないでしょ?」

「TSCの型番を教えてくれませんか?」

「ちょっと待って」

 

 変な事もあるものだ、隊長の通信連絡を待つ間、今まで何があったのかを少しばかり振り返っていた。

 可能性として考えられる事は三号機の独断行動による敵との戦闘くらいで。そんな彼も引き金を引けばその分音が外部に漏れるわけで……。

 

「……TSCの001だって」

「やっぱり辺ですよ、右側で戦闘したのって一回だけですよ」

「あっ、ちょっと待って、敵さんの後ろに何かあるみたい」

「ホンマかいな、ちょいワイもそっち行くわ」

 

 気になった地上組も隊長達と合流する事になった。

 詳しく言えば隊長達と俺達の間には高さ5メートルの段差があるのだが……。

  やがて、隊長の言う地点に顔を出すとそこには確かに敵の残骸が壁に凭れ掛るようにして倒れている。彼に一体何が起きたのだろう。

 

「無残な姿やなー、誰がやったんや?」

「一号機君、敵機の後ろに何か転がってるんだけど何か分からないかな?」

 

 隊長に言われ、残骸の中心当たりを見回すと、確かに敵の背中に丸く銀色に輝く物体を確認する事が出来た

 

「確かにありますね? 丸い銀色の物体の様でなんですけど。何か多少煤を被っているみたいです」

 

 俺は一泊間を置くと、自分の頭の中に雷が落ちたのを感じた。

 そして先ほど何が起きたのか。頭の中に鮮明な映像が蘇る。

 

「……ランチャー弾じゃないですかね?」

「ほむ、そいやー、さっき飛ばされとったな。ちゅう事はチームキルって事かいな」

 

 俺達の会話の内容に隊長と三号機は面を食らっている様子だ。

 

「つまり……どういう事?」

 

 予想通りの反応が隊長から帰ってきた。まま、仕方が無いと言えばそれで終わりなのだが。

 

「簡単に言うと仲間割れです。爆発系の武器は広範囲に威力が及ぶんで味方もろとも吹き飛ばす可能性があるんですよ」

「やっちまったなー、可哀想に敵さん戦犯かー。撃った奴も撃たれた奴も御気の毒―」

 

 四号機の浮いた声がコクピット内に響きわたった。こんな境遇じゃなければきっと今にも噴き出していたのだろう。

  俺達の方が遙かに気の毒者なのだが。

 

「そう言えばあったわね、そんな事。煙り噴いて飛んでったやつでしょ!」

「そうです、それが見方に当たったんですよ」

「グレネードでチームキルって、どんだけリアルに作られとんねん!」

「えっへん、凄いでしょ!」

「えばるなや!」

 

 四号機がすぐさま天狗になる隊長へと突っ込みを入れた。

 俺はそんな二人の姿を見て少し気が抜けた。

  これで、残るは敵は隊長一機。包囲して掛かれば勝てるか……。

 だが最後の一機が問題だ。包囲するにも逃げられては意味が無い、それに加えキューブの道は入り組んでおり、直線ばかりの一本道だ。

 素人がスナイパーライフルを使えば苦戦を強いられ。

  玄人が使えば一瞬でチームを全滅させる事の出来る地形。

 たぶんこの先が一番の正念場になるだろう、俺は自分に言い聞かせるように言うと。最後の力を振り絞って身を引き締めた。

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