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運命の三ラウンド-2

「隊長ガッツポーズってどうやるんですか」

「コマンド(ctrl)Gの後に左小指のボタンだよ」

 

 隊長の通信内容通りコマンドを入力すると、俺のTSCはキューブの上でガッツポーズをしたらしい。

 握った拳が俺の画面に小さく映り込んだ。

 更に俺の隣で続くように四号機も隊長のマネをしていた。

 全く調子の良い奴だ……。

 

 暫くして三号機が俺達の居るキューブの真下へと戻ってきた。

  これだけやって、やっと人数が並んだのだ。敵兵一機倒すのに、奇襲、陽動。結構な戦術カードを使ったものだ。とは言え、休んでいる暇なんてない。

 

「次は左側に居る敵兵ですね」

「前方に行けばいいじゃない」

「警戒している敵に突っ込む馬鹿はいませんよ」

「馬鹿で悪かったわね」

「隊長の事じゃないんですけど……」

 

  今現在倒した敵は初回俺達をランチャーで一掃し、更に2ラウンド目に俺達を四発の弾丸で静めた名手だ。他の敵機が同じ兵装をしていたのなら、やはり彼がブルーチームの隊長だったかもしれない。

  そう見紛う程の腕だったのだから。

 

「やっと一人やー、マジキツイわ」

 

 俺が溜め息を付く間もなく、隊長が動き出した。軽快に機兵の足音を鳴らしながら他のキューブへと飛び移る。

 瞬く間に隊長の機体は小さくなっていった、その光景を見て俺達も行動を開始する。

  やがて先を進んでいた隊長が新たな敵兵を発見したらしく、通信を入れてきた。

 

「一号機君、敵がいたよ〜」

「隊長タフですね。こっちはもうヘトヘトですよ」

「こういう時は女が一番強いんだから」

 

  少し強い口調で通信を返す隊長の所へ、遅れながら到着すると。俺も自分の目で敵兵を確認した。敵までの距離も先ほどの敵機と同じくらい空いている。敵機の頭部は周囲を確認するように少しばかり左右に動いていたものの前方ばかり見ていたので、俺達が彼の頭上、少し離れた所で待機している事はまだ知られていないようだ。

  だが、様子がおかしいのも事実なのだ。

  先ほどの敵機よりも挙動可笑しく、あたりを見回しているのだから。

  もしかしたらキューブへ着地した時の異音に気がついたのかもしれない。

  そんな敵兵は俺たちが登っているキューブへと近付いて来るじゃないか。

  敵兵の予想外の行動を見て四号機から通信が入った。

 

「そやけど、このまんま角曲がったら三号機と鉢合わせへんか?」

「えっ、マジですか! 彼今何処に居るんです……」

 

 俺は少し驚きの声をあげると、三号機の位置を確認した。

「ワイはレーダーで味方の位置を確認してるもんやと思っとったんやが……」

 確かに、四号機のパイロットの言う通りだ。俺達の様にキューブを飛び移って移動できない三号機は、俺達よりも遙かに移動効率が悪い。

 入り組んだキューブの森は角ばかりで、俺達を必死に追っかけて来た三号機は今俺達の真下に居た。

 悲運というべきか。そこは曲がり角ばかり異様に存在する一本道。

  状況を知らず呑気に歩く三号機へ、俺は慌てながら通信を入れた。

 

「三号機さんそっちに敵が来ています、適当に隠れられる通路を探してください」

 

 慌て口調の通信が三号機に届いたのだろう、三号機は通路のド真中で静止すると、頭部を左右に動かし始めた。

 どうやら自分が隠れるに相応しい、角を探しているのだろう。

  今も直隠れる場所を探している三号機に耐えかねて、四号機のパイロットの怒声がコクピット内に響き渡る。

 

「はよ隠れないか!」

 

 だがその意気込んだ声も虚しく鳴り響いくだけ。その声と同時期に青いTSCは角を曲り終えると、三号機の姿を発見したみたいだ。三号機もその姿を見つけたらしく、左右に動いていた頭部がある一点で止まった。

 その直後さらに、通信が割り込んで来る。

 

「にげてーーーーーーーーーーーーー!!!!」

 

  女性特有の甲高い声。

  それに敵の姿に合わせて隊長の声だ、三号機は相当驚いたのだろう。今まで進んでいた方向から間逆へ方向転換すると全力で走りだした。

  その背中は柄空きで、敵から見れば撃ってくれと言わんばかり。

  そんな三号機の姿を見て青いTSCも追うように走りだした。

  敵機と三号機との距離は30メートルくらいあるだろう。俺と敵との距離はキューブ二つ分といった所で、敵機はみるみる俺達の居るキューブへと迫ってきた。

  通信を出してる暇なんか全くと言って良いほど無く、敵の足音のみが下の通路に鳴り響く。

  その音を聞いて。既に俺の体は答えを出していたみたいだ。思うよりも早く俺は行動を起こすと。

  後に響いたのは、激しい衝撃故に、金属同士がぶつかり合う激しくも鈍い音だけだけが虚しく木魂していた。

  落下音と共に目の前に出てきた障害物、敵は避ける暇などなかったのだろう。急に目の前に出てきた障害物に弾き飛ばされた敵機は進行方向とは間逆の方向へと吹き飛ばされる形となった。

  三号機の足音と共に金属の擦れる音が辺り一面から鳴り響き。やがて擦れる音は止み、機兵一機の足音が通路内に虚しく響いている。

  俺はキューブから飛び降りた為に、今、目の前には敵がいる。そして、俺と同じ格好をしているのだ。いや、飛び降りた事により俺の方が若干起き上がるのに時間が掛るかもしれない。

 自分が先か、敵の青いTSCが先か……。そんな事を考えていると。俺の頭上から銃声が飛び込んで来た。

 キューブの上で待機していた四号機が援護射撃を入れてくれたのだろう。敵は倒れこんだ姿勢のまま動かなくなった。

 

「生きとるかー」

「御蔭さまで何とか生きてます」

 

 気の抜けた四号機からの通信に背一杯の気力で返事をしている。そんな間にも俺の機体は徐々に起き上がると、やがて操作可能な状態へと戻った。

 ――バランス、装甲、耐久力、化け物じみたロボットだよ全く。

 俺が起き上がった事で安心したのだろう、三号機が俺の居る所へと戻ってきた。が、やはり無言だ。本来なら「大丈夫ですか」の一言も欲しい所ではあるが。

  そんな事を考えている間にも三号機は俺の機体を肩に乗せると、キューブへの昇る為の台座になってくれた。

  全くもって親切な奴である。

 俺がキューブの頂上へと戻ると、直ぐに通信が入ってきた。

 

「お手柄やったな」

「お帰り〜、大丈夫だったみたいね。精密機械なんだからあまり無茶しないでよね」

「ええ、気御付けます……」

 

 キューブ天辺に無地着地した後も俺の鼓動は高く、血液の流れが速くなっているせいで旨く思考が回らない。俺は今ココに立っているものの、もし援護射撃をしてくれなかったのなら俺はそのままリタイアしていたのだろう。

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